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2024年9月

2024年9月17日 (火)

月を見る心【研究室から】

中秋の名月が冴えています。

「月見ればちぢにものこそかなしけれ」は百人一首でおなじみの歌。

月をみると、どなたも「ちぢに」思われるのではないでしょうか。

もちろん「かなし」ばかりではなく、楽しいことも懐かしいことも。

さて、いつもの食い意地です。

なじみの和菓子屋へ出かけましたら、月見の菓子がいろいろ。

桃山生地の焼き菓子を求めましたので、御覧にいれます。Photo器は高麗末李朝初期の堆花文青磁小皿です。

(やや地味ですが、なかなかの稀品)

お茶を一服、秋風に吹かれ月を眺めて

「恋しさは同じ心にあらずともこよひの月を君見ざらめや」

などと言ってみたくなりませんか。

「水のおもに照る月なみをかぞふればこよひぞ秋のもなかなりける」

拾遺集の歌を引用してみて「ああ、最中にすれば」と気付いた次第。

ちなみに皿の上のお菓子は「満月焼」の名前が付いていました。

少々野暮だと思います。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2024年9月 3日 (火)

野分のあと【研究室から】

台風の影響も一段落、日暮れ時の虫の音が高くなってきました。

雨や風に悩まされた8月でしたが、皆様おかわりありませんか。

研究棟まわりの銀杏の大木が、地面に青い実を散らしていました。

古典文学では、『源氏物語』野分の巻が8月の暴風を描いて有名です。

そして「風は」と「野分のまたの日こそ」も、負けず劣らずの秀逸さ。

ご存じ『枕草子』から、江戸時代の版本でどうぞ。Photo右面最終行、朱の合点が掛けられているところは

「八九月ばかりに雨にまじりてひきたる風、いとあはれ也」

左面9行目から「のわきのまたの日こそいみじうあはれにおぼゆれ」

以下はご自分でお読みください。

平安時代の野分は文学作品にほとんど取り上げられないと言えるでしょう。

鎌倉時代以降、野分に詩を感ずる人が増えてきました。

雨や風に面白さを見いだす清少納言は、なかなかに冴えていると思います。

なお上の図は『清少納言旁註』より取りました。

これから読書の秋です。

たくさんお読みください。

鶴見大学文学部日本文学科研究室