書誌学コース教員の久保木です。こんにちは。ちょっと長い記事となりますが、よろしければ、お付き合い下さい。

もう間もなく終了してしまうのですが(遅ればせ過ぎて恐縮です…)、ただいま、本学図書館1階のエントランスで、次の展示が開催されています。

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総持学園創立90周年・ドキュメンテーション学科設立10周年記念
鶴見大学ドキュメンテーション学会共催

第138回貴重書展
「収書の真髄―勅撰集に関する古典籍・古筆切を中心に―」

10月22日(水)~11月15日(土)
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今回出展されている、日本の古典籍(和古書とも、和本とも呼びます)は、書誌学や古典文学の研究上、とても重要なものばかりです。完全新出の資料、長らく行方不明だった資料なども、少なくない数、含まれています。

図書館の方のブログでは、開催前から紹介されており、現在は、展示解説のPDFファイルも、図書館HPから、ダウンロードできるようになっています。

さて、今回の展示解説の執筆には、書誌学コースの教員(伊倉・久保木)に加え、本学科の専門科目「古写本演習」を受講している、3~4年生、11名も参加しています。
また、教員担当分の中でも、2点ほど、本学科卒業生2名が提出した、卒業論文の内容を、ほぼ丸ごと踏まえる形で、教員が代理執筆したものもあります。

現役の受講生の皆さんは、ここ数ヶ月の「古写本演習」で、夏休みを挟みつつ、項目執筆のための事前調査を行ってきました。
受講生の皆さんのうちの多くが、四苦八苦していた、ようにも見えましたが、最終的に、とても充実した内容となりました。

実際、先週末の11月8日(土)に、和歌文学会という、歴史ある学会の11月例会が、鶴見大学を会場校として開催され、和歌文学や、その他の古典文学、あるいは古典籍に関する専門家、一流の研究者の方々が、たくさんご来校下さいました。
また、そればかりでなく、学会の開始前や、休憩時間中に、今回の貴重書展もご覧下さいました。

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その際に、受講生の皆さんが執筆した展示解説を読んで、複数の研究者の方々から、「こんな専門的な解説を、学部生が、書いたのですか?」と、驚嘆する声、賛嘆する声を、いただくことができました。

そんな時、教員の立場としては、やはりついつい、「いえいえ、そんな、まだまだ足りないところばかりで…」などとお返事してしまうのですが、内心では、もちろん「よしっ!」と思っていました(笑)。受講生の皆さんが、四苦八苦しながらも、真剣に、一生懸命取り組んでまとめた成果を、多くの専門家から、期待以上に評価していただけたことが、とてもうれしかったのでした。

またそのほかに、「学部生の頃から、これほどの古典籍の実物を扱えるなんて、うらやましい!」という感想なども、あったそうです。確かに、仮に私も部外者でしたら、間違いなく、そう思ったに違いありません。

古典籍を扱う、調べる、研究する、などということは、大学入学以前はもちろん、在学中でも、卒業して社会人になってからも、あるいは定年退職等されたあとでも、めったなことではできない経験でしょう。

そんな中、本学科では、学部1~2年次のうちに、書誌学の知識を養う、古文になれる、くずし字を読む、古典籍を扱う、といった基礎を身につけていきます。
そして3年次からは、さらに専門的に、本学図書館に収蔵されている貴重書の数々を、実際に手に取りながら、書誌学・文献学という、書物の形態や内容に関する学問を、実践していくことができます。
全国的に見ても、これは、本学科ならではの特色であると言ってよいのだと思っています。

そして実際に、そうした結果、上記のような、一流の研究者の方々からも評価していただけるほどの、学術的な成果に、繋げることができたのでした。

解説を執筆した受講生の皆さん。和歌文学会が開催された、その直後の授業でも伝えましたが、これは、お世辞とかでも誇張とかでも全くなくて、本当に、誇りに感じていいことだろうと思います。

本が好きな人、昔の本に興味がある人、図書館司書を目指している人。展示期間は残りごくわずかとなってしまいましたが、もし可能であれば、これからでも、ぜひとも今回の展示を見にいらして下さい。

また、さすがに来られないという場合でも、展示解題だけでもよいので、ぜひともダウンロードして、眼にしてみて下さい。

書誌学という学問について、まったく何も知らない状態(もちろんこれが、人として当たり前の状態ですよね)から、少しずつ、少しずつでも、専門的に学び始めて、それでもまだ3年ほどしか経っていないはずの学生さんが、にも関わらず、いつの間にか、これほどまでの調査をできるようになっている。
(と、教員の側からは見ています。ですので皆さんも、それができている、と自覚して下さいね)
これこそが、学問の力なんだ、醍醐味なんだということを、ぜひとも、少しでも感じ取ってもらえれば、と願っています。

ちなみに、図書館司書を目指したいという、高校生の皆さんにとっても、古典籍に関する知識を身につけている、かつ、古典籍をきちんと扱えるスキルを持っている、というのは、将来的に、決して小さくない、アドバンテージとなるはずです。

ともあれ、書誌学にしても古典文学にしても、もっと広く言えば、人文学というものにしても、本当に、本当に、面白いんですよ!

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