2022年12月24日 (土)

錦繍残映【研究室から】

あっという間に年の暮れ。

原稿に追われたせいもあり、今年は紅葉探訪に出かけられませんでした。

大学やご本山を歩いて、錦繍のなごりを惜しみます。

六号館の下、常磐木の中に色鮮やかな灌木がありました。Photo境内からなじみの和菓子屋へ。

主人曰く「クリスマスにちなみ、栗を使った饅頭を作りました!」

クリスマスの饅頭は・・・と思い、せっかくのお薦めながら遠慮。

普通の栗饅頭を求めて帰りました。

根来の皿に載せてお目にかけます。Photo_2気取らずたっぷりとした量感が好ましい。

室町時代の根来は、使いやすく温かみのある器です。

では、よいお年をお迎えください。

(もう一回更新するかも知れません)

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年11月27日 (日)

鶴見大学日本文学会のご案内【研究室から】

錦繍の候、ここ鶴見でも紅葉が見頃を迎えています。

さて、今年度も、下記の通り鶴見大学日本文学会を開催いたします。

ご案内が直前になってしまいましたが、ぜひご来場を頂けましたら幸いです。

日時:12月3日(土)14:00~

会場:大学会館(マクドナルド横) 地下1Fホール

【研究発表】

河田翔子(本学大学院博士後期課程)

「小松帝説話をめぐって」

【講演】

山本まり子(本学准教授)

「教材としての『和漢朗詠集』―高校「書道」への導入の意義―」

 ※予約不要、来聴歓迎

 (今回は、対面での開催を予定しております。直接会場にお越しください。)

Photo

今回は、本学の大学院生・河田さんによる研究発表と、

書道の授業をご担当くださっている山本先生、お二方にご登壇いただきます。

作品の緻密な考証と考察、更にはそれを授業に活かす試みまで、

多岐にわたるお話が伺えそうです。

本学の学生や院生、卒業生の皆様はもちろんのこと、

ご興味のある方はどうぞお誘い合わせの上ご来場ください。

皆様のご来駕をお待ちしております。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年11月20日 (日)

続 食欲の秋【研究室から】

久しぶりに田舎へ帰りました。

家の管理やら畑の手入れやら、仕事は一山あります。

当然山を越えきれませんから、三合目程度で打ち止め。

屋敷内で採れたものをご紹介します。

柿と柚子です。

(銀杏やミカンもありましたが、割愛)2022kaki1日が落ちると真っ暗、そして静まりかえっています。

鶏や犬の声、お寺の鐘の音などを耳にした昔、少しは村里らしかったようです。

夜は、森鴎外を読んで過ごしました。

(全集の端本がおいてありますので)

父祖の地へ腰を落ち着けるのは、さて、いつになりますか。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年10月27日 (木)

食欲の秋【研究室から】

山のものも海のものも、おいしい季節です。

里には、柿に栗、芋に豆、何と言っても新米。

ではありますが、文学部ですから、やはり書物の中の食べ物を。

文明開化の頃、英会話熱が高まりました。

教養のため、というよりは、商売上の便宜をはかって、です。

ちょいと珍しい会話の本をご紹介します。

外国人相手の料理屋で働く女性向けでしょうか、書名は『英語こと葉づかひ』。Photo明治20年(1887)、下町本所の出版です。

We have some excellent grapes.に対し、

「私どもにはよい葡萄があります」はまあまあの訳。

しかしThere are some for you.の

「召しあがりませんか」はなかなかこなれた言い方ではないでしょうか。

100年以上前の仲居さんたちがどんな発音をしていたか、知りたいですね。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年10月10日 (月)

神無月のころ【研究室から】

徒然草の「栗栖野といふ所を過ぎて」を思い出される方もおられるでしょう。

が、源氏物語の帚木です。

「神無月のころほひ、月おもしろかりし夜」に女性の家を訪れる話。

「ころほひ」が「ころ」となっている本もありますので、徒然草と同じ表現。

ある殿上人が女性のところを訪れると言うので、同車して出かけてみると

なんと自分の恋人の家でありました。Photo「風にきほへる もみぢの みだれなど あはれに けにみえ」とあります。

江戸時代前期の能筆、おっとりと品の良い書です。

書き手が特定できるのではないか、と思いますが、まだ調べておりません。

紅葉の金泥下絵も洒落ています。

ことしは何処の紅葉を眺めましょうか。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年9月25日 (日)

