司書課程の科目「図書・図書館史」での授業内・貴重書展示
2015/07/21
こんにちは。ドキュメンテーション学科教員の久保木です。
今回は、司書課程の授業ひとつについて、ご紹介したいと思います。やや長くなりそうですが、よろしければおつきあい下さい。
さて、司書資格取得に必要な科目の中に、「図書・図書館史」という選択の授業があります。履修は、3年生から可能です。
書物や図書館に関する、古今東西の歴史について、専門のテキストに加え、多くの専門書や図録類から集めてきた、多くの図版を参照しながら、学んでいく、というものです。
ただやっぱり、テキストや、図版だけでは、理解の及ばないところがあるのですね。
そこで、本年度の最終回にあたる今日(7月21日)の授業では、本学図書館に収蔵されている貴重書の実物を展示し、より深く理解してもらえるようにしました。
図書館司書の皆さんにご協力いただきながら、本を選び、陳列して、40名近くの受講生さんに、こんなふうに見てもらいました。私が言うのも何ですが、いやー、圧巻ですね!
紙が発明される以前に、文字を記録する道具として用いられていた、粘土板(=クレイ・タブレット)や、パピルス、甲骨(こうこつ)、木簡(もっかん)、貝多羅葉(ばいたらよう。こんなものまであるのかと、私自身、ビックリしました)や、
15世紀後半に発明された、西洋式活字印刷技術による、ごく最初期の書物(インキュナブラと呼ばれています)の断簡や、銅版画の美しいミルトンの『失楽園』(1749年刊)、あるいはところ変わって中国の木版印刷技術による、
最も古い書物のひとつとされる宋版、などなどに続けて、
今度は日本の書物ということで、『本朝書策(籍)目録』の、成立後間もない、鎌倉時代末期写本の模写本(模写=今のコピーに近いもの、です。コピーであっても、原本がもう失われていますので、とても貴重なのですね)を皮切りに、室町時代のいわゆる五山版(ござんばん)や、あるいは嵯峨本(さがぼん)と呼ばれる『源氏物語』の古活字版(こかつじばん)、
また、上杉家の重臣、直江兼続(なおえ かねつぐ)による印行という、(伝)直江版と呼ばれる『文選』といった古活字版に加え、
『解体新書』とその原著『ターヘル・アナトミア』を並べて置いて、原著の細密精緻な銅版画と、それをとても高度な技術によって再現した、同じ部分の木版画を見比べられるようにもしました。
ほか鎌倉時代の『源氏物語』、室町時代の『古今和歌集』、江戸時代の『平家物語』の写本などや、
時代は飛んで、幕末~明治時代初期の、時代を反映した文例集や英語の教科書などをも陳列しました。そして最後は、『梗概源氏物語』の、与謝野晶子自筆原稿、で締め括りました。
これまた私が言うのも何ですが、大学の図書館で、古今東西にわたる、これほどまでの貴重書を一同に列べられるというのは、ちょっとこれは滅多なことでは出来ないんじゃないでしょうか。
正直なところ、私自身、授業前に陳列していた時から、役得、役得、と、もう楽しくて楽しくて仕方ありませんでした。もしかすると、私が一番楽しんでいたおそれもあります(恐縮です…)。が、
受講生の皆さんも、とても関心を持ってくれて、実物ならではの迫力に圧倒されていたようです。実際、コメントシートでも「感動しました!」「こんな貴重書がこんなにあるなんて、ビックリしました!」といった言葉があふれていました。
貴重書を、いっぺんに、しかもガラスケース越しにではなく、間近にじっくりと観察することができるなんて、これは本当に、本学の学生さんならではの、特権である、と言っていいんじゃないかと思います。
こうした授業内展示が可能であるのも、長年にわたる、歴代の図書館員・本学教職員の、収書に関する熱意と努力の賜物です。
私自身も、その恩恵を蒙っているひとりとして、だからこそ一層、貴重書を活用しながら、学生さんの意欲を高め、知識を深めてもらえるよう、学生さんに、豊かな教養を身につけてもらえるよう努めなければ、と考えている次第です。
なお図書館に収蔵されている、こうした貴重書の展示は、オープンキャンパスの時も実施しています。また同日の、文学部ドキュメンテーション学科のブースでも、学科所蔵の和本類をご用意しています。さらに、ドキュメンテーション学科の分に関しては、ご来場の皆さんに、自由に触ってもらえるようにもしています。
本年度のオープンキャンパスは、これからも、
8月2日(日)10:00~(14:00受付終了) *図書館学の模擬授業
8月22日(土)10:00~(14:00受付終了) *情報学の 〃
9月13日(日)13:00~(15:00受付終了) *書誌学の 〃
http://www.tsurumi-u.ac.jp/admissions/open/campus.html
のように開催されます。
本が好きな人、図書館が好きな人、と同時にコンピュータにも興味がある人、ぜひともご来場をお待ちしています。