2022年3月30日 (水)

楽しみ方【研究室から】

ご本山の境内もキャンパスも、桜満開。

とくに図書館脇の階段から絶景が楽しめます。

そしてこの季節の楽しみには、やはり桜餅が欠かせません。

まず織部の小皿と取り合わせて、見参見参。Photo(焼き上がりが強く、織部の緑釉が赤く変化しています)

東西の桜餅については、以前お話ししました。

皆さんは桜餅を召し上がる時、葉の塩漬けをどうされますか。

勿論、剥いて食べる方が多いでしょう。

豪快にそのまま、と言うのも、野趣満点で結構かと思います。

担当者のお勧めは、碗に葉を入れて熱湯を注ぐことです。Photo_2 しばらく待つと、香り高い桜湯の出来上がり。

李朝白磁の碗は、学生の頃から愛用しているものです。

お好みの器で、是非お試しください。

まもなく春のキャンパスに新入生の笑顔があふれるでしょう。

では、次年度もごひいきに。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年3月20日 (日)

花の頃【研究室から】

桜が咲き始めました。

花の枝に愛らしい鳥が遊んでいるのをよく見かけます。

鶯と思っていらっしゃる方も多いようですけれど、これはメジロ。

鶯はもっと地味な色合いです。

この季節、いろいろな和菓子が店頭に並びます。

鶯餅、草餅、桜餅などのお話はまた次回以降として、お彼岸にちなむものを。

おはぎですが、春秋によって呼び分けると言う説に従えば、牡丹餅です。

柿右衛門手の小皿に載せて、見参。Photo皿はそれほど古くありません(150年くらい前の作)。

ハート型の透かしは「猪目」と言います。

さて、日本文学科を優秀な成績で卒業された学生さんの話題。

このホームページを見て、鶴見を選んでくださったのです。

お父様が大の骨董好き、とうかがいました。

小道具の古伊万里や黄瀬戸をおもしろがっていただいているようです。

担当者にとって、これほどうれしい話はありません。

頑張らなくちゃ。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年3月 9日 (水)

凜として【研究室から】

里山の風が、遠くからゆかしい薫りを運んで来ます。

梅の花の盛りです。

芳香を惜しげもなくふりまき、しかもおもねった印象はありません。

凜として枯れ野に咲いています。

日差しを受けて、輝くばかり。Photoさて、来週は卒業式です。

鶴見の丘から羽ばたいて行かれる学生さんに、心から拍手!

喜びと感動に満ちた未来でありますように。

社会に出られてからも、是非遊びにお越しください。

図書館には、仕事に役立つ書物もたくさん揃っています。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年2月25日 (金)

春待つ里山【研究室から】

風は冷たいながら、さすがにおだやかな日差しとなりました。

少し足を伸ばして、里山の散策。

枯れ葉の道やにお積みの田など、冬の風情が残っています。Photo念のため申しますと、これは東京都内の景色です。

谷戸の奥に棚田があったり、湧き水には小野小町の話が伝わっていたり。

どこを見ても飽きない里山でした。Photo_2気ままに半日、ほとんど誰にも会わない静かな山路。

(明日あたり筋肉痛になるのでは、と少し心配です)

まだ入試や学期末の行事の行事が続きます。

お元気でお過ごしください。

そして家にこもることの多いこの頃、ときには野山を歩いてみませんか。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年2月11日 (金)

春立てば【研究室から】

立春過ぎての雪となりました。

平安時代の和歌では、春になって降る雪が「残りの雪」です。

消え残っている雪ではありません。

(この話、以前記事にしました)

「春たてば花とや見らん白雪のかかれる枝にうぐひすのなく」

数ある古今集版本のうち、江戸時代に最も早く出版された本でご覧ください。Sagabonkokinshu左から2行目、素性法師の歌です。

右から2行目「鶯のこほれる涙」が読めますか。

冬の寒さに鶯の涙さえ凍る、と言う着想のこまやかさ!

