雑記

2026年10月15日 (木)

感謝状授与式および貴重書展についての報告

さる7月25日(土)、図書館1階エントランスホールにて、株式会社西田書店代表取締役の佐藤社長ご夫妻をお招きし、『横浜弌覧之真景』ご寄贈への感謝状授与式が行われました。

高田学長から感謝状が授与された後、伊倉図書館長から謝辞が述べられました。

この度、ご寄贈いただきました『横浜弌覧之真景』 (五雲亭貞秀画 明治4年(額入))は、横浜港を描いた貴重な古地図です。

貴重書展「横浜弌覧之真景と五雲亭貞秀の横浜絵」(7月25日(土曜日)~8月28日(金曜日)開催済み)にて他の横浜絵と一緒に公開し、7月25日13時より、伊倉図書館長(ドキュメンテーション学科教授) を講師として、ギャラリートークも行われました。

貴重書展「横浜弌覧之真景と五雲亭貞秀の横浜絵」【2026年7月25日(土曜日)~8月28日(金曜日)】|鶴見大学・鶴見大学短期大学部

西田書店様には、この度貴重な資料をご寄贈いただきましたこと、また、長年にわたり本学とお取引いただきましたことに深く感謝申し上げます。佐藤社長ご夫妻が末永くお健やかであることをお祈りいたします。

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2026年10月13日 (火)

山梨県立博物館秋期企画展 「甲斐絹物語」

山梨県立博物館で開催中の企画展「甲斐絹(かいき)物語 : その美しさには、ウラがある」に当館所蔵資料を貸し出しています。

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【会期】2026年10月10日(土)から11月30日(月)まで

【休館日】毎週火曜日(11月3日は開館、4日休館)

【時間】午前9時から午後5時まで

展示情報はこちら

「甲斐絹(かいき)」とは、輸入布を国産化し、明治時代から昭和時代初期にかけて山梨県の郡内地域で生産され、主に羽織の裏地に使われた絹織物です。人々が「個人(私)」を発見し、「共同体(社会)」との間で揺れ動いた近代、衣生活において「私」を表現する術となったのは、多種多様な色とデザインを取り入れた甲斐絹でした。

本展でご紹介するのは、裏地から始まった日本人の「私らしさ」の物語でもあります。山梨県外に流通した甲斐絹が里帰りするとともに、甲斐絹を使った羽織や生地見本等を、前後期あわせて100点以上ご覧いただける過去最大の甲斐絹展です。伝統と近代のモダンに彩られたデザインをお楽しみください。

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当館からは以下の資料を貸し出しています。

  • 御用御誂切本(ごようおあつらえきれほん)

※展示室の撮影許可をいただいています

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アクセス(JR中央線 石和温泉駅からバスで約15分、徒歩約35分)

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2026年10月 6日 (火)

神奈川近代文学館特別展「佐藤春夫展 情(こころ)あらば伝へてよ」

神奈川近代文学館で開催中の特別展「佐藤春夫展 情(こころ)あらば伝へてよ」に当館所蔵資料を貸し出しています。

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【会期】2026年10月3日(土)~11月29日(日)

【休館日】月曜日(10月12日、11月23日は開館)

展示情報はこちら

明治から昭和にかけて、詩歌・小説・随筆など多岐にわたる分野で活躍した文豪・佐藤春夫(1892~1964)。〈門弟三千人〉といわれるほど多くの知友や弟子を持ち、日本の近代文学に与えた影響はきわめて大きなものでした。

24歳のとき、神奈川県都筑郡中里村(現・横浜市青葉区)に暮らし、その体験をもとに書き上げた小説「田園の憂鬱」で作家としての地位を確立します。また、いわゆる「小田原事件」を背景に生まれた「秋刀魚(さんま)の歌」が日本近代詩を代表する抒情詩として知られるなど、神奈川ともゆかりの深い文学者です。

本展では反骨精神に富んだ春夫の文業を辿るとともに、谷崎潤一郎、芥川龍之介、太宰治ら、多くの作家からの書簡を紹介、人々の心をとらえた〈人間・佐藤春夫〉の実像に迫ります。

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当館からは3点の資料を貸し出しています。

  • 魔のもの[原稿]
  • 林芙美子 佐藤春夫あて書簡
  • 高橋新吉詩集

※展示室の撮影許可をいただいています

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2026年8月19日 (水)

ドキュメンテーション学科「図書館探検」が行われました!

