【研究室から】

2019年11月27日 (水)

奥の深い味【研究室から】

秋に収穫し、冬の間食べることの出来るものがいくつかあります。

(「秋収冬蔵」が思い浮かべば、上々)

栗は、そのひとつ。

記紀万葉の昔から好まれ、中国では詩経秦風に出てきます。

派手に舌へ響く味ではありません。

噛みしめれば、穏やかな甘さがじわりと伝わります。

(人も、かくの如き方を担当者は評価します)

源氏物語にも書かれていますので、お調べください。

江戸の昔は、丹波が名産地でした。

現在、品種が多様化し、あちこちで栽培されています。

加工品もさまざま。

到来物の栗蒸し羊羹にご登場願いました。

Photo 羊羹には青磁、が漱石の鉄案です。しかし今回は青手九谷としました。

小皿は、それほど古くありません(勿論、羊羹よりはうんと古い)。

さて、週末(30日)は、日本文学会秋季大会開催。

ご来場をお待ちしております。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年11月15日 (金)

晩秋【研究室から】

紅葉が見頃、柿は食べ頃、さすがに風が冷たくなりました。

稲の刈り取りも、ほとんど終わっているでしょう。

山里に鹿の鳴く音が響く季節でもあります。

(聞かれたこと、ありますか)

11月30日(土)の日本文学会秋季大会では、源氏物語の話題が2本。

そこで、室町末の絵を出してみます。

Photo この源氏香は、現在知られている香の図と小異あり。

(勿論、これも研究の種)

さて絵の上の方、刈り取られた田と鹿が金泥で描かれています。

この図柄が出てくると、夕霧巻か手習巻のどちらかです。

ついでに、明治の源氏絵も1枚。

Photo_2 小野の里のわび住まい、と言うことですが、なんと贅沢な!

建物も、見晴らしも、上々ではありませんか。

では、日本文学会にてお目に掛かりましょう。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年10月24日 (木)

時には蟹の横歩き【研究室から】

へそを曲げて、変わったことをするのではありません。

(力におもねるよりはいいと思いますが)

昔、アルファベット(で綴られたもの)を、蟹行文字と呼びました。

日本文学を山ほど読んだら、気分転換に外国語もどうぞ、と言うことです。

英語も少しは出来たほうがよい、と思われるのはまことに結構。

でも、日本文学科の学生(もしくは教員)だからと言って、

日本文学の英訳や日本文化紹介の英文に飛びつくのはいかがなものか。

それは筋の悪いことのように、担当者には思えます。

結局、期待したほどの成果は上がらないでしょう。

平易明晰で質のよい英語の書物がお薦めです。

先日、こんな表現に出会いました。

・・・It was a purpul wine, so cool that the cup into which

it was poured became covered with vapory dew・・・

冷えた葡萄酒を注ぐと、器が水滴で覆われるところです。

担当者は下戸ながら、うまい、と思います。

さて、誰の作品でしょう。

Photo 読みやすい(と勝手に思う)洋書を積んだ一番上です。

丁寧に皮革で装幀し直したものが出典。

日本にも縁の深い小説家が、1887年に出版しました。

背文字がありませんので、お調べください。

手前の時計は、ほぼその頃の古強者。

勿論、いつもの小道具です。

次は、日本文学会のお知らせ。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年10月11日 (金)

十三夜【研究室から】

今日は十三夜。樋口一葉の小説にもあります。

(まさか、読んでいない、とは仰らないでしょうね)

栗名月・後の月とも申しております。

しかし、あいにくの雨模様となりました。

「対雨恋月」と平安時代の文人ならば、詩のひとつも作ったでしょう。

なじみの和菓子屋さんでは、栗名月にちなむ新作を出しました。

月見団子も店頭に出ていましたが、売れ行きは今一つ。

この空模様では、仕方のない話です。

担当者が求めたのは、うさぎの薯蕷饅頭。

この、ひょうきんな顔つき!

Photo 丸々としていますので、十三夜の月では狭いかもしれません。

一葉に戻って、読んでいらっしゃらない方は、これからどうぞ。

秋の夜は、長いのです。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年10月 6日 (日)

祈りの力【研究室から】

と申しましても、超自然的な秘密があるわけではありません。

また、信仰が起こす奇跡でもありません。

中世ヨーロッパの聖典に驚いた、と言うことです。

図書館にて開催中の展示を御覧ください。

彩色羊皮紙写本のうちいくつかは国際的評価に値するそうです。

文字の卓抜なデザイン、彩色の鮮やかさ、羊皮紙の風合い・・・

和古書にはない、圧倒的迫力です。

Photo 断片とは言え、縦80センチ以上の大物(これは未紹介の資料です)。

その全体をご想像ください。

なお、数百年間前のミサ曲が、本日(5日)図書館ホールに響きました。

西間木先生(東京芸術大学)の復元された音楽です。

時空を超えて書物を伝える、信仰の力。

一旦絶えてしまった歌声を書物の中から蘇らせる、学問の力。

洋の東西を問わず、すばらしいものはすばらしい。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年10月 1日 (火)

