« 2020年3月 | メイン | 2020年5月 »

2020年4月

2020年4月23日 (木)

迷墨【研究室から】

調査にも出かけにくく、それを口実に研究中断。

閑寂な山道を選んで、散策することもあります。

狸を見かけました。

人の動きが少ないせいでしょう。

机に戻り、文房具など玩弄しています。

大ぶりの墨を取り出しました。

Photo 直径12㎝ほど、側面に「天啓元年程君房製」とあります。

百爵図の銘も鮮やかな、贋作。

狸ならぬ迷墨に化かされてはいけません。

(本物なら数百万、でしょうか)

真っ赤な、いえ、真っ黒な偽物です。

しかし普段使いには十分ですし、作られてから30年以上経過しています。

素性を心得た上で楽しめば、なかなかのもの。

家に籠もることの多いこの頃、お好みの文房具を並べてみてはいかが。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2020年4月12日 (日)

卯月ばかりに【研究室から】

落ち着かぬ毎日です。

気長にはやりやまいの収束を待ちましょう。

さて、数多くある源氏物語の4月から、蓬生を取り上げます。

赤鼻の姫君がこれほど魅力的に描かれた巻はありません。

荒れ果てた常陸宮邸に光源氏を待ち続ける姫君のほか、

主人思いの侍従、頼りがいのない兄禅師、悪役の叔母、露払い惟光など、

多彩な脇役が登場し、結構波瀾に富んでいます。

肝腎の光源氏は、姫君のことなどすっかり忘れていました。

卯月ばかりの夕月夜、偶然常陸宮邸を通りかかります。

「大きなる松に藤のさきかかりて、風につきてさと匂ふがなつかしく」

Photo 明暦版源氏小鏡より採りました。

小鏡に絵の入った最初の版です。

絵が本文と一緒の面にある形式は、珍しい。

ともあれ外出を控えるわけですから、まず読書。

この閑日月に沢山読めれば、災い転じて福となす、でしょう。

鶴見大学文学部日本文学科研究室