8月4日(火)に文学部ドキュメンテーション学科主催の図書館探検が開催されました。ドキュメンテーション学科の先生たちが鶴見大学図書館の魅力を解説しました。普段は入ることのできない地下書庫を探検したり、貴重書を見学したりしました。参加していただいた高校生の皆さんには楽しんでいただけたことと思います。

8月4日(火曜日) ドキュメンテーション学科『図書館探検』開催! | 鶴見大学・鶴見大学短期大学部 受験生応援サイト

 

 

地下1階

Img_7730授業でも利用されるホール

 1階

Img_7732ドキュメンテーション学科の授業で学生が行った展示の一部をリバイバルした展示

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Img_7742鶴見大学図書館内も背景に出てくる『税金で買った本』の展示コーナー

 

 

2階 

Img_7745絵本・紙芝居コーナー

Img_7750静寂スペース閲覧席

Img_7751英語読本や漫画の英語版・日本語版など、多読本コーナーを設置したラーニングコモンズ

Img_7754遠隔会議やweb面接などが可能なワークスペース「テレキューブ」

 

 地下2階

Img_7757電動で開閉する集密書庫

 

 

 3階

Img_7760第1および第2貴重書庫の前で、源氏物語や解体新書などの貴重書を特別公開

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2026年6月30日 (火)

千葉市美術館企画展「おとぎの国のモードをさがして」

千葉市美術館で開催中の企画展「おとぎの国のモードをさがして/Fairy Tale MODE」に当館所蔵資料を貸し出しています。

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【会期】2026年6月27日(土)~8月30日(日)

【休室日】月曜日(7月20日をのぞく)、7月21日(火)

展示情報はこちら

展示リストはこちら

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時代や地域を超えて語り継がれてきた「おとぎ話」は、妖精や魔法使い、森、変身といった象徴的なモチーフに彩られながら、挿絵や装飾、舞台芸術、ファッションなどの視覚文化を通して豊かなイメージを形づくってきました。なかでも、赤ずきんのフードや長靴をはいた猫のブーツ、シンデレラのガラスの靴といった印象的な装いは、登場人物を象徴するイメージとして広く親しまれてきました。こうしたモチーフのなかには、おとぎ話の想像力とモードの感性がゆるやかに交差する様子を見て取ることができます。

本展では、19世紀から20世紀にかけてヨーロッパで花開いた挿絵本の世界を中心に、おとぎ話のイメージのなかに息づく「モード」をさぐります。また、ヨーロッパを中心に広がってきたおとぎ話の豊かなイメージの変遷を辿り、それらが時代の感性と響き合いながらどのように新たな姿をまとってきたのかを、美術・デザイン・ファッションの観点から多角的に読み解きます。

