楽しい漢文【研究室から】
甘い物が3回続きましたので、ちょっと渋めのお話。
ここらでお茶、ではありません。
「それを勉強して何の役に立つのか」とよく批判されるのは、漢文と数学。
数学のことは後回しとして、漢文は役に立つのでしょうか。
あなたが学生ならば、ちやんと単位が取得出来ます。
漢文から得られた知識は、社会人となったとき、あなたの評価を高めます。
知的訓練としてごく上等ですから、汎用性のある頭脳を鍛えます。
と、いろいろありますが、そもそも短期的な役立ち方を求めることがおかしい。
もし「あなたは何の役に立つのか」と聞かれたら、困る人もいるでしょう。
それはさておき、読んで楽しい漢文もたくさんあります。
特に江戸時代、風刺あり笑いあり悪ふざけありの作品があまた生まれました。
その1つ、『昔昔春秋』。文庫本くらいの大きさです。
中国の古典『春秋左氏伝』の体裁により、格調高くおとぎ話を綴ります。
かちかち山・猿の生き肝・舌切り雀などを縦横に織り込んで、大筋は桃太郎。
明治になっても好まれ、版を重ねました。
先年物故された歴史学者黒板伸夫先生の、少年の日の愛読書とか。
大儒中井履軒の作と明記してありますが、実は赤井東海のいたずら。
どこまでも人を食った小品です。
ついでに申しますと、何かが出来ない時、その何かを貶める人がおられます。
(「役に立たない!」などど仰せられて)
貶めてしばしの落ち着きを得るのでしょうが、いかがなものか。
出来ない現状を率直に認め、少しでも出来るよう努力するのが、筋。
漢文とて、同じことです。
とうとう数学の話は出来ませんでした。
鶴見大学文学部日本文学科研究室