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2021年8月 4日 (水)

腕に覚え【研究室から】

暑いですね、と言ってみたところで涼しくもならず。

せめて机辺の楽しみを。

さて、書画骨董には写し物が多く、なかなかおもしろくも厄介。

腕を磨くために古作を写すことは、立派な心がけです。

しかし他方、いわゆる偽物の制作も行われました。

ともあれ和歌の本歌取りにならって、手本となる作品を「本歌」と呼びます。

まずは水滴を1つご覧ください。Photo淡い飴釉に梅の花を型押ししています。

(印花とも言います)

釉の流れが景色となっていて、好感の持てる作です。

もう1つ、これはどうでしょう。Photo_2丸々としたかわいい水滴。

どちらが本歌で、どちらが写しかわかりますか。

上は加藤宇助さんで昭和の作、下は鎌倉末期くらいの古瀬戸。

手に取ってみれば差は歴然、しかし画像ですと迷う方もおられるかと。

宇助さんは轆轤の名人でした。

腕自慢の焼き物作りでしたが、しかし写し物の意図はなかったと思います。

自分が鎌倉時代の陶工ならこんな風に、と轆轤に向かわれたのでは。

本歌に制約される写し物と異なり、のびのびと自由な作柄です。

有名な「永仁の壺」とも関わりがあって、おもしろい方のようです。

この話は長くなりますので、ここにはとても書き切れません。

鶴見大学文学部日本文学科研究室