2019年3月 6日 (水)

稚桜【研究室から】

ご本山勅使門脇に、早咲きの桜が揺れておりました。

ごく若い桜です。

堂々の老樹もまことに結構ですが、若木のみずみずしさは格別。

上代文学を勉強された方は、ワカザクラの含まれる地名を思い出しませんか。

(桜を名に持たれる天皇は、さてどなたでしょう)

担当者は、「瑩日瑩風高低萬顆之玉」の詩句を思い出しました。

と申しますのは、瑩山禅師ゆかりの境内ですので。

Photo もうしばらくで、キャンパス全体が花に包まれる季節となります。

今春入学される方々にも、予定通り単位修得が出来た学生さんにも、

この時期にはお祝いを申し上げたいところですが、

さしあたってまず、ご卒業の皆様の未来が輝かしいものでありますように。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年2月23日 (土)

小物の魅力【研究室から】

カタクリはあと少し、桜も今年は早そうです。

でもその前に、くしゃみ・鼻水の季節。

気分を変えるべく、お気に入りの文房具を取り出します。

古い硯滴です。

(「水滴」と仰る方が多いようです)

南北朝、と言うところでしょうか。

Photo 700年ほど前、瀬戸で焼かれました。

高さ約4.5糎、掌(たなごころ)の骨董!

さて皆さんは、この器に何を思われますか。

こぼれるほどの愛嬌、素朴と野趣、練達の技・・・

担当者は古武士の風格を感じます。

無事卒業の日を迎えられる方も、まだ学びの日が続く方も、

お気に入りの小物で机を飾ってみてはいかがでしょう。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年2月12日 (火)

春は名のみの【研究室から】

厳しい寒さが続きます。

とは言え、あちこちで梅が咲き始めました。

草の芽吹きも春の訪れを告げています。

そこで、例の器と和菓子。

Photo 皿は室町の根来(ネゴロと読んでください)。

500年以上経て、さすがに貫禄十分。

草餅も、倭名類聚抄に「久佐毛知比」と載り、由緒あるお菓子です。

3月3日に食すのが平安時代以来の故実らしいですけれど、美味しい時に。

間違っても根来を囓ってはいけません。

ともあれ、学生の皆さんと受験生の方々のご健康を祈ります。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年1月24日 (木)

大と小と【研究室から】

オホナムチ・スクナヒコナ(大汝・小比古尼の他、表記は多様)の昔から

大小対となるものがたくさんあります。

ただ今女性に人気の刀・脇差もそのひとつ。

いろいろな例を捜してみると、面白いでしょう。

本日は伊万里の大小です。Photo 大きい方は食器、小さいのは化粧品(たとえば白粉)を入れるもの。

小さい蓋物の直径が約7.5糎、可愛い焼き物です。

3段重ねですが、1段分なくなってしまいました。

(担当者がなくしたわけではありません、念のため)

不完全でも、並べてお見せすると小さい方が好まれます。

「なにもなにも小さきものはみなうつくし」(枕草子)。

では、時節柄十二分のご自愛を。

受験生のみなさんは特に気をつけて。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年1月 8日 (火)

読書始め【研究室から】

新しい春を迎えました。倍旧のご贔屓を願い上げます。

その昔、貴族達は年の初めに格調高い、もしくは風雅な書物を読みました。

日本書紀であったり、古今集であったり、時には仏典であることも。

三条西家で源氏物語の初音巻を読んだことは、よく知られています。

Photo 江戸時代後期の豆本を出してみました。

手の中にすっぽり収まってしまう可愛らしさは特筆もの。

保存も刷りも上々です(自慢したくて仕方がない)。

皆様は何を読まれましたか。

しばらくすると試験の季節です。

受験生の方も、大学生の方も、風邪には十分気をつけて。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年12月29日 (土)

冬の花【研究室から】

と言っても、福寿草ではありません。

自転車を乗り回していて、出会った黄色の花。

蝋細工のような光沢と濃い香りの先から、冬の日が斜めに差しておりました。

Photo ロウバイです。

勿論、うろたえたわけでもありません。

ここで、近代文学に関心のある方は、立町老梅を思い出していただけますか。

(『吾輩は猫である』に出てきます。猫は相当の難物ですよ)

思い出されなかった方は、文庫本と共に除夜の鐘をどうぞ。

よいお年をお迎えください。来年もご贔屓に。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年12月18日 (火)

