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2021年6月

2021年6月29日 (火)

楽しい漢文【研究室から】

甘い物が3回続きましたので、ちょっと渋めのお話。

ここらでお茶、ではありません。

「それを勉強して何の役に立つのか」とよく批判されるのは、漢文と数学。

数学のことは後回しとして、漢文は役に立つのでしょうか。

あなたが学生ならば、ちやんと単位が取得出来ます。

漢文から得られた知識は、社会人となったとき、あなたの評価を高めます。

知的訓練としてごく上等ですから、汎用性のある頭脳を鍛えます。

と、いろいろありますが、そもそも短期的な役立ち方を求めることがおかしい。

もし「あなたは何の役に立つのか」と聞かれたら、困る人もいるでしょう。

それはさておき、読んで楽しい漢文もたくさんあります。

特に江戸時代、風刺あり笑いあり悪ふざけありの作品があまた生まれました。

その1つ、『昔昔春秋』。文庫本くらいの大きさです。

Photo

中国の古典『春秋左氏伝』の体裁により、格調高くおとぎ話を綴ります。

かちかち山・猿の生き肝・舌切り雀などを縦横に織り込んで、大筋は桃太郎。

明治になっても好まれ、版を重ねました。

先年物故された歴史学者黒板伸夫先生の、少年の日の愛読書とか。

大儒中井履軒の作と明記してありますが、実は赤井東海のいたずら。

どこまでも人を食った小品です。

ついでに申しますと、何かが出来ない時、その何かを貶める人がおられます。

(「役に立たない!」などど仰せられて)

貶めてしばしの落ち着きを得るのでしょうが、いかがなものか。

出来ない現状を率直に認め、少しでも出来るよう努力するのが、筋。

漢文とて、同じことです。

とうとう数学の話は出来ませんでした。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年6月16日 (水)

嘉祥【研究室から】

めでたい字が並びます。

今日(16日)は、「嘉祥頂戴」のゆかしい日でした。

(南宋の通貨、嘉定通宝と関係があると言う説も)

江戸時代、お菓子を拝領したり贈答したり、の年中行事です。

公家も武家も、そして町人たちもお菓子のやりとりを楽しみました。

明治以降ほとんど廃れてしまい残念。

現在「和菓子の日」と言われているのは、そのなごりです。

となれば、この月はやはり「水無月」。

ういろう生地に小豆を散らしています。

もともと関西のお菓子でしたが、最近こちらでも見かけるようになりました。

シンプルで涼しげな品に爽やかな染付皿を組み合わせて、お目にかけます。Photo染付は中国南方の窯、清朝前期でしょうか。

(ピンボケのようですが、もともと滲んだ絵柄です)

読書の合間には、是非お茶とお菓子を。

お気に入りの器があれば、申し分なし。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年6月 7日 (月)

変化【研究室から】

「へんか」でも「へんげ」でも、お好きな読み方で結構です。

花の色の多彩・微妙は、アジサイがその代表格。

土質によっても色調が変化します。

唐の時代玄宗と楊貴妃のころ、一日数回色の変わる花があったそうです。

「花妖」と呼ばれました。

アジサイへ戻って、古典文学にはなかなか登場しません、

飛び離れて古く、万葉集に例があります。

江戸時代、そして近代になってから、広く好まれるようになったのでしょう。

小説家では泉鏡花、画家では鏑木清方が愛好家の代表格。

鏡花の作品に清方が挿絵を描いたものは、人気があり高価です。

絵師鰭崎英朋も、鏡花の小説に彩りをそえました。

(英朋については、以前ご紹介したことがあります)

この時期ですから、爽やか・あっさりの染付に再度登場してもらいます。

アジサイにちなむ涼しげな和菓子を載せました。

Photo江戸の後半、伊万里です。

裏側が洒落ていますので、見参見参。Photo_2高台内の印は、この時期の伊万里染付にしばしば見かけます。

もとの字は「乾」でしょうか。

なお、研究棟脇の雑木林でホトトギスが鳴いていました。

その昔、コウモリを見たこともあります。

研究棟の廊下には、時にムカデも出てきます。

自然豊か、と言うことでしょう。

鶴見大学文学部日本文学科研究室