今年はデング熱を心配しているうちに、秋の植物をいろいろ見逃してしまいました。
そこで去年のこの時期に植物園で撮った蒲(がま)の写真を。
わかりにくいですが、緑の間に茶色い棒状の穂が見えるでしょうか。
もう一枚は少し遠くから写したものです。
穂は見えにくいですが、水中から群生している様子がわかると思います。
冬になるとこの穂がほころびて、たくさんの綿毛が出てきます。
『古事記』の因幡の白兎の伝説に、この蒲が登場します。
和邇(わに)に皮をはがれた兎が、大穴牟遲神(おおなむぢ)に蒲を散り敷いた上に転がれば皮膚が癒えると教えられ、その通りにすると元通りになったという話ですが、実際蒲の花粉には止血効果があると言われています。
近寄って撮影することができず、全く写真映えしませんが、実物を見るとかなり存在感のある面白い植物です。
鶴見大学文学部日本文学科
前回の大磯に続き、翌日は掛川を訪ねました。
西行の「年たけてまた越ゆべしと思ひきや命なりけり小夜の中山」(新古今和歌集)などで有名な歌枕で、旧東海道の日坂宿と金谷宿の間にある難所、小夜の中山の写真です。
山の斜面に作られた茶畑が目前に迫ってきます。
小夜の中山は夜泣石の伝説でも有名ですね。
轟業右衛門という男に斬り殺された妊婦お石の魂魄が、そばの丸石にのりうつり夜ごとに泣いたという伝説で、最後はお石の傷口から生まれた子が業右衛門を討って恨みをはらします(曲亭馬琴『石言遺響』)。
これがその夜泣石。久延寺(きゅうえんじ)境内にあります。
他に事任八幡宮(ことのままはちまんぐう)にも行きました。
『枕草子』にも登場する由緒ある神社で、現在はパワースポットとして人気だそうです。
大きなクスノキとスギのご神木が印象的でした。
鶴見大学文学部日本文学科
夏休みも終わり、だいぶ涼しくなってまいりましたね。
9月14日(日)はオープンキャンパスです。
模擬授業は、高田信敬先生と中川博夫先生のコンビで行い、テーマは「古典とコンピュータ」です。
お楽しみに!
先日、大磯・掛川に行ってきました。
大磯の鴫立庵です。
西行が大磯あたりで詠んだとされる「心なき身にもあわれはしられけり鴫(しぎ)たつ沢の秋の夕暮れ」(新古今和歌集)にちなんでいます。
庭にはたくさんの石碑が立てられていました。
八十もの碑があるようです。
熱海に移動し、お宮の松を見ました。
尾崎紅葉『金色夜叉』中の名場面、主人公寛一とお宮の別れの場面(「来年の今月今夜のこの月を」の台詞で有名ですね)の舞台といわれています。
これは初代お宮の松。
現在は二代目お宮の松ががんばっていて、その隣には寛一とお宮の像が立っています。
もっと険しい表情をしているイメージでした。
鶴見大学文学部日本文学科
8月23日(土)はオープンキャンパスです。
模擬授業は新沢典子先生による「古代の文学と現代日本語」です。
前回に引き続き、多くのみなさまのご来場をお待ちしております!
先週、平泉に行ってきました。
あいにくのお天気で、山からは雲が湧き出し、霧が立ちこめていました。
奥州藤原氏初代清衡が建てた中尊寺金色堂は、この中に保存されています。
子どもの頃に金色堂を見たときには、ただただ金だという印象しかありませんでしたが、改めて見ると螺鈿細工がとてもきれいでした。
芭蕉はここで「五月雨の降りのこしてや光堂」の句を残していますが、曾良の日記によると、芭蕉が中尊寺を訪れた日は晴れだったようです。
毛越寺大泉が池です。
見る方向によって、池の趣がいろいろに変わります。
雨が降ったりやんだりしたせいもあるかもしれません。
境内には「夏草や兵どもが夢の跡」の芭蕉直筆句碑がありますが、ほかにこの句を新渡戸稲造が英訳して揮毫した碑もありました。
The summer grass
'Tis all that's left
Of ancient warriors' dreams.
Inazo Nitobe.
新渡戸稲造は、ご存知の通り旧五千円札に描かれた人で、岩手県出身です。
梅雨が明けて本格的な暑さがやってまいりましたが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
8月3日(日)はオープンキャンパスです。
模擬授業は、江戸時代のパロディ小説『仁勢物語(にせものがたり)』(なんの作品のパロディかわかるでしょうか?)についての話です。
ぜひお越しください!