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当館からは、31点の資料を貸し出しています。

※展示室の撮影許可をいただいています

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【出品資料】

『ペローの物語ならびに教訓』 著:シャルル・ペロー
『シンデレラ、または小さなガラスの靴— 韻文と美しい挿絵を添えた紙人形絵本』
『ドイツ昔話集——「子どもと家庭のメルヘン」より(グリム兄弟校訂・口承伝承による)』 原作:グリム兄弟訳:エドガー・テイラー絵:ジョージ・クルックシャンク
『星々』 著:ジョセフ・メリー、フェリックス伯爵 [1849年] 絵:J・J・ グランヴィル
『新年の仮装祝賀会 ——「エリア随筆集続編」より』 原作:チャールズ・ラム絵:ウォルター・クレイン
「赤ずきん」(『赤ずきんの絵本』より) 絵:ウォルター・クレイン
「長靴をはいた猫」(『ペロー昔話集より) 原作:シャルル・ペロー絵:ジョー・アマン
「シャロットの姫君」(『詩集』より) 詩:アルフレッド・テニスン絵:ウィリアム・ホルマン・ハント
「ラプンツェル」(『グリム童話集』より) 原作:グリム兄弟訳:エドガー・ルーカス絵:アーサー・ラッカム
『3人のおとぎのお姫さま——白雪姫、眠れる森の美女、シンデレラ』 絵:キャロライン・パターソン
『シンデレラ』
『シンデレラ』(「ラウトリッジ社の新6ペンス・トイ・ブックス」No.106) 絵:ウォルター・クレイン
『子どものための音楽劇シンデレラ』 歌詞:ウィリアム・ラウトリッジ作曲:ルイス・N・パーカー絵:ウォルター・クレイン
『イエロー・ブック』第1巻 デザイン:オーブリー・ビアズリー
「シンデレラの靴」(『イエロー・ブック』第2巻) デザイン:オーブリー・ビアズリー
『シンデレラ、あるいは小さなガラスの靴』 原作:シャルル・ペロー訳:アリス・コービン・ヘンダーソン絵:ブランチ・フィッシャー・ライト
『シンデレラ』 再話:C・S・エヴァンズ絵:アーサー・ラッカム
『シンデレラ』 原作:シャルル・ペロー再話:ギータ・サワビー絵:ミリセント・サワビー
『シンデレラはどうやって舞踏会へ行ったのか』 著・絵:ジェシー・マリオン・キング
『したたかなシンデレラ』 著:ホランド・ロビンソン絵:マック・ハーシュバーガー
「千匹皮」(『ヘンゼルとグレーテルとその他の物語』より) 原作:グリム兄弟絵:カイ・ニールセン
「シンデレラ、あるいは小さなガラスの靴:壮大な寓話的パントマイム劇」台本 (1804年上演、ドルリー・レーン王立劇場)
『眠れる森の美女』 著:ダルジール兄弟 1868年絵:リチャード・ドイル、 J・R・プランシェ
「眠れる森の美女」(『青ひげの絵本』より) 絵:ウォルター・クレイン
「眠れる森の美女」(『眠れる森の美女とそ 再話:アーサー・クィラー=クーチの他のおとぎ話』より) 絵:エドマンド・デュラック
「アラジン」(『アラジンの絵本』より) 絵:ウォルター・クレイン
『アラジン』
『千夜一夜物語』 再話:ローレンス・ハウスマン絵:エドマンド・デュラック
『美女と野獣』 絵:E.V.B
「かえるの王子」(『ウォルター・クレインの絵本 ラージ・シリーズ第2巻』より) 絵:ウォルター・クレイン
「青い鳥」(『エドマンド・デュラックのおとぎ話——連合軍の昔話集』より) 絵:エドマンド・デュラック

撮影できる展示品もありました。(ほかにもいくつかあります)

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(青山学院大学図書館所蔵と当館所蔵)

Pxl_20260626_074043964(文化学園ファッションリソースセンター所蔵)

同時開催の展示「なぞとき!日本の物語絵」

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アクセス(千葉駅から徒歩15分、千葉都市モノレール「葭川公園駅」から徒歩5分)

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2026年6月25日 (木)

ヨーロッパ中世写本の世界 〜鶴見大学図書館零葉コレクション (3)〜

聖書零葉 Leaf from the Bible

詩篇I: 1〜7: 13(ハープを弾くダヴィデ王)

羊皮紙、寸法 195 x 140 mm、テキスト欄寸法 125/129 x 101 mm、2段37行

フランス北部、1270-1280年頃

登録番号 1379232

 

中世のヨーロッパでは、用途に応じて様々なタイプの聖書が制作されました。13世紀になるとパリをはじめとする大学都市において、大学生や修道士のための小型の携帯用聖書が登場します。現在の一般的な聖書よりもひとまわり小さなポケットサイズですが、ラテン語聖書全体が辞典の紙を思わせるほど薄い羊皮紙に記されています。彩色がほどこされ、金の装飾文字や彩飾挿絵が多数盛り込まれた写本も知られていますが、極薄の羊皮紙であるにもかかわらず文字や挿絵が反対側のページににじんでいないから驚きです。

鶴見大学に所蔵されているこの零葉は、そうした小型聖書に由来する「詩篇」の最初の一葉で、第1篇第1節「幸いな人です Beatus vir ...」から第7番13節「立ち返らない者に向かっては、剣を鋭くし、弓を引き絞って構え Nisi conversi fueritis, gladium vibravit ; arcum suum tetendit, et [...]」までがうすい褐色のインクで書写されています。 

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幸いな人です。

不敬な人々の計らいにかかわらず

罪ある者の道にとどまらず

傲慢な者と共に座らず

主の教えを愛し

その教えを昼も夜も反芻する人は。

...

 

Beatus vir qui non

abiit in consilio im-

piorum, et in via pec[cat]or[um]

no[n] stetit, et in cathe-

dra pestilencie non

sedit. Sed in lege

d[omi]ni voluntas eius

et in lege eius medi-

tabitur die ac nocte.

