« 2024年12月 | メイン

2025年1月

2025年1月28日 (火)

時代を超える美しさ【研究室から】

梅が薫り始めました。

今年は、田中親美翁の生誕150年に当たります。

田中翁は100歳の天寿を全うされましたので、没50年でもあります。

渋谷の一等地に居を構えて、生涯無職!

佐佐木信綱博士が本郷の高台に住んで生涯定職なし、と好一対です。

書も絵も練達、古美術の鑑定にかけては最上級、さらに料紙装飾の見事さ。

数々の名品を複製され、その成果は現在も色あせておりません。

では、芸術院恩賜賞の技を御覧ください。Photo西本願寺本三十六人集複製にあたっての試作品です。

益田鈍翁・原三渓・安田善次郎など錚々たる財界人がこぞって応援しました。

高雅な芸術と優れた人柄に全幅の信頼を寄せたからです。

もう1つお目にかけます。Photo_2ほぼ1世紀を経て、色あせない美しさ。

一般の皆様は西洋の画家の名前を口にされても、田中翁はご存じない。

残念なことです。

(担当者は国粋主義者ではありません、念の為)

現在、ご本山付置の宝蔵館で田中親美翁の料紙が少々見られます。

本学の方々は無料です。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2025年1月15日 (水)

冬の月【研究室から】

新年のご挨拶が遅れました。

今後ともご贔屓に。

さて、昨晩は旧暦の12月15日でした。

冴え冴えとした月が夜空高くかかっているのは、冬の見物です。

冬の月については、源氏物語朝顔巻に有名なくだりがあります。

「人の心をうつすめる花紅葉よりも、

 冬の夜の澄める月に雪の光あひたる空こそ、

 あやしう色なきものの身にしみて」

古い注釈によれば、枕草子に「すさましきもの、しはすの月夜」とあったとか。

現在、枕草子のどの本にも、この表現が見当たりません。

二中歴には「冷物 十二月月夜」と出ていて、これが該当しそうです。

ともあれ、朝顔巻の文章を絵画化したのが、こちら。Photo源氏小鏡の明暦版から採りました。

(この絵、慶安跋の絵入源氏物語とよく似ています)

では、暖かくしてお過ごしください。

鶴見大学文学部日本文学科研究室