味の品格【研究室から】
みちのくのお土産を頂戴しました。江戸時代から続く老舗のお菓子です。
早速お茶を淹れて、一口。
驚きました。砂糖の味がしません。麦芽糖つまり水飴の味のみです。
基本的な素材は、米と水飴。あっさりとして、深い滋味を感じます。
実に淡泊で落ち着きのある和菓子です。
派手な包装はせず、端正に切り分けただけのその形には潔さと気品。
と申しても伝わりませんので、織部の小皿に載せてお目にかけます。織部は幕末の作、和菓子とよく調和する器です。
現在、刺激や甘みを追求した、色合いの強い食べ物があふれています。
担当者思うに、品のなさと紙一重。
それはそれで無視しがたい潮流なのでしょうが、
控えめな味やすっきりとした形も忘れてはならない、と思います。
「君子の交わりは淡きこと水のごとし」です。
(君子は、勿論「きみこ」ではありません)
お米で申せば、なんとかヒカリや何々コマチではなく、たとえば初霜。
メロンばかりではなく、時にはマクワウリ。
落ち着いた穏やかな味の食べ物こそ永く愛されるはず。
鶴見大学文学部日本文学科研究室