灯火親しむ【研究室から】

秋の夜長、書物を友とする喜びは格別、と古人も言いました。

勿論、昼間の読書でも結構です。

本は内容のおもしろさに加え、装丁・料紙・挿絵など、楽しみ方満載。

特に木口木版の精緻華麗さには、どなたも魅了されるでしょう。

Photo A.テニスンのThe Princessから選びました。

1884年(明治17年)の出版です。

エッチングではなく木版画で、これほどの細密描写!

この年、森鴎外は独逸へ出発し、

国内では、仮名垣魯文や三遊亭円朝が活躍していました。

なお、図書館にて珍しい西洋古典籍の展示を開催中。

鶴見大学は、和古書のみならず洋書のコレクションも、高水準です。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年9月 2日 (月)

追い込み【研究室から】

夏休みは、いかがでしたか。

いまだ目標に届いていない方は、最後の追い込み。

図書館でも学生さんの姿を多く見かけるようになりました。

本欄の担当者は、原稿の遅れに青息吐息です。

さて、爽やかな秋とは言えませんが、それでもしのぎやすくはなりました。

学問芸術の季節にふさわしく、風格と気品の書をひとつ。

Photo_5 松煙淡墨の「照澄」、少登先生の作品です。

この言葉は、秋ののびやかで明るい気分をあらわします。

奥行きと色彩感、隅々まで行き届いた造詣的配慮、しかも自然。

印の選択がこれまた絶妙、冴えた刻風の中村蘭台を使われました。

(印に無関心な書家が増えているようで、よろしくない風潮かと思います)

一目で蘭台と分かった方には、何か賞品を出しましょう。

拙劣な画像作成技術ゆえ、作品の魅力を十分お伝えできないのが残念です。

では、秋の大学でお目に掛かります。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年8月10日 (土)

夏こそ【研究室から】

この続きには、何がふさわしいでしょう。

「旅行」・「よく冷えた麦酒」(未成年の方は駄目)あるいは「読書」、

それとも「アルバイト」でしょうか。

暑いと、つい冷たい飲み物に手が伸びますが、結局調子を落とすことに。

一服立てて、でなくともせめて緑茶を一杯。

勿論、涼しげなお菓子を添えて。

Photo 琥珀羹です。器は李朝の渦三島、16世紀でしょう。

研究室の廊下はひっそりとしています。

教員は調査や執筆にいそしむ夏(の、はずですが)。

ではみなさま、長いお休みの成果を期待しております。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年7月19日 (金)

遠く馨る【研究室から】

夏休みが近づきました。

学業の進み具合はいかがでしょう。

(担当者は日頃の怠惰が積もり積もって原稿の催促に悩まされ・・・)

昔々、さる大家のたまわく「若い頃、よく遊んだものだ」

続けて、「遊びを必要とするほど勉強したから」。

「遊び」の内容次第では、困ったことも起こるでしょう。

しかし「必要とするほど」には感心します。

と言うことを口実に、花探勝へ。

Photo_2 一面に花の広がる蓮池や蓮田も結構でしょうが、これは平凡な沢。

風に乗って遠くから高雅な香りが届きます。

湧き水が冷たいせいか、花の盛りはまだ先のようです。

さて、日本文学会春季大会が近づきました。

7月27日(土)午後2時開会。

研究発表(本学大学院生)と講演(本学教授)の二本立てです。

入場無料、どなたでも聴講出来ます。

「蓮の香や水を離るる茎二寸」(蕪村)

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年7月 3日 (水)

静かな花【研究室から】

豪華、軽快、重厚、可憐・・・花の印象は多彩です。

大ぶりで変化に富む花ですけれど、いかにも静謐な風情は紫陽花。

「よひらの花」とも呼ばれます。

先日、近郊の名刹へ花探訪に出かけました。

背後の山全体が紫陽花に覆われ、なかなかの迫力です。

有名な某寺と異なり、拝観料の徴収がないのもまことに結構。

Photo 古い石塔を包むように咲いておりました。

さて、7月27日(土)は、日本文学会春季大会です。

こちらも入場無料ですので、是非お越しください。

14時開会です。内容は次の通り。

1〈総会〉

2〈研究発表〉

「泣血哀慟」の語義と歌の主題  細野 奈央(本学大学院博士後期課程)

3〈講演〉

古代和歌表現の基層  新沢 典子(本学教授)

では、会場でお待ちしております。

鶴見大学文学部日本文学科研究室