伝嵯峨本と呼ばれる、堂々の書物です。

同じ読むのであれば、贅沢な本。

本学図書館には、多くの古典籍があります。

展示や授業で実物に接することが出来るでしょう。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年1月30日 (日)

馥郁【研究室から】

寒い日が続きます。

風邪や流行中の疾疫には十分ご注意ください。

さて、花の少ないこの季節にも、梢から素敵な香りが。

蝋梅です。

つややかな花びらを透かして、冬の陽が降り注ぎます。

江戸時代の初めに朝鮮半島経由で渡来しました。

ですから、これほどの花ながら古典和歌や物語には登場しません。Photo30分ほど自転車を走らせた場所で撮影しました。

馥郁たる香りをお届け出来ないのが、残念です。

では、おすこやかにおすごしください。

特に受験生のみなさんは、万全の体調管理を。

また、多少のことには狼狽しない度胸も必要です。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年1月19日 (水)

初花【研究室から】

前回が初音、今日は初花です。

桜は勿論、梅も咲くには少し早そう。

食べ物の話です。なじみの和菓子屋さんにありました。

ふんわりとした形を牛皮で作っています。

早速、花三島の皿と取り合わせ。Photo皿は李朝前期です(お菓子は出来たて)。

和菓子屋のご主人は、「初花」か「此の花」か迷われたようです。

「此の花」は大阪ゆかりなので、「初花」にされたとか。

(「此の花」がなぜ大阪に縁があるのかはお調べください)

なお、このお店の先代は、俳句や郷土史に造詣の深い方でいらっしゃいました。

では、寒中おすこやかにお過ごしください。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年1月 8日 (土)

初音【研究室から】

あけましておめでとうございます。

珍しく横浜にも雪が積もりました。

初音と言っても、さすがに鶯はまだ鳴きません。

『源氏物語』の巻の名前です。

六条院の豪奢な春を描いており、室町時代には新年に読むお公家様もいました。

さて光源氏36歳の正月、明石姫君が住む御殿を訪れます。

「童・下仕など御前の山の小松を引き遊ぶ」楽しげな住まいです。

そこへ姫君の母明石の御方から「髭籠ども、破子など」が届けられました。

(髭籠・破子はヒゲコ・ワリゴと読みます)

300年以上昔に刊行された絵入小型本の、当該場面をご紹介。Img20220108_16343656姫君の前に、松の枝に付けた消息や髭籠が描かれます。

松を引くのは、「今日は子の日なりけり」だから。

(今年の初子は11日です)

春の年中行事はたくさんありますので、お調べくださってはどうでしょうか。

では、本年もごひいきに。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年12月28日 (火)

雪の花【研究室から】

さすがに年の暮れ、寒いですね。

あちこちで大雪になっているようです。

雪を花に見立てる趣向は古典和歌に多く見られます。

梅や桜になぞらえたり、雪そのものを花ととらえたり。

なるほど雪は六弁の花のようです。

古河のお殿様土井利位は、雪の結晶を研究して『雪華図説』を出しました。

(利位は、としつらと読みます)

無骨な刀装具にも雪の花が一輪。Photo_2「初雪」の家紋に少し似ています。

絶妙の配置に見えますが、皆様はどう思われますか。

担当者は、しゃれた意匠にいたく感心。

今年最後の記事となりました。

「冬ながら空より花のふりくるは雲のあなたは春にやあるらむ」

では、明春。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年12月16日 (木)

燈火ちかく【研究室から】

続けて「衣(きぬ)縫う母は」が出てくる方は、相当のご年配でしょう。

唱歌「冬の夜」の1番です。

2番の「過ぎしいくさの手柄を語る」を覚えておられる方は、もっとご年配。

などと言う話ではありません。

草子巻物を広げ、火を近くともしながら推敲をかさねた歌人がいました。

若くしてなくなった宮内卿が、その人です。冬の歌をまず1首。

「時雨つる木のした露はおとづれて山ぢのすゑに雲ぞなりゆく」

よく知られているのは、恋の歌。

「聞くやいかにうはの空なる風だにも松に音するならひありとは」

享年20歳くらいと言われております。どんな女性だったのでしょうか。

『歌仙部類抄』に絵姿がありますので、お目にかけます。

(勿論、絵師が想像して描いた図)Photo『歌仙部類抄』の絵は、丸顔の親しみやすい女性が多く登場します。

橋本直香の撰、絵は高島千春です。

もっとも愛らしい(と担当者が考える)図をご紹介して、今回はおしまい。

冬の夜長にじっくりと読書なさってください。Photo_2

鶴見大学文学部日本文学科研究室