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2021年9月

2021年9月23日 (木)

萩と月【研究室から】

「萩の月」ではありません。

(それは東北地方のお菓子です)

古典文学では、月・露・鹿が定番の取り合わせでした。

中秋の名月が過ぎたばかり、月の出がだんだん遅くなります。

「風ふけば玉ちる萩の下露にはかなく宿るのべの月かな」

月と一緒に木星も見られますので、是非どうぞ。

もう1首。

「いはれ野の萩の朝露わけ行けば恋せし袖のここちこそすれ」

お坊さんの歌であるところが、おもしろい。

在俗の時、何か忘れがたいことがあったのでしょう。

この時期、おはぎも忘れるわけにはいきません。Photo藍九谷風の皿に漉し餡のおはぎです。

(藍九谷とは言っても、古伊万里)

おはぎと牡丹餅との違いが、よく話題となります。

昔、少し珍しいおはぎを貰ったことがありました。

餅米を蒸して皿に浅く盛り、その上に餡を載せたものです。

白砂に散った萩の花を、お米と餡とで表現。

「なるほど、おはぎか」と納得しました。

正直申しますと、若い頃はあまり好きではなかったのです。

お気に入りの器に盛って楽しむことが、年とともに多くなりました。

人も風景も好みも、変わります。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年9月 9日 (木)

景物【研究室から】

窓の外は、虫の声。

調べ物や執筆にふさわしい夜長となりました。

さて、秋の風情を代表するものはなんでしょう。

(食べ物については次回に)

鹿の鳴く音・雁・草花のいろいろ・霧と露・・・

眼に見、耳に聴いて季節を実感することは少なくなりました。

それでは可憐な景物をひとつ、丸々とした壺と取り合わせてお目にかけます。Photo古代より好まれた萩の花。

万葉集の歌人達がしばしば取り上げた素材です。

勿論、平安時代以降も鹿の花妻として秋歌に欠かせません。

萩の歌を集めるだけで、一大歌集が出来るでしょう。

「秋萩のいろづく秋をいたづらにあまたかぞへておいぞしにける」

「秋」が重なって無造作な印象です。

しかし勅撰集に入っているのは、率直な嘆老の詠が評価されたからでしょう。

お若い方々には、まだ縁のない話。

なお、静謐な白磁は李朝の焼き物です。

鶴見大学文学部日本文学科研究室