...

 

詩篇各節の冒頭は、最初の大文字(イニシアル)が2行にわたってオレンジがかった赤と青で交互に書かれ、長くのびる線条装飾で飾られているためひと目でそれと分かります。各詩行の最初の文字も、オレンジがかった赤と青で強調されています。

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全く同じ聖書写本に由来する詩篇2葉が、東京の国立西洋美術館に所蔵されています(L.2015-0153:詩篇77,56-81,2、L.2015-0154:詩篇108,29-116,2)。美術史家の駒田亜紀子氏は、各節最初の大文字からのびる装飾や図像の特徴などから、もとの写本はパリではなく北フランス地域で1270-1280年頃に制作された可能性が高いと指摘しています。写本はその後、15世紀にHerbert家によって建設され、1646年に破壊されたラグラン城 Raglan Castle(英国ウェールズ南部)の図書室に所蔵されていたことが購入先の資料に記録されています。

 

彩飾画

巻頭の大文字Bは、青地にピンクで8行に渡って書かれています(約30 x 26 ミリ)。その上には、白色で蔦模様が書き込まれています。内側には赤い衣に青のガウンを羽織り、緑の脚で支えられた赤い椅子に座ったダヴィデ王が、5弦のゴシック・ハープをつまびく姿が描かれています。

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ダヴィデ王は右手で弦をはじきながら、ハープの先端にほどこされたピンク色の龍の装飾と目を合わせています。左手は楽器の支柱を支えているようにみえますが、手のひら全体がおそらく描かれていることから、両手で演奏しているのかもしれません(真ん中の白い部分は、インクの剥落です)。弦を胴体にとめる位置はおそらく正しくありませんが(同じ長さの弦を垂直に張る古代リラの影響か?)、楽器の本体にサウンドホール(共鳴穴)が黒色で三つ(?)描き込まれています。また腕木の上部には弦を巻き止めるペグと思われる丸みのある突起もみられ、楽器の細かい特徴をよくとらえています。

欄外下部(バ・ド・パージュ)には、弓を引く赤い脚の半獣人が描かれています(約23 x 18ミリ)。薄紫色のとんがり帽子(エナン帽?)をかぶっているところをみると、女性なのでしょうか。褐色の胸と青い尾の一部は、絵の具が剥落して羊皮紙の下地がのぞいています。右手で薄緑色の柄を握っているため左ききのようですが、体を正面にむけるために意図的に左右が逆に描かれているのかもしれません。オレンジ色の弦と左手が離れているため、弓を射った直後の瞬間をとらえているのでしょう。裏(ヴェルソ)ページの最後、ちょうど真後ろに書かれている言葉「弓を引き絞って構え」にモチーフを得ている可能性があります。

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下半身から孔雀のように伸びた尾は1段目の端まで長くのばされ、そのまま2段目の下装飾に連結しています。その2段目の装飾の先端にも人物の顔が書かれていますが、頭にモロッコ風の赤いフェズ帽をかぶり、黒紫で顔が彩色されているところをみると地中海系の人物を意識しているのかもしれません。

欄外上部にも動物(ライオン ?)の前足と、おそらく人間の頭をもつ半獣人が書き加えられています。このように本文の飾り文字から独立したグロテスクあるいはドロルリーが描かれていることが、もと写本の制作地を探る手掛かりの一つになると駒田氏は指摘しています。

 

粉打ち(スポルヴェロ)法

欄外下部の半獣人をもう一度よく見ると、輪郭をなぞるように小さな穴があけられていることが分かります。これは粉末木炭や顔料を上からはたいて輪郭を転写するためにあけられた穴です。

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表 (recto)(部分)

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裏(verso)(部分)

 

イタリア語で「スポルヴェロspolvero」とよばれるこの転写技法は、フレスコ画や油画で用いられます。スポルヴェロのための下絵としては、パリのルーブル美術館に所蔵されているレオナルド・ダ・ヴィンチのイザベル・デステ肖像画や、ミラノのアンブロジアーナ絵画館に展示されているラファエロの『アテネの学堂』下絵が知られています。ルーヴル美術館にある『モナリザ』でも、スポルヴェロが用いられたことが確認されています。レオナルドやラファエロの原画では表面が汚れないように工夫されていたようですが、鶴見大学のこの弓を弾くグロテスクでは、図像の表面と周囲が転写の際に用いられた炭粉で黒ずんでいます。転写が試みられた時期は分かりませんが、半獣人が写本の綴じ側(内側)に描かれていることを考慮すると、もとの聖書写本から本葉が切り離された後ではないかと推察されます。いずれにしても中世の羊皮紙写本でスポルヴェロ法が用いられた珍しい例で、国際的にも極めて貴重な史料といえます。

