2021年6月16日 (水)

嘉祥【研究室から】

めでたい字が並びます。

今日(16日)は、「嘉祥頂戴」のゆかしい日でした。

(南宋の通貨、嘉定通宝と関係があると言う説も)

江戸時代、お菓子を拝領したり贈答したり、の年中行事です。

公家も武家も、そして町人たちもお菓子のやりとりを楽しみました。

明治以降ほとんど廃れてしまい残念。

現在「和菓子の日」と言われているのは、そのなごりです。

となれば、この月はやはり「水無月」。

ういろう生地に小豆を散らしています。

もともと関西のお菓子でしたが、最近こちらでも見かけるようになりました。

シンプルで涼しげな品に爽やかな染付皿を組み合わせて、お目にかけます。Photo染付は中国南方の窯、清朝前期でしょうか。

(ピンボケのようですが、もともと滲んだ絵柄です)

読書の合間には、是非お茶とお菓子を。

お気に入りの器があれば、申し分なし。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年6月 7日 (月)

変化【研究室から】

「へんか」でも「へんげ」でも、お好きな読み方で結構です。

花の色の多彩・微妙は、アジサイがその代表格。

土質によっても色調が変化します。

唐の時代玄宗と楊貴妃のころ、一日数回色の変わる花があったそうです。

「花妖」と呼ばれました。

アジサイへ戻って、古典文学にはなかなか登場しません、

飛び離れて古く、万葉集に例があります。

江戸時代、そして近代になってから、広く好まれるようになったのでしょう。

小説家では泉鏡花、画家では鏑木清方が愛好家の代表格。

鏡花の作品に清方が挿絵を描いたものは、人気があり高価です。

絵師鰭崎英朋も、鏡花の小説に彩りをそえました。

(英朋については、以前ご紹介したことがあります)

この時期ですから、爽やか・あっさりの染付に再度登場してもらいます。

アジサイにちなむ涼しげな和菓子を載せました。

Photo江戸の後半、伊万里です。

裏側が洒落ていますので、見参見参。Photo_2高台内の印は、この時期の伊万里染付にしばしば見かけます。

もとの字は「乾」でしょうか。

なお、研究棟脇の雑木林でホトトギスが鳴いていました。

その昔、コウモリを見たこともあります。

研究棟の廊下には、時にムカデも出てきます。

自然豊か、と言うことでしょう。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年5月24日 (月)

あやめもしらぬ【研究室から】

研究棟の脇では、アジサイが咲き始めました。

とは言え、5月の花はやはりアヤメ。

(菖蒲と書くこともありますが、それは正確にはサトイモの仲間)

「ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめもしらぬ恋もするかな」

(古今和歌集 巻11恋1)

これを本歌として、多くの作品が詠まれました。

例を挙げるのに迷うほど、たくさんあります。

「うちしめりあやめぞかをるほととぎす鳴くや五月の雨のゆふぐれ」

アヤメの歌の中で、屈指の秀吟かと思います。

(出典と作者は、お調べください)

ついでに、もう一つアヤメ。Cimg0021古染付の皿と薯蕷饅頭の取り合わせです。

アヤメの焼き印と緑の葉で、水辺を描いています。

織部饅頭の応用でしょうね。

古染付の素朴で雅味のある風情も、いいものです。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年5月10日 (月)

新緑【研究室から】

風薫る季節、新緑のみずみずしさは格別!

初夏の光に若葉が揺れ、6号館のまわりもしたたるばかりの緑です。

木立が描かれた古い絵をとりだしてみます。

Ferdinand_kobellドイツの田舎、18世紀の風景です。

これはエッチング(銅版、6㎝×4㎝くらいの小品)、

ひなびた風趣が伝わってきます。

この細やかさを木版画で再現することが、19世紀に盛んとなりました。

堅く緻密な木口を利用した木版です。

では、英国ロマン派を代表するワーズワースの詩集から1枚。Wordsworth流れに沿った農家のたたずまいが、なんともすばらしい。

これも小品(10㎝×5㎝程度)です。

2枚を比べてみてください。

銅版と木版、区別が付きますか。

(見分けるためには、ちょっとしたコツが必要)

なお、図書館には英国ロマン派に関する優秀なコレクションがあります。

和漢洋を問わず、時の流れを乗り越えた書物は魅力的です。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年4月25日 (日)

春から夏へ【研究室から】

緑が日一日と濃くなっています。

この季節の花は、まず藤でしょう。

勅撰集では、春のすえに置かれたり夏の初めを飾ったりします。

「夏にこそ咲きかかりけれ藤の花松にとのみも思ひけるかな」

これは初夏の例。

「暮れぬとは思ふものから藤なみの咲けるやどには春ぞひさしき」

もちろん、晩春の詠です(出典はご自分でお調べください)。

すこし珍しい花を見ました。Photo藤は紫か白が通り相場、これは薄紅です。

香り高く、蜂が飛び回っています。

なお、歴史的仮名遣いでは「ふぢ」。

よって「淵」の掛詞としてもしばしば使われます。

「むらさきのゆゑに心をしめたればふちに身投げむ名やはをしけき」

外出が難しいとき、書物の中を散策するのはとてもよいこと。

禍転じて福となす、かどうかは、心がけ次第です。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年4月11日 (日)

