【研究室から】

2023年4月 4日 (火)

花曇り【研究室から】

桜に由来する表現がたくさんあります。

花冷え・花筏・花の下風・・・

大学から本山の境内へ出かけた日は、花曇りでした。

もう花吹雪となっているでしょう。

(太宰治に『花吹雪』と言う小説があります)3水の上に散れば「花のさざ波」。

新入生のみなさん、大いに学び大いに楽しんでください。

大学は素敵なところです。

近くの古本屋では、お好みの書籍がお手頃に。

季節の味が並ぶ和菓子屋もあります。

「花より団子」ですね。

ついでに余計なことを申しますと、

「このホームページはすばらしい」などとおっしゃるのは「桜言葉」。

どんな意味だか、お調べください。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2023年3月22日 (水)

大きな眼【研究室から】

久しぶりに鎌倉まで出かけました。

緑濃く,鶯はややくたびれた声。

永井路子先生の展示を見るためです。

小さなコーナーに原稿と初版本がならんでいました。

急遽準備して追悼の意を示すところに、地元の心意気を感じます。

本学の図書館にもいろいろ資料がありますので、是非展示を。Photoさて、永井先生の話。

大きな眼がとても印象的な方でした。

昔、切支丹大名牧村政治(まきむら まさはる)について調べたことあり。

彼の関わった玉篇がおもしろいので、論文をひとつ書くつもりでした。

これを永井先生に申し上げますと、先生の大きな眼が輝きました。

政治の生涯及びその縁者のことを、詳しくお話されたのです。

史料の上を虫が這うように、とは先生の持論ですが、なるほどと納得。

作家としてのみならず、歴史家としての技量も恐ろしい水準です。

担当者が論文をお蔵入りさせたことは、申すまでもありません。

(どこかにノートが残っているはず)

明るく気さくな、お人柄でした。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2023年2月22日 (水)

歌は思へど【研究室から】

ご存じ「早春賦」の一節です。

梅が見頃を迎え、桜便りの待ち遠しいこのごろ。

まだ鶯は「声も立てず」。

そこで梅の蒔絵小皿に、和菓子をあしらうと・・・Photoはい、梅に鶯です。

鶯餅は、椿餅や猪子餅ほどの長い歴史を持っていません。

それでもざっと400年以上の伝統のある和菓子です。

発祥の地は大和郡山とか。

昔、柳沢文庫の調査に出かけたことがあります。

(郡山の藩主は柳沢氏)

文庫はお城の中にあり、閲覧室の雰囲気も窓からの眺めも上々でした。

このようなふみくらの番をして余生を送るのは、理想のひとつでしょう。

時々鶯餅をつまんだりしながら。

夢物語ですね。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2023年2月 9日 (木)

暦の上では【研究室から】

もちろん春ですが、明日あたり雪の心配もしなければ。

(以前ご紹介したとおり、春に降る雪を「残りの雪」と言いました)

それでも蝋梅が花盛り、早咲きの桜は蕾を開きかかっています。

明治の浮世絵師楊洲周延に『東風俗福づくし』があります。

蝙蝠・呉服など、フクと読む文字にちなんで描き上げた作品です。

高く薫る梅を背景に、あでやかな女性を描いた「馥郁」が佳品。

それはそれとして、馥郁たる蝋梅へもどりますと・・・Photoなかなかの光景でした。

さて、残念なお話をせねばなりません。

歴史小説の分野で大きなお仕事を残された永井路子先生のご逝去です。

評論・随筆・学術的著作にも健筆を振るわれました。

以前、縦横に書き入れのある手沢の国史大系を見たことがあります。

すっかり綴じが緩んでおり、韋編三絶もかくやと思われました。

明るく飾らないお人柄を忘れることは出来ません。Epson001本学に来ていただいた折、おねだりしたサインです。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。

永井先生につきましては、またいずれ。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2023年1月26日 (木)

寒中お見舞い【研究室から】

さすがに大寒、冷えますね。

旧暦ですと、この時期は立春を越えていますから、梅が香る頃。

源氏物語では、明石の姫君の裳着も間近となり、薫物合わせが行われます。

梅が枝冒頭は「御もぎのことおぼしいそぐ、御心おきて世の常ならず」。Epson0014行目「正月のつごもり」以下、読めますでしょうか。

念のため申しますと「つごもり」は末日ではありません。

月の終わり頃ですから「正月つごもり」はちょうど今時分。

光源氏39歳の春、物語ではもうしばらく栄華の時が続きます。

あとはご自分でお読みください。

なお、上の書物は江戸時代前期の写本です。

では、お風邪など召しませぬよう。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2023年1月 6日 (金)