花より団子、ではなく【研究室から】

この時期はおはぎ。萩の花の次です。

各地で多彩なおはぎが作られています。

みなさまのふるさとでは、どんなおはぎを食べていますか。

小豆(粒餡・漉し餡)、きな粉、ごまが一般的な形です。

担当者はきな粉のおはぎが苦手でした。

きな粉のおいしさを実感するようになったのは、かなり後年です。

それはそれとして、今回はごまのおはぎに登場して貰います。Cimg0023洗練された形ではありませんが、貫禄十分。

器は江戸中期の藍九谷です。

秋草と蔓帯のしゃれたデザインで、何を載せても引き立ちます。

小豆は、奈良時代以来の食材です。

小豆粥は『土左日記』にも出てきます。

室町時代におはぎの原型はあったでしょうが、まだ砂糖は普及していません。

甘くないおはぎでしょう。

江戸時代になって、大いに好まれる食べ物となりました。

では、秋の夜長、お茶とお菓子と読書でお楽しみください。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年9月 4日 (日)

秋芽子の花【研究室から】

「ももくさの花のひもとく」と詠まれるほど、いろいろあります。

万葉の時代から可憐で慎ましい姿が愛されたのは、萩。

芽子あるいは芽の1字で、ハギと読みます。よって秋芽子はアキハギ。

鹿鳴草とも書くのは、鹿が好んで立ち寄ると考えられたから。

派手な所はありませんので、撮影が難しい。

Photo花の魅力をお伝えできず,すみません。

せめてものことに、和歌1首。

「ふるさとのもとあらの小萩いたづらに見る人なしに咲きかちるらむ」

第3代鎌倉殿の作です。出典はおしらべください。

なお、萩の若い茎はおいしく食べられるそうです。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年8月13日 (土)

芳香【研究室から】

夏休みもほぼ半ば、計画通り進んでいますか。

暑さにげんなりしているところへ、小荷物到来。

旧真桑村(現本巣市)の友人が届けてくれました。

荷を開けると、部屋中に薫りが満ちあふれます。

そう、マクワウリ。

あっさりと癖のない味、そして品の良い芳香が特徴です。

ウリは2000年以上の昔から、日本で好まれてきました。

その中でも、最も有名な品種がマクワウリ。

文学作品、特に江戸のものにはしばしば登場します。

では、旧真桑村のマクワウリをご覧ください。Photo本場中の本場物、皿は芙蓉手古伊万里染付です。

(この古伊万里は江戸中期の作、なかなかの名品)

しかし旧真桑村でも現在は作る農家が少ないとか。

淡泊な食感は、強い味に慣れた現代人の好みにあわないのかもしれません。

残念なことです。

なんとか広まってほしい、と担当者は思います。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年8月 1日 (月)

100年前の鶴見【研究室から】

暑い日が続きます。

それを理由に、ホームページ更新を怠けたわけではありません。

おもしろい資料を見つけ、古本屋さんから届くのを待っていたから、です。

パノラマを折りたたんだ小さな本1冊、奥付に年紀がありません。

しかし案内文が付いていて、大正頃(1912~1926)の図とわかります。

今の体育館のあたりに大きな池があったり、JR鶴見駅が省線鶴見であったり。

もちろん、大学・短大は創立以前。Photo_2このような絵図は結構たくさん作られました。

郷土資料として有益、とても楽しい鳥瞰図となっています。

しかし、ご本山にも大学にもほとんど所蔵されていないのは、残念です。

いくつか手元に集まってきていますので、いずれご紹介。

では、十二分のご自愛を。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年7月13日 (水)

文月の源氏【研究室から】

明日はパリ祭です。

仏蘭西革命自体に関心がうすくとも、詩人や画家がうたげを開く日でした。

(音楽家は、パリ祭にあまり熱心でなかったようです)

近代俳句の句の季語にもなっているほど。

だんだん下火になった理由はわかりません。

毎年革命記念日にちなむ記事を書いてきましたが、ついに種切れ。

困ったときは紫式部頼み、と言うことで、椎本巻を取り上げます。

宰相中将から中納言に昇進した薫が、久しぶりに宇治を訪れる場面です。Photo上質の斐紙に金泥下絵、品の良い能書です。

2行目以下「まいり給へり、七月ばかりになりにけり、宮こには

    まだいりたゝぬ秋のけしきを、音羽山ちかく」と続きます。

名文として評価の高いところです。どうぞご自分でお読み願います。

念のため申しますと、旧暦では7月から秋。

来年のパリ祭までに適切な道具を探しますので、これにてご勘弁ください。

鶴見大学文学部日本文学科研究室