奈良に調査に行ったついでに、石上神宮に行ってきました。
『日本書紀』にも記述が見える、とても古い神社です。
ここに蔵されている、金象嵌の銘文が施された七支刀(しちしとう)は、日本史の教科書などにも取り上げられており、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
石上神宮は布留(ふる)社ともいいます。
大学生の頃に復曲能「布留」を観たことを思い出しました。
国宝の拝殿です。
また境内には、いろいろな種類の鶏がたくさん放し飼いにされています。
神鶏も暑そうです。
うら手には美しい水田が広がっていました。
鶴見大学文学部日本文学科
7月20日(日)はオープンキャンパスです。
模擬授業は片山倫太郎先生による「芥川龍之介『羅生門』冒頭の技巧」です。
高校の国語の授業とはひと味違った『羅生門』のお話をぜひ聞きにいらしてください!
研究室で紅花をいただきました。
和歌では末摘花(すえつむはな)といいます。
『源氏物語』には末摘花と呼ばれる鼻の紅い姫君が登場しますが、この姫君が鼻が紅いことを紅花と掛けているわけです。
花はアザミに似て、黄色がかった赤色をしており、染料や口紅の材料になります。
まゆはきを俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花
芭蕉がおくのほそ道の旅中、山形で詠んだ句で、「眉はき」はお化粧に使う小さな刷毛のことです。
とてもやさしい姿をしています。
鶴見大学文学部日本文学科
6月22日(日)はオープンキャンパスです。
模擬授業は三宅知宏先生による「”ことば”の分析」です。
受験生のみなさま、ぜひいらしてください!
梅雨の晴れ間が続いています。
少し前ですが、梔子(くちなし)が満開でした。
梔子は甘い香りが特徴的で、夜の暗闇の中でもそれとわかるほどです。
『源氏物語』を原作にした『あさきゆめみし』という漫画では、六条御息所の生霊が夕顔を取り殺すシーンで、梔子の香りが非常に印象的に用いられています。
(ただし、こうした描写は原作にはありません。)
今はしぼんで黄色く変色してしまっているものが多くなりました。
秋には赤い実を結び、「山吹の花色衣主や誰問へど答へずくちなしにして」と詠まれるように、実は染料になります。
もう一つ、今咲いていたのが未央柳(びようやなぎ)。
金糸桃(きんしとう)とも呼ばれますが、柳とも桃とも関係のないオトギリソウ科の植物です。
「びようの柳」「びようの花」などと、古くから俳句の歳時記類に登場していますが、作例は多くはありません。
金糸のような雄しべが美しいですが、こちらもそろそろ枯れた花が目立つようになりました。
鶴見大学文学部日本文学科
先週末に撮った雪の下という植物です。
写真は真上から撮ったもので、根元が上の方にきてしまっているためわかりにくいですが、五枚の花びらのうち、大きな二枚が下に向かって垂れています。
夏に咲くのに雪の下というのは面白い名前です。
雪の下名のらで寒し花の色 越人
日さかりの花や涼しき雪の下 呑舟
江戸中期の句です。夏の暑い日のもとでも、雪の下の白さには涼しさが感じられると詠まれています。
また雪の下は別名虎耳草ともいい、薬の原料になりました。
二枚の大きな花びらが虎の耳に見立てられたのではなく、丸くて毛の生えた厚みのある葉から、このように呼ばれるようです。
写真では上の方に写っている葉が雪の下の葉です。
葉の写真もきちんと撮っておけばよかったです。
鶴見大学文学部日本文学科
有磯海(ありそうみ)は富山の海岸で、古来歌枕として大変有名な土地です。
芭蕉は『おくのほそ道』の中で、有磯海を訪ねたいと思いつつ果たせなかった心残りを「わせの香や分け入る右は有磯海」の句に詠んでいます。
またこの辺りには、多祜の浦(たこのうら)という歌枕もあり、こちらは万葉の時代から藤が詠まれています。たとえば、次の越中の国守であった大伴家持の歌です。
藤波の影なす海の底清み沈著(しつ)く石をも珠とぞわが見る
(藤の花の影を作る湖の水が清いので、沈んでいる石も珠のように美しく見ることだ)
しかし、江戸時代には随分様子が異なっていたようで、安永七年に刊行された『おくのほそ道』の注釈書には「多祜の浦」について「海辺氷見の町の北、布施の海のほとり、今、田となる」と記されています。
この写真を撮った日には、海の向こうに雪をいただく立山連峰が見えました。
うまく写らず残念です。
鶴見大学文学部日本文学科