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2019年10月

2019年10月24日 (木)

時には蟹の横歩き【研究室から】

へそを曲げて、変わったことをするのではありません。

(力におもねるよりはいいと思いますが)

昔、アルファベット(で綴られたもの)を、蟹行文字と呼びました。

日本文学を山ほど読んだら、気分転換に外国語もどうぞ、と言うことです。

英語も少しは出来たほうがよい、と思われるのはまことに結構。

でも、日本文学科の学生(もしくは教員)だからと言って、

日本文学の英訳や日本文化紹介の英文に飛びつくのはいかがなものか。

それは筋の悪いことのように、担当者には思えます。

結局、期待したほどの成果は上がらないでしょう。

平易明晰で質のよい英語の書物がお薦めです。

先日、こんな表現に出会いました。

・・・It was a purpul wine, so cool that the cup into which

it was poured became covered with vapory dew・・・

冷えた葡萄酒を注ぐと、器が水滴で覆われるところです。

担当者は下戸ながら、うまい、と思います。

さて、誰の作品でしょう。

Photo 読みやすい(と勝手に思う)洋書を積んだ一番上です。

丁寧に皮革で装幀し直したものが出典。

日本にも縁の深い小説家が、1887年に出版しました。

背文字がありませんので、お調べください。

手前の時計は、ほぼその頃の古強者。

勿論、いつもの小道具です。

次は、日本文学会のお知らせ。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年10月11日 (金)

十三夜【研究室から】

今日は十三夜。樋口一葉の小説にもあります。

(まさか、読んでいない、とは仰らないでしょうね)

栗名月・後の月とも申しております。

しかし、あいにくの雨模様となりました。

「対雨恋月」と平安時代の文人ならば、詩のひとつも作ったでしょう。

なじみの和菓子屋さんでは、栗名月にちなむ新作を出しました。

月見団子も店頭に出ていましたが、売れ行きは今一つ。

この空模様では、仕方のない話です。

担当者が求めたのは、うさぎの薯蕷饅頭。

この、ひょうきんな顔つき!

Photo 丸々としていますので、十三夜の月では狭いかもしれません。

一葉に戻って、読んでいらっしゃらない方は、これからどうぞ。

秋の夜は、長いのです。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年10月 6日 (日)

祈りの力【研究室から】

と申しましても、超自然的な秘密があるわけではありません。

また、信仰が起こす奇跡でもありません。

中世ヨーロッパの聖典に驚いた、と言うことです。

図書館にて開催中の展示を御覧ください。

彩色羊皮紙写本のうちいくつかは国際的評価に値するそうです。

文字の卓抜なデザイン、彩色の鮮やかさ、羊皮紙の風合い・・・

和古書にはない、圧倒的迫力です。

Photo 断片とは言え、縦80センチ以上の大物(これは未紹介の資料です)。

その全体をご想像ください。

なお、数百年間前のミサ曲が、本日(5日)図書館ホールに響きました。

西間木先生(東京芸術大学)の復元された音楽です。

時空を超えて書物を伝える、信仰の力。

一旦絶えてしまった歌声を書物の中から蘇らせる、学問の力。

洋の東西を問わず、すばらしいものはすばらしい。

鶴見大学文学部日本文学科研究室

2019年10月 1日 (火)

灯火親しむ【研究室から】

秋の夜長、書物を友とする喜びは格別、と古人も言いました。

勿論、昼間の読書でも結構です。

本は内容のおもしろさに加え、装丁・料紙・挿絵など、楽しみ方満載。

特に木口木版の精緻華麗さには、どなたも魅了されるでしょう。

Photo A.テニスンのThe Princessから選びました。

1884年(明治17年)の出版です。

エッチングではなく木版画で、これほどの細密描写!

この年、森鴎外は独逸へ出発し、

国内では、仮名垣魯文や三遊亭円朝が活躍していました。

なお、図書館にて珍しい西洋古典籍の展示を開催中。

鶴見大学は、和古書のみならず洋書のコレクションも、高水準です。

鶴見大学文学部日本文学科研究室