2018年6月22日 (金)

机辺を飾る【研究室から】

読んだり書いたり、机は私たちの城のようなもの。

いろいろ工夫して、心豊かな空間を創りましょう。

それはそれとして、古美術骨董の世界も有為転変をまぬがれません。

ある時代の花形が省みられなくなってしまい、

今まで注目されなかった品に光が当たる。

たとえば、酒器。

盃はいつの世にも高く評価されます(出来が良ければ、の話)。

しかし酒席のありようが大きく変わり、杯洗・盃台は使われなくなりました。

洒落た意匠の古伊万里が、驚くほど手軽に買えるようになったわけです。

しかし、杯洗・盃台を何に使うか、が問題。

杯洗ならば料理の盛り付けに転用することは簡単です。

盃台も、エッグスタンドに使うと言う人がいます。

二番煎じはおもしろくないので、ペンスタンドにしました。

(やっぱり二番煎じか)

Photo 60年ほど前に制作された、独逸と亜米利加の万年筆を添えて。

2本とも十分使用に堪え、現在の万年筆より深い味わいに満ちています。

勿論、染付の盃台も存在感たっぷり。

ちなみに背景は金更紗です。

みなさん、お好みの文房具で机辺の雰囲気を盛り上げませんか。

読書も調査も原稿書きもどんどん進む、と思います(多分・・・)。

誰です、嗚呼落城!と仰るのは。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年6月 6日 (水)

梅雨入り【研究室から】

傘の手放せない季節となりました。

今日も、鬱々とした重い空が広がっています。

とは言え、雨後の緑には捨てがたい魅力があります。

季節に相応しい和菓子も。

かなり迫真的な梅の実です。

赤織部の小皿と共に見参見参。

Photo_2 薄紅の暈かしがなかなか巧妙です。

(撮影技術未熟、作ってくださった職人さんに申し訳なし)

つい、だらけてしまいがちなこの頃、少しだけ気を引き締めて。

では、また。

青梅に眉あつめたる美人かな(蕪村)

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年5月18日 (金)

芍薬【研究室から】

牡丹の豪奢も賞すべきこと勿論、しかしより清楚な芍薬が担当者の好みです。

(しっかりシャクヤクと呼んでください)

さて、古今集に芍薬の花があるのをご存じですか。

探したけれど見つからない、と怒ってはいけません。

「難波津にしゃくやくの花冬ごもり今は春べとしゃくやくの花」!

江戸時代の小話に出てきます。

遡ると、室町時代まで「しゃくやくの花」の洒落がたどれます。

調べてみてはいかが。

文学史のレポートくらいにはなるでしょう。

Photo 芍薬と牡丹とは、少し所属が違っています。

ご存じでしたか。

立てば芍薬座れば牡丹、の俗謡もあります。

花の楽しみは尽きません。

では、27日のオープンキャンパスで会いましょう。

研究室脇にアジサイが咲いています。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年5月 7日 (月)

緑の鶴見、風薫る横浜【高校生・受験生のみなさんへ】

連休も明け、さあ気分一新。

5月27日(日)は、今年度最初のオープンキャンパスです。

素顔の大学を是非御覧ください。

進学相談・模擬授業・キャンパスツアーなど盛りだくさん。

そして、江戸時代の楽しく創意に満ちた本が見られます。

(運がよければ、手に取ることも出来るでしょう)

Photo 鮮やかな色彩、上々の保存。作られたのが江戸の昔と思えないほど。

実物を見ていただくと、押し模様(凹凸)も施されているのがわかります。

Photo_2 この二冊で、ひとまとまり。絵を左右に並べてみてください。

一続きの画面となります。凝った意匠ですね。

Photo_3 さて、頁のあちこちに奇妙な印があります。これはなんでしょうか。

当日、神林尚子准教授が鮮やかに謎解きをしてくれる手筈となっております。

「学びって面白い!」のコーナーへどうぞ。

どなたでも大歓迎。新緑のキャンパスでお待ちしております。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年4月19日 (木)

段階的進行【研究室から】

桜の次が藤、その次は新緑と、とどこおりなく季節は進んでおります。

みなさんの勉強(研究)は、いかが。

ちょうどこの時期にふさわしいくだりをご紹介します。

『枕草子』の「木は」。

Photo_2 右から5行目以下、読めますでしょうか。

「花の木/どもちりはてゝをしなべたるみどりに

 /なりける中に時もわかずこきもみぢ」

(/は改行、濁点を付けました)