本年もよろしくお願いいたします【研究室から】

授業再開、憂鬱などとおっしゃってはいけません。

これから定期試験や卒論の口頭試問等々、年度末へ向けての行事が目白押し。

体調管理を怠らないようにしてください。

さて、あけましておめでとうございます。

ことしも日本文学科のホームページをご贔屓に。

初春らしく、お神酒と三宝で御祝いします。

三宝は牡丹唐草の蒔絵、大ぶりですが、雛道具でしょう。Photo載せてあるのは、焼き芋ではありません。そっくりのお菓子です。

(店頭で見かけ、巧みな技と着想に思わず買ってしまいました)

隣の染付は、小山弘治さんの作。

お若い頃、まだ20代ではなかったかと思います。

絵付けのうまさに感心して、求めました。

(勿論,担当者も若かったのです)

では、本年もよろしくお願いいたします。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年12月24日 (土)

錦繍残映【研究室から】

あっという間に年の暮れ。

原稿に追われたせいもあり、今年は紅葉探訪に出かけられませんでした。

大学やご本山を歩いて、錦繍のなごりを惜しみます。

六号館の下、常磐木の中に色鮮やかな灌木がありました。Photo境内からなじみの和菓子屋へ。

主人曰く「クリスマスにちなみ、栗を使った饅頭を作りました!」

クリスマスの饅頭は・・・と思い、せっかくのお薦めながら遠慮。

普通の栗饅頭を求めて帰りました。

根来の皿に載せてお目にかけます。Photo_2気取らずたっぷりとした量感が好ましい。

室町時代の根来は、使いやすく温かみのある器です。

では、よいお年をお迎えください。

(もう一回更新するかも知れません)

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年11月27日 (日)

鶴見大学日本文学会のご案内【研究室から】

錦繍の候、ここ鶴見でも紅葉が見頃を迎えています。

さて、今年度も、下記の通り鶴見大学日本文学会を開催いたします。

ご案内が直前になってしまいましたが、ぜひご来場を頂けましたら幸いです。

日時:12月3日(土)14:00~

会場:大学会館(マクドナルド横) 地下1Fホール

【研究発表】

河田翔子(本学大学院博士後期課程)

「小松帝説話をめぐって」

【講演】

山本まり子(本学准教授)

「教材としての『和漢朗詠集』―高校「書道」への導入の意義―」

 ※予約不要、来聴歓迎

 (今回は、対面での開催を予定しております。直接会場にお越しください。)

Photo

今回は、本学の大学院生・河田さんによる研究発表と、

書道の授業をご担当くださっている山本先生、お二方にご登壇いただきます。

作品の緻密な考証と考察、更にはそれを授業に活かす試みまで、

多岐にわたるお話が伺えそうです。

本学の学生や院生、卒業生の皆様はもちろんのこと、

ご興味のある方はどうぞお誘い合わせの上ご来場ください。

皆様のご来駕をお待ちしております。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年11月20日 (日)

続 食欲の秋【研究室から】

久しぶりに田舎へ帰りました。

家の管理やら畑の手入れやら、仕事は一山あります。

当然山を越えきれませんから、三合目程度で打ち止め。

屋敷内で採れたものをご紹介します。

柿と柚子です。

(銀杏やミカンもありましたが、割愛)2022kaki1日が落ちると真っ暗、そして静まりかえっています。

鶏や犬の声、お寺の鐘の音などを耳にした昔、少しは村里らしかったようです。

夜は、森鴎外を読んで過ごしました。

(全集の端本がおいてありますので)

父祖の地へ腰を落ち着けるのは、さて、いつになりますか。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2022年10月10日 (月)

神無月のころ【研究室から】

徒然草の「栗栖野といふ所を過ぎて」を思い出される方もおられるでしょう。

が、源氏物語の帚木です。

「神無月のころほひ、月おもしろかりし夜」に女性の家を訪れる話。

「ころほひ」が「ころ」となっている本もありますので、徒然草と同じ表現。

ある殿上人が女性のところを訪れると言うので、同車して出かけてみると

なんと自分の恋人の家でありました。Photo「風にきほへる もみぢの みだれなど あはれに けにみえ」とあります。

江戸時代前期の能筆、おっとりと品の良い書です。

書き手が特定できるのではないか、と思いますが、まだ調べておりません。

紅葉の金泥下絵も洒落ています。

ことしは何処の紅葉を眺めましょうか。

鶴見大学文学部日本文学科研究室