 

【参考文献】

・駒田亜紀子「13世紀後半 北フランス制作『ラテン語ウルガータ訳聖書写本』―中世フランスの掌中の聖書―」『時計台』(関西学院大学図書館報)88号、2019年、2-13頁。

・駒田亜紀子「聖書零葉L.2015-0153, 0154」、駒田亜紀子、中田明日佳(編)『内藤コレクション写本カタログレゾネ : 国立西洋美術館所蔵』、西洋美術振興財団、2024 年、70-73頁。

・Bruno Mottin, « La Joconde nue, une étude de laboratoire », in: La Joconde nue, dir. Mathieu Deldicque, Chantilly, 2019, p. 64-79, part. p. 75-76.

・Bruno Mottin, « Léonard de Vinci et l'art du dessin. Une approche de laboratoire», in: Léonard de Vinci, dir. Vincent ・Delieuvin, Louis Frank, Paris, 2019, p. 370-384, part. p. 381-383.

・Alberto Rocca, Il Raffaello dell'Ambrosiana : in principio il cartone, Milano, 2019.

・Valuable Illuminated Manuscripts and Printed Books. Thursday 11 July 2002, London: Christie's, 2002, p. 13.

 ※ 文中の詩篇訳は『新共同訳聖書』によるが、写本の表記に合わせて一部書き換えた。ラテン語原文の省略文字はカギカッコ内に記した。 

⻄間⽊ 真 (中世⽂化史・中世写本)

2025年12月26日 (金)

【巡回展示会で選書された本】第6弾を新着図書コーナーで展示中!

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こんにちは、図書館サポーターのCです。

12月26日から、図書館で10月に開催された巡回展示会で選書された本の第6弾を展示しています。

Pxl_20251226_0104032261階・新着図書コーナーの前にあるブックトラックの両面に展示しており、これまでと同様、展示中の本は貸出可能ですので、ぜひ手に取ってみて下さいbook

今回は冬休みを挟みますので、1月8日までの展示となります。

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最後の展示となる今回は、日本語、英語といった言語pencilや、映画、漫画などの絵artと言った、表現に関する本が多く並んでいます。

この冬休みに、様々な表現に触れてみてはいかがでしょうか。

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(図書館サポーター:C)

2025年12月19日 (金)

【巡回展示会で選書された本】第5弾を新着図書コーナーで展示中!

2025_2こんにちは、図書館サポーターのCです。

12月19日から、図書館で10月に開催された巡回展示会で選書された本の第5弾を展示しています。

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今週からsnow冬休み貸出snowが開始した為、展示されている本を借りて、自宅でゆっくり読むのもおすすめですhouse

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今回の展示は、suncloud天気のことわざに関する本rainsnowや、モネ、アガサ・クリスティといった海外の芸術家・文豪にまつわる本、哲学的に見た深夜アニメの本night、と個性が豊かな本がたくさんあります。

面出しの本に目が行きがちですが、下段の本にも要注目です!

Pxl_20251219_014357960今回は日本語に限らず、言語や文学に関する本が特に多く並んでいますbook

ご興味のある方はぜひ、手に取って読んでみてはいかがですか?

(図書館サポーター:C)

2025年11月17日 (月)

神奈川近代文学館特別展「没後70年  坂口安吾展  あちらこちら命がけ」

神奈川近代文学館で開催中の特別展「没後70年  坂口安吾展  あちらこちら命がけ」に当館所蔵の雑誌「青い馬」を貸し出しています。

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会期は11月30日(日)まで。

特別展「没後70年  坂口安吾展  あちらこちら命がけ」

なりきり写真コーナーもありました

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2025年10月17日 (金)

ヨーロッパ中世写本の世界 〜鶴見大学図書館零葉コレクション (2)〜

聖務日課集零葉 Leaf from a roman Antiphonary or a Diurnal

第30葉「終課」の賛歌 «光が消える前に»