古い本はこんな顔をしている、と分かれば1年生。

なんとか字が読めれば2年生、中味を少しずつ調べると3年生。

4年生以上は、本文系統の判断もする。

では、専門家(教員)なら。

いろいろ出来なければと思いますが、まず書写年代の見当を付けられること。

さあ、がんばりましよう。学問は楽しいものです。

ついでに申しますと、この本、小津桂窓の旧蔵。

桂窓は本居春庭(宣長の息)に学び、馬琴とも交流がありました。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年4月 4日 (水)

春の小説【研究室から】

いろいろ思い浮かぶところですが、お薦めは『草枕』。

奇想と名文、漱石の魅力あふれる作品です。

羊羹を讃えるくだりは、よく知られています。

(他に、駄菓子も登場)

ただし、青く練り上げられた羊羹、と言うところがわかりにくい。

いったい何を使った羊羹なのでしょう。

青磁の皿に盛るのも、取り合わせとしては付きすぎていませんか。

そこで青磁を避け、別の器に乗せてみます。

黄瀬戸か唐津か京焼か、悩んだあげく古伊万里の鉢を選びました。

Photo 撮影後、抹茶を一服。

抹茶羊羹と付きすぎているところは、ご勘弁願います。

さて、新学期が始まります。

どんなことでもよろしいですから、なにか楽しみを見つけてください。

授業・課外活動・図書館・友人との会話、学食であっても大いに結構。

教員にあれこれ質問してみるのも、楽しいかと。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年3月21日 (水)

花と吹雪【研究室から】

「花吹雪」ではありません。

咲き始めた桜に雪が舞う春分の日。

朝の雨が雪に変わり風も相当強く吹いたお昼過ぎ、研究棟4階へ。

窓の外はこんな具合です。

Photo ハナ二アラシノタトヘモアルゾ

「サヨナラ」ダケガ人生ダ

よく知られた井伏鱒二の名訳、原詩は于武陵の「勧酒」です。

(原詩と訳詩の全体は、ご自分でお調べください)

もっとも、井伏は深刻な内容を軽く表現する練達の文章家。

気安く「サヨナラ」ダケガ人生ダなどど口まねしてはいけません。

別れも、そして出会いも、それぞれに大切なものですから。

と、節目の季節に思います。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年3月 4日 (日)

ところかわれば【研究室から】

卒業式が近づきました。

桜の待ち遠しいこのごろです。

(担当者は、その前にカタクリ探訪の予定)

さて、この季節の味は桜餅と草餅。

名工加藤春岱の織部皿と取り合わせてお目にかけます。Photo 御覧のように、道明寺を使っています。

これは西の方の作り方、関東ではクレープ式が主流です。

くず餅も、西と東では大きく異なります。

土地それぞれの作り方や素材を楽しめるのが和菓子の魅力でしょう。

では、皆様の春休みが充実した日々でありますように。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年2月12日 (月)

紅白【研究室から】

春は名のみの、この頃。

とは言え、日差しは強く明るくなっています。

その陽光に誘われて、天神様に参詣しました。

まだ花には早いか、と思いましたら、祠の前に紅梅と白梅。

お社の小ささが、絶妙。Photo 「白妙ににほふもあかぬ梅の花くれなゐふかき色さへぞみる」

紅白の梅を1首のうちに詠んだ歌は存外少ないようです。

元真集より採りました。

(和歌研究の大家で植物にもお詳しいK博士にお尋ねしてみたいところ)

さて、成績発表の日が近づきました。

予想以上の出来映えならば、勿論おめでたい。

不本意な結果であれば、心機一転。

これから、です。

ちなみに天神様のご縁日は25日。

散策のついでに、お参りしてみてはいかが。

鶴見大学文学部日本文学科

2018年2月 1日 (木)

古典籍との出会い【研究室から】

昨日より、図書館の貴重書展が始まりました。

「源氏物語の小道具」が主題です。

解題も(一応)出来ておりますので、御覧願います。

ご意見・お尋ねなど、お気軽に。

こんな具合に並んでおります。Photo 折々解題担当者が会場をうろうろしますので、ご質問をどうぞ。

初公開の資料や当代屈指の碩学より寄贈された書物など、それぞれに個性的。

時を超える古典籍の魅力を、お楽しみください。Photo_2 愛らしい小品もお待ちしております。

なお、卒業論文を対象とする日本文学会賞が今年も授与されます。

ご質問があれば、各ゼミの担当教員にお尋ねください。

鶴見大学文学部日本文学科研究室