若書き【研究室から】

卒業論文はいかがでしたか。

思い通りに、それとも、もう少し頑張れば・・・。

次は定期試験です。あともう一山、それを過ぎると春が近づきます。

さて、みなさんとほぼ同じ年齢で、近代の作家は何を書いていたでしょうか。

漱石は比較的遅い出発ですが、学生の頃見事な漢文で『木屑録』を綴ります。

尾崎紅葉はすでに大家かつ売れっ子でした。

面白いのは、芥川龍之介の最初の作品が『老年』だと言うこと。

幸田露伴も、若い時代に晩歳老境を語る小説を書いています。

『太郎坊』です。音に聞こえた『五重塔』よりずっとおもしろいでしょう。

頭の薄くなった亭主の昔話仕立てですが、相手をするおかみさんも見事。

「伊万里の刺身皿」「同じ永楽」「中は金襴地で外は青華で」などと

すらすら続けられる女性が、はて、向こう三軒両隣におられましょうや。

道具修行をかなり積まないと、このおかみさんのようにはなりません。

左利き必読、となれば、盃を並べてみたくなります。

Photo 古伊万里染付筒型猪口から左回りにご紹介。

絵瀬戸盃・明呼子盃・無地志野猪口・李朝粉引盃です。

台は李朝の漆器、時折これで飯を食います。

(担当者は、情けないことに下戸)

では、お風邪など召しませぬよう。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年12月 5日 (水)

輝く音楽【研究室から】

今日は、モーツアルトの命日です。ご存じでしたか。

明快な構成、繊細で陰翳に富む旋律、絶妙の転調・・・

彼の音楽を聴くことは、大きな喜びです。

音楽史上最高の神童は、亡くなるまでその楽才を輝かせていました。

と言うより、才能を伸ばし続けた、のではないでしょうか。

十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人、の皮肉とまったく逆です。

(講師で俊英、准教授で知恵者、教授になったらただの人、とは申しません)

天才を偲んで、その頃作られた器をご紹介します。

Photo ひょっとすると、バッハくらいまで遡るかもしれません。

捻文輪花の古伊万里染付鉢、お菓子は添え物です。

お定まりのレクイエムを出さない、このひねくれが担当者の身上。

さて、今週土曜には日本文学会秋季大会がございます。

どうぞお越しください。お待ちしております。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2018年11月19日 (月)

鶴見日本文学会のご案内

日ごとに寒さの増してくる折柄、いかがお過ごしでしょうか。

去りゆく秋を惜しみつつ、今年も鶴見大学日本文学会秋季大会のご案内です。

日時:12月8日(土)14時〜

会場:鶴見大学会館 地下メインホール

講演:加藤弓枝(本学准教授)「正保版『二十一代集』の変遷」

   金 文京  (本学教授)「森川許六『和訓三体詩』について」

   ※予約不要、来聴歓迎

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もちろんどなたでもご来聴歓迎、ご予約等は一切不要です。

どうぞ皆様お誘い合わせの上、賑々しくご来駕ください。

今年度から本学に赴任された加藤先生と、今年度で残念ながら本学を退官される金先生、

お二人揃ってのご講演が伺える記念すべき機会です。どうかお聴き逃しなく。

※なお、図版は(例によって)日本文学科ゆかりのあの方から頂戴いたしました。

 これはもしや、とご興味を持たれた方、どうぞ日本文学科の合同研究室へ、

 あるいは当日、日本文学会の会場にてお声掛けください。

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鶴見大学文学部 日本文学科

2018年11月13日 (火)

ひとからひとへ【研究室から】

と申しても、物騒な感染症のことではありません。

人が愛玩し育てたものについて、です。

器であれば伝世品。掘りの手(発掘品)と対比されています。

たとえ粗末な碗であれ、猫の餌入れみたいな皿であれ、

長い年月、人の手を経たものには不思議な艶やかさが備わります。

(野趣横溢、新鮮素朴な掘りの手も、勿論魅力的です)

風景も同様、手間暇かけて幾世代も受け継がれた里山や庭の美しさ!

凝り過ぎた、あるいは媚びたお庭は、思わせぶりで嫌みですけれど。

ともあれ、ひさしぶりに谷戸の地形を生かした庭園へ。

Photo しばらく前に載せました雑木林の風情と比較してください。

時折ししおどしの音が、のどかに聞こえてきました。

さて、日本文学会秋季大会は目下鋭意準備中です。

御案内は次回といたします。

鶴見大学文学部日本文学科研究室