【研究室から】

2012年2月 1日 (水)

ゆかり【研究室から】

と言っても、梅干しに使った紫蘇の加工品ではありません。

一昔前、ある先生のお手伝いをしましたら、「お礼に」と、くださったものです。

作られてから、もう半世紀近くたつでしょうか。

よく使い込んだ、銀の英国製筆記具です。

柔らかい光沢と流麗な彫刻、そして品格の髙さ。

優れた研究者であるのみならず、文章のうまさは群を抜いていらっしゃいました。

Yardoled

鋭い観察眼、皮肉の効いた言い回し、柔軟な表現、どれをとっても一流です。

惜しくも、先年なくなられました。

「ゆかり」のペンとシャープペンシルで先生の名文にあやかりたいと思うこと、切。

(なお、シャープペンシルは和製英語、米国ではメカニカルペンシル。さて英国では?)

2011年12月11日 (日)

稀な機会【研究室から】

12月10日(土)、日本文学会秋季大会が催されました。

一般市民の皆様が多くいらっしゃったことは、驚きです。

後藤祥子先生のご講演は、犀利かつ自在。

和泉式部は1000年の後の知音に感謝しているでしょう。

岩佐美代子先生のご挨拶も、単なる挨拶の域を越える卓説のご披露でした。

また、その後の懇親会は楽しいお話の花盛りです。

学生・院生に卒業生、専任教員と他大学の研究者で賑わいました。

会が終われば、冬空に月食。

(古くは「ぐわつしよく」と読んでおります)

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天体撮影の機材がありませんので、持ち合わせの道具を使いました。

不鮮明のところはご勘弁ください。

冴えた月食に出会うことは、稀かもしれません。

後藤・岩佐両先生のお話が一度に聞けたのは、もっと稀な、そして至福の機会です。

2011年11月14日 (月)

小道の先には【研究室から】

締め切りの近づいた原稿が気になる季節です。

講義の準備、会議、書類作り、その他いろいろ片付けながら、研究もまとめねばならず・・・

追い詰められてもよい知恵はなく、暗中模索の連続。

ところが資料を読んでいるうちに、小さな明かりが見つかる。

あるいは、ぱっと視界が開ける。

わくわくする一瞬、学問はすばらしいと思います。

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細い道をたどった先で出会えるもの、林のかげを抜けると見えてくるもの。

秋から冬にかけての山歩きは、研究とちょっと似ています。

卒業論文も修士論文も課題のレポートも普段の勉強も、もう一歩、また一歩。

2011年9月19日 (月)

秋天【研究室から】

校務で、城下町に出かけました。

雲を浮かべた秋空に千鳥破風が映え、松林には秋の風。

梶井基次郎『城のある町にて』を思い出される方もあるでしょう。

(梶井の「城」は松阪城です)

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梶井の作品では、『檸檬』が有名です。お奨めは『闇の絵巻』。

古典研究に志す人は、近代文学をたくさん読んでおかれるのがよいでしょう。

古典を知らず新しい文学や言葉のみの研究を行うのも、感心しません。

ともあれ、何にでも挑戦!

2011年8月 9日 (火)

目にはさやかに【研究室から】

昨日、立秋。

「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」(古今集)

(平凡な引用で恐縮です)

まだ一向におどろくほどの風も吹きません。当分暑い日が続きそうです。

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季節を先取りして野の風情をお目に掛けます。

四条派の画家松村景文の絵です。画中の秋をお楽しみください。

当方いろいろと雑用があり(少しは研究も)、結局ほぼ毎日大学へ来ています。

よって「夏休み」ではなく、単なる「夏」。

2011年7月11日 (月)

ご来場ありがたく存じます【研究室から】

7月9日(土)の日本文学会には、猛暑にもかかわらず、多くの皆様が来られました。

また高校の先生がいらっしゃったことに対し、御礼申し上げます。

平藤さんの研究発表は、様々な発展可能性を含んでいて、おもしろいものでした。

特筆すべきは、散木奇歌集奥書をめぐっての白熱の応答です。

大人伊倉氏と俊才久保木氏のやりとりに、石澤・中川両氏が参戦。

閉会予定時刻ぎりぎりまでの応酬は、何某学会よりよほど迫力がありました。

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強い日差しが続きます。

研究室近くの夏木立です。

山田美妙に同名の小説集がありますので、ちょっと眺めてみてください。

2011年7月 3日 (日)

笑いで暑さを【研空室から】

江戸っ子の「一言」は、「なるほど」です。

(「なるほど」から掛詞を抜き出し説明しなさい、などど野暮なことは申しません)

珍書『初なすび一口はなし』の例を、もうひとつ。

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「このおけはもるぜ」

「そこにやあ、きがつかねへ」

他愛もない話ですが、過ごしにくい時期にせめて笑いでも。

2011年6月 6日 (月)

歌舞伎研究で受賞!【研究室から】

佐藤かつら先生が、第6回林屋辰三郎藝能史研究奨励賞を受けられました。

昨年の歌舞伎学会奨励賞に続く、快挙です。

みなさんは、優秀な卒業論文を対象とする鶴見日本文学会賞を目指してください。

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国文学界の至宝岩佐美代子博士お手製の、和紙人形です。

先生もお芝居が大好きでいらっしゃいます。

名優十五代羽左衛門のお話を、幾度も拝聴しました。

いいものをたくさん見、聞き、読むこと。

それは、かけがえのない、あなただけの宝物です。

2011年3月16日 (水)

ご卒業おめでとうございます【研究室から】

卒業式は中止となりました。

残念ですが、とても珍しい経験とも言えるでしょう。

まだまだ寒い日が続きます。

淡い紅の梅が薫っていました。

神奈川屈指の古刹の庭、気品高い姿です。

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健康に留意して、ご活躍ください。

みなさんの未来が幸いあふれるものでありますように。

気の迷いで学問を続けたくなりましたら、研究室へどうぞ。