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2021年8月

2021年8月29日 (日)

似せること【研究室から】

秋間近、そろそろ勉学も再開しなければ。

「まなぶ(学ぶ)」は「まねぶ(真似ぶ)」ことから始まります。

模倣してみる・何かに似せることが、学びの第一歩です。

(最初から独創的な仕事が出来れば、それは天才)

さて、こんな例はどうでしょう。Chocolate扇形の古伊万里、あっさりとした染付です。

上に載せた貝殻、ではなく、実はチョコレート。

その筋では有名な菓子職人さんの作だそうです。

到来物を使いました(自分では買いません)。

ここまで真似ると、食欲がわかない人もおられるでしょう。

和菓子でも、牡丹や藤の花を実物大に作ることがあります。

驚くほど迫真的、しかし観賞用で食べはしません。

東西の差でしょうか。

この貝は、撮影後担当者の胃袋にめでたく収まりました。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年8月19日 (木)

博さ・深さ【研究室から】

幸田露伴の誕生日が近づきました。

慶応3年(1867)、7月23日と26日の両説あります。

これを新暦に直すと、1ヶ月ずれて8月となるわけです。

博識かつ多趣味、広い関心事の一つ一つがとてつもなく深い。

多趣味の中でも、将棋と釣りは生涯の楽しみでした。

京都帝国大学で国文学を教えていた頃は、生け花の本格的修行。

そして弟子をお供に釣り。

無鑑札ゆえに罰金を取られたこともあったとか。

教室では、なかなかの名講義だったようです。

ただし、大きな頭が邪魔になって黒板が見えづらかったと言われています。

結局京の水に合わず、在職わずか1年で東京へ。

このあたりの話は、青木正児博士が『琴棋書画』で楽しく語っておられます。

(青木正児は、アオキ・マサルと読みます)Photoこれは露伴の旧蔵書『古今要覧稿』。

博覧強記の作家にふさわしい書物ですが、右下をご覧願います。

蔵書印「有水可漁」、いかにも釣り道楽の人ですね。

露伴は、小説・戯曲・随筆・考証論文と多作。

とりあえず『幻談』と『連環記』をおすすめします。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2021年8月 4日 (水)

腕に覚え【研究室から】

暑いですね、と言ってみたところで涼しくもならず。

せめて机辺の楽しみを。

さて、書画骨董には写し物が多く、なかなかおもしろくも厄介。

腕を磨くために古作を写すことは、立派な心がけです。

しかし他方、いわゆる偽物の制作も行われました。

ともあれ和歌の本歌取りにならって、手本となる作品を「本歌」と呼びます。

まずは水滴を1つご覧ください。Photo淡い飴釉に梅の花を型押ししています。

(印花とも言います)

釉の流れが景色となっていて、好感の持てる作です。

もう1つ、これはどうでしょう。Photo_2丸々としたかわいい水滴。

どちらが本歌で、どちらが写しかわかりますか。

上は加藤宇助さんで昭和の作、下は鎌倉末期くらいの古瀬戸。

手に取ってみれば差は歴然、しかし画像ですと迷う方もおられるかと。

宇助さんは轆轤の名人でした。

腕自慢の焼き物作りでしたが、しかし写し物の意図はなかったと思います。

自分が鎌倉時代の陶工ならこんな風に、と轆轤に向かわれたのでは。

本歌に制約される写し物と異なり、のびのびと自由な作柄です。

有名な「永仁の壺」とも関わりがあって、おもしろい方のようです。

この話は長くなりますので、ここにはとても書き切れません。

鶴見大学文学部日本文学科研究室