2013年9月19日 (木)

三五夜中新月色

今日は中秋の名月です。

中秋の名月といえば、中国の唐の時代、白居易が遠方の地に左遷された親友の元稹(げんしん)を憶って詠んだ漢詩に、次のような一節があります。

  三五夜中新月の色 

  二千里外故人の心

三五夜は三×五で十五夜のこと、新月とは出たばかりの月、故人は旧友のことで、ここでは元稹を指します。

遠く二千里の彼方にいる君は、自分が見ているのと同じこの月をどんな思いで見ているのだろうか。

この詩句は、古来日本でも非常に有名で、『源氏物語』須磨巻にも光源氏がこの句を朗誦する場面があります。

こうした月のこころは、江戸時代の西鶴の句にも生きています。

  鯛は花は見ぬ里もあり今日の月(『阿蘭陀丸二番船』)

新鮮な鯛、美しい桜のない村里はあるが、今夜のこの名月だけはどこからでも眺めることができる。

今宵は是非お月見を。

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鶴見大学文学部日本文学科

2013年9月 7日 (土)

立石寺

9月15日(日)はオープンキャンパスです。

模擬授業は、高田信敬先生と中川博夫先生による「古典資料とコンピュータ」という、ちょっと珍しいお話です。

ぜひ聴きにいらしてください!

前回の続きになりますが、塩竈神社の翌日は、山形市山寺の立石寺へ行きました。

芭蕉が「おくのほそ道」の旅で「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」の句を詠んだお寺です。

麓から撮った写真です。山の中にあるのがわかりますでしょうか。

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現在は「シッシャクジ」というのが一般的ですが、芭蕉が『おくのほそ道』を執筆したときは「リュウシャクジ」と呼んでいたようです。

登山口近くに芭蕉と、ともに旅をした門人曽良の像がありました。奥が芭蕉で手前が曽良です。

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杉の間の石段を登ります。

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『おくのほそ道』に「岩に巌を重ねて山とし」というのはこんな風でしょうか。

数年前は入ることのできた場所が、立ち入り禁止になってきつつあるようで、少し残念でした。

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芭蕉が立石寺を訪れたのは元禄二年の陰暦五月二七日、今の暦でいうと七月十三日です。

私が行ったのは八月末でしたが、まだ蝉の声がきこえました。

鶴見大学文学部日本文学科

2013年8月31日 (土)

塩竈神社

先日、塩竈神社と山寺へ行ってきました。

どちらも芭蕉が「おくのほそ道」の旅で訪れた地です。

今回は塩竈神社のお話を。

塩竈神社は宮城県塩竃市にある陸奥国一の宮で、塩土老翁神(しおつちのおじ)・武甕槌神(かけみかづち)・経津主神(ふつのぬし)を祀っています。

天然記念物の塩竈桜があることでも有名です。

鳥居から本殿までは二〇二段の階段が続いています。

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言い伝えによると、天孫降臨のとき武甕槌・経津主を案内して葦原の中つ国を平定した塩土老翁が、のちにこの地に留まって人々に塩を焼くことを教えたということです。

下の写真は、芭蕉が『おくのほそ道』に「神前に古き宝燈有」と記した灯籠。

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ところで塩竈には浦霞という日本酒の蔵元があります。

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これはその蔵の裏手です。はじめ何の蔵だろうと思って撮影しました。

家紋は丁字(ちょうじ)をモチーフにしたものだそうです。

丁字というのは、スパイスのクローブのことです。

鶴見大学文学部日本文学科

2013年8月20日 (火)

箱根遠足

8月24日(土)はオープンキャンパスです。

模擬授業では三宅知宏先生による日本語に関する面白いお話が聞けます。

ぜひいらしてください!

さて、昨日ゼミの遠足で箱根に行きました。

午前中に彫刻の森美術館、午後に強羅公園と大涌谷です。

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彫刻の森美術館のカール・ミレス「人とペガサス」。

空がきれいでした。

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大涌谷へと向かうロープウェイからは、強羅大文字焼の跡が見えました。

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大涌谷での記念撮影。

きれいに晴れていますが、少し視線を外すと、山からは雲が湧き上がっています。

楽しかったですね!

リフレッシュしたところで卒業論文をがんばりましょう。

鶴見大学文学部日本文学科

2013年8月 7日 (水)

夏の永平寺

永平寺へ参禅に行きました。
永平寺というと、越前の雪で真っ白な、冬のイメージがありましたが、夏は杉の緑が美しかったです。

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写真は昼間に撮ったものですが、特に印象的だったのは夜明け前です。
鐘の音とヒグラシの声が響き合い、山の緑がけむって青い空気を吸っているようでした。

永平寺の開山である道元禅師は、北条時頼に招かれ約半年のあいだ鎌倉に滞在し、帰山して「山を愛するの愛、初めより甚だし」という言葉を残しているそうです。

およそ750年前、道元禅師の目にはどのような山の姿が映っていたのでしょうか。

鶴見大学文学部日本文学科

2013年7月29日 (月)

をのが影追ふ

8月4日(日)はオープンキャンパスです。

模擬授業は、江戸時代中期の俳人で画家としても有名な、与謝蕪村の句と画についての話です。

ぜひ足をお運びください!