花筏【研究室から】

新学期です。

キャンパスに少し賑わいが戻ってきました。

図書館でも学生さんの姿を以前より多く見かけます。

さて落花繽紛の候、桜の盛りは短いもの。

(八重桜はまだしばらく見られます)

散った花びらが連なって流れに浮かぶ様子を、「花筏」と呼びます。

室町時代から使われた、風雅な言葉です。

文学のみならず、美術工芸にも花筏の意匠が登場します。

武具にまで現れるところ、とても面白いと思います。Photo_2京透かしの鉄鍔です。

洗練のデザインも錆色も抜群、ほれぼれする美しさ!

なお「花筏」と言う落語もあります。

ここから先は、ご自分でお調べください。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年3月30日 (火)

爛漫【研究室から】

キャンパスの桜が見事です。

学生さんの姿がまばらなのは、少し寂しいところ。

やはり活気と若い力に満ちた大学でなくては。

さて、おなじみ図書館脇、満開の桜です。

Photo江戸時代のはじめ、日本にやってきた朱舜水は桜を好みました。

「中国ニコレヲ有ラシメバ、マサニ百花ニ冠タルベシ」とも言っております。

水戸光圀公(あの黄門様です)に仕え、故国に帰ることはありませんでした。

名儒と評価される一方、「南京ノ漆工」にすぎないとの説も。

なお、図書館は設備・サービスともに新しくなっております。

活用してみてください。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年3月19日 (金)

春の日差し【研究室から】

春たけなわ、花粉も大いに飛んでいます。

数年前まで研究棟近くに見られたカタクリは、姿を消してしまいました。

やむをえず郊外の山城跡まで足を伸ばし、春の妖精と対面。

(spring ephemeraと言い、複数形はephemerae。なぜでしょうか)

山の斜面、日当たりの良いところに咲いています。Photoこれほど魅力ある花ながら、万葉集に1首詠まれたのみ。

(大伴家持の歌、ご自分でお探しください)

近代に至るまで、文学作品に登場することはないと思います。

不思議なことではありませんか。

近くの喫茶店で一休みしようと思ったら、この日もお店が一休み。

COVID19の影響です。

ではもう1枚お目にかけて、今回はここまで。Photo_2鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年3月 8日 (月)

唐猫【研究室から】

源氏物語には、3月の出来事が数多く描かれます。

北山へ謔病まじないに出かける若紫巻、朧月夜と再会する花宴巻、

須磨の謫居も、明石姫君誕生も、絵合も3月。

ことに衛門督柏木が女三宮の姿を見てしまう場面はよく知られています。Img_20210308_0001慶安3年(1650)跋絵入源氏物語から、見開きの左側を載せました。

御簾の内側に立つのが女三宮、散る花の下には柏木。

簀子敷に大小の猫がいて、小さい方の首には綱が結ばれています。

「唐猫のいと小さくをかしげなるを、すこし大なる猫おひつづきて」

和猫ではなく、中国より渡来の猫です。

この綱によって御簾の端が引き上げられました。

「言ひしらずあてにらうたげ」な女三宮に、柏木は心を奪われてしまいます。

あとはご自身でお読みください。

なお、金沢文庫に貴重な古典籍が数多く所蔵されていることはご存じでしょう。

ネズミよけとして、中国から猫を取り寄せています。

「金沢猫」は評判が高く、近代になってもこの名前が残っていました。

称名寺あたりの野良猫は、ひょっとすると外来種の血筋かもしれません。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年2月25日 (木)

水ぬるむ【研究室から】

梅の花、満開。

マスクをしていても、馥郁たる薫りに陶然とします。

里山を散策、せせらぎの音が高くなっているのに気づきました。Cimg0012唱歌「春の小川」を思い出された方もあるでしょうが、あれは渋谷川。

暗渠となってしまって、面影もありません。

ちなみに、日本最初の鉛筆工場は渋谷川の水車を動力としました。

これもついでに余計なことを追加すれば

「わたしゃ鉛筆 しんから好きな ぬしのためなら 身を削る」

と言う俗謡もあります。

それはそれとして、盛りの梅に戻ります。

脱線するときりがない。
Cimg0010

おだやかな昼下がりです。

「ゆく水遠く梅にほふ里」が引用したいばかりに、この記事を書きました。

(出典はご自分でお探しください)

鶴見大学文学部日本文学科研究室