市井の愛書家【研究室から】
台風一過、涼しくなったかと思えばまたこの暑さ!
夏を過ごす最高の、とは申しませんが、最良の方法の一つは、読書です。
普段読まない(読めない)本を休みの間に、是非どうぞ。
さて、今年は絵師鰭崎英朋の没50年です。
英朋の名前をご存じの方は、近代文学もしくは近代絵画の相当な通でしょう。
鏑木清方と共に小説の挿絵を多く描きました。
特に泉鏡花の作品では、単なる挿絵以上の出来映えを示しています。
清方とは月岡芳年の孫弟子、仲のよい友達でした。
しかし一方は画壇の巨匠と仰がれ、一方は町絵師として終わることに。
清方の場合彼の文学趣味が画業に幸いしたでしょうし、
英朋の職人気質と並外れた器用さが、大成を妨げたのかもしれません。
(このあたりの機微は、別の機会に)
趣味の将棋は、関根金次郎名人に教わって有段の腕前。
書も趣味の一つであり、日本画家らしく仮名の上手、隷書また見事です。
古書籍を集める趣味もありました。
しゃれた蔵書印を使っています。
なお、英朋は将棋の駒の字を書いています。
凝った隷書で、これも見かけることは少ないと思います。
贅沢は申しませんので、英朋銘虎斑島黄楊の彫り駒が一組ほしい。
担当者の夢です。
鶴見大学文学部日本文学科研究室