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水色の美しいオオシオカラトンボです。

蜻蛉(とんぼ)は夏にも多くみられますが、文学においては古来から秋の季題です。

涼しげな姿が爽やかな秋の季節によく合っているからでしょうか。

  行く水にをのが影追ふ蜻蛉(とんぼ)かな  千代女(『千代尼句集』)

この写真を撮ったときも、実際にはかなり暑かったのですが、トンボの姿は涼しそうでした。

千代女の句では「とんぼ」ですが、

  白壁に蜻蛉過(よ)ぎる日影かな  召波(『春泥句集』)

のように、「とんぼう」と四音で詠まれることも多くあります。

鶴見大学文学部日本文学科

2013年7月22日 (月)

土用の丑

昨日は多くの方々にオープンキャンパスにお越しいただき、どうもありがとうございました。

さて、今日は土用の丑の日です。

鰻を食べる日として知られていますが、土用とは何でしょうか。

中国古代には、宇宙は「木・火・土・金・水」という五気で満ちており、あらゆるものは五気のはたらきによって生じるとする、五行説が行われました。

五行説では、季節、方角、色、人の道徳など、あらゆる事柄が木・火・土・金・水のいずれかに当てられ、季節の場合、「木」は春、「火」は夏、「金」は秋、「水」は冬に割り当てられます。

これでは「土」がありません。

そこで、それぞれの季節の終わり五分の一の日数にあたる18日分を削って、それを集めて「土」としました。

土用の丑の日とは、特に夏の土用の間にやってくる丑の日のことです。

丑の日は12日のサイクルでまわってきますので、18日の間に二回丑の日がくる年もあります。

今年がそうした年で、8月3日が「二の丑」となります。

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丑の日に鰻を食べる習慣は、江戸時代の平賀源内や大田南畝の発案という説もありますがよくわかりません。

十分栄養をとって暑さに負けず、よい夏休みをお過ごしください。

鶴見大学文学部日本文学科

2013年7月17日 (水)

道のべの木槿

7月21日(日)はオープンキャンパスです。

模擬授業では、新沢典子先生による古代神話についての楽しい講義がきけます。

受験生のみなさま、ぜひいらしてください!お待ちしています。

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早くも梅雨明けし、本格的な夏がやってきました。

上の写真は、公園で見かけた八重咲きの木槿(むくげ)です。

木槿は夏から秋にかけて咲きますが、俳諧では秋の季語です。

芭蕉が野ざらし紀行の旅で詠んだ「道のべの木槿は馬に食はれけり」も秋の句です。

和歌や連歌では木槿はあまり詠まれません。

「槿花一日の栄」の言葉があるように、朝に咲き夕べにはしぼむ花としてはかないイメージのある木槿ですが、江戸時代には盛んに栽培され、白・赤・紫、一重・八重など、多様な品種が生み出されました。

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『丹青弌斑』という本の中の木槿の図。

こちらは白い花弁で奥が赤い、一重の木槿です。

鶴見大学文学部日本文学科

2013年7月 4日 (木)

修士論文中間発表会【お知らせ】

恒例の催しのご案内です。

毎年、前期定期試験時に行っております。

今年は、7月31日(水)午後2時より、1号館406番教室が会場です。

大学院生の晴れ姿、もしくは苦闘の様子をご覧になりたい方は、どうぞ。

勿論、入場無料・予約不要です。

さて、紫陽花も盛りを過ぎようとしています。

瀬戸の徳利に生けてみました。

地味、と言うより滋味あふれる器です。

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平凡のようでいて、なかなかの個性。

学問も、似たようなものではないでしょうか。

奇をてらわず、愚直に地道に。

そうすると、だんだん底光りするようになり、誰にも真似の出来ない研究が。

(となれば、上々ですけれど・・・)

鶴見大学文学部日本文学科

 

2013年6月22日 (土)

久方ぶりの、「お気に入り」【研究室から】

今日は、梅雨の晴れ間。

風格ある文房具を取り出してみました。

清朝乾隆(1736~1795)ころの文人、孫阜昌が愛玩した古硯です。

(伝来その他、詳しいことは今回省略)

細部がうまく撮影できず、すみません。

実物は、なめらかで深みのある硯面が油煙墨にふさわしい。

悪筆のも、ちょっと何か書いてみたくなります。

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先日、貞政少登先生にお見せしたところ・・・

じっくり作行きを検分、「水を持て参れ」との仰せ。

硯面に数滴垂らし、鋒芒を指で確かめられ、一言「明初」。

恐ろしい眼力に感心しました。

皆様それぞれの「お気に入り」で、机辺を飾られてはいかが。

研究が画期的に進む、ことはないにせよ、気分がよくなることは請け合います。

鶴見大学文学部日本文学科