羊皮紙、428 x 330 mm ; just. 385 x 235 mm, 5線譜表7段 (譜線は赤色)。

角形ネウマ記譜法 (音部記号Fおよびc、クストス)。

15世紀、イタリア

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鶴見大学図書館には、ヨーロッパ中近世の写本から切り取られた断片(零葉)が30点以上所蔵されています。そのほとんどがキリスト教の典礼書および祈祷書に由来するもので、羊皮紙(獣皮)にラテン語で書かれています。ここで紹介する零葉は、毎日、決まった時間に執り行われる祈りの時間(時課)に歌われる聖歌を集めた「聖務日課聖歌集(antiphonarium)」あるいは日中の日課のみを集めた「ディユルナル (diurnal)」に由来し、書体と飾り文字の様式から15世紀にイタリアで書写されたと考えられています。内容は、一日の終り、就寝の前の終課(Ad completorium)で唱えられる賛歌 (hymnus)とアンティフォナ (antiphona)です。

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賛歌は、聖書の言葉に寄らない自由に創作された散文詩による聖歌です。一つの歌詞が一つの決まった旋律で歌われるのではなく、複数の旋律のレパートリーの中から季節や行事に従ってテキストの音節に合う旋律が選択されて歌われました。本零葉では、賛歌の最初の旋律の後半と2番目の旋律が書写されています。

 

あなたに、光が消える前に、

万物の創造主よ、お祈りいたします。

とこしえの慈しみによって

庇護者、守護者でいてくださいますように。

 

かなたに追い払われますように。悪夢、

そして夜の亡霊が。

私たちの宿敵 (悪魔)を抑えつけなさい。

体が汚されないように。

  

支えてください。全能の父よ。

イエス・キリストを通して。

 

Te lucis ante terminum,

Rerum Creator, poscimus,

Ut solita clementia

Sis presul ac custodia.

 

Procul recedant somnia

Et noctium fantasmata.

Hostemque nostrum comprime,

Ne polluantur corpora.

  

Presta, P<ate>r o<mni>p<oten>s,

Per Iesu<m> Christu<m>

 ※ ラテン語原文の省略文字は< >内に示しました。

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解読してみましょう!

中世の典礼書では、テキストの内容が色や文字の大きさで一目でわかるようにレイアウトされています。この零葉では表葉の2段目の真ん中、Tの大きな飾り文字の前に « Alius ca<n>tus »(別の聖歌)と赤い文字で記されていることから、その前に同じ歌詞をもつ賛歌が記されていることが分かります。実際、表葉の最初の歌詞 « ut solita clementia sis ... »は、4段目の2語目と同じです。音符との兼ね合いで、歌詞の音節が離れて書写されているところは赤い下線でつながれています。

旋律は、赤い5線の上に大きな四角形の音符(角形ネウマ符)を配置した譜線記譜法で表記されています。一つの音節が複数の楽音で歌われる場所では、音符の連結や菱形の音符がみられます。裏葉3段目や下の2段にみられる長くて大きな菱形の音符は、二つの音符を一筆で書いたものです。現在の楽譜とは異なり、音符が記しているのは音の高さだけで長さは分かりません。譜表の左端に音の高さを示すアルファベット文字F (三つの小さな菱形) あるいはc (二つの四角形) が書かれています。表葉の最初の音は、Fつまり「ファ」の2本上の線に書かれているので「ド」の音で歌いはじめられます。裏葉のアンティフォナの最初の音は、cつまり「ド」の線の下2本の間にあるため、「ソ」の音ではじまることが分かります。各段の右端には、チェックマークのようなひとまわり小さい記号が書かれています。これは次の段の最初の音の高さ示したもので(ラテン語で「クストス custos」、フランス語で「ギドン guidon」とよばれます)、次の段に移る時に間違えないようにするための目安の役割をはたしています。現代の5線譜に書き直すと以下のようになります。

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2番目の賛歌の旋律をみてみると1行目と2行目は同じメロディーの繰り返し、4行目もほとんど同じであることが分かります。こうした平易で簡素なAABA' 形式が賛歌のメロディーの特徴です。この2曲の旋律はどちらもおそらく一般に知られていないもののため、イタリアでのみ用いられていた可能性があります。今後、同じ旋律をもつ史料が見つかれば、本零葉が書写された地域を特定できるかもしれません。

 ※本稿では歌うことを念頭に音符と言葉を一致させるため、既存の訳によらずラテン語テキストの語順にできる限り従って訳出しました。

西間木 真 (中世文化史・中世写本研究者)

(hh)