2003年1月11日 (土)

96 2003/01/11~01/30 源氏物語-書物の魅力-

96 2003/01/11~01/30 

源氏物語-書物の魅力-

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 古典文学への近道

   展示リスト

   解題    
  
    I  表紙の意匠
    II  本の大小
    III  装幀のいろいろ
    IV 料紙の贅沢
    V  版本の力

古典文学への近道
                   
文学部教授 高田信敬

 蚯蚓ののたくったような漢字の草体や変体仮名よりも活字翻刻、注釈があればなお

結構、現代語訳がつけば言うことなし、それでもまだ古典を読むのが面倒とおっしゃ

る向きには、口当たりのよい、もしくは猫なで声の解説まであるこの御時世、機械が

お好きなら、曰くデジタルアーカイブズ、曰く電脳図書館、最新鋭の硬軟(ソフト・

ハード)両面に事欠かぬことのそれはそれとして、ちょっと立ち止まって考えるなら

ば、これら便利なあれこれに従うことは、源泉からどんどん遠ざかることを意味しな

いか。人の手がやたらと加わり、鮮度が落ち、あやしげな添加物が一杯入った料理を

食べさせられるのと、それは似ている。パソコンに打ち込まれた現今の小説はいざ知

らず、筆と墨とで紙の上に生まれ出た文学ならば、可能な限りもとのかたちーなにが

「もと」であるのかについて議論もあろうがーに寄り添ってみるのが望ましく、かつ

とても贅沢な行き方であるように思われる。数百年を経た、味わい豊かな典籍に触れ

るとき、最善最高の方途とは言わないまでも、古典文学への近道の一つを、私たちは

確実に辿る。ともあれ古典中の古典『源氏物語』について、こまかくその内容を知ら

ない方々も、美しく楽しい書物の装いを鑑賞していただきたい。

展示リスト

1  源氏物語 蒔絵箱入装飾表紙本  江戸前期写       列帖装 54冊
2  源氏物語 稲葉家旧蔵本  慶長頃写     包背装(くるみ表紙) 33冊
3  源氏物語 龍文刷外題升形本  江戸前期写 伝一乗院尊覚等寄合書
                              列帖装 54冊
4  源氏物語 墨色表紙本  寛文延宝頃写           列帖装 8冊
5  源氏物語(断簡):薄雲巻  鎌倉時代中期写 伝藤原為家筆   軸装 1幅
6  源氏物語 須磨巻抜書  江戸中期写             軸装 1軸
7  源氏物語 須磨 附帚木巻残簡  鎌倉後期写 伝冷泉為相筆 列帖装 1冊
8  源氏物語 賢木  室町初期写               列帖装 1冊
9  源氏双六 袖珍本  江戸後期刊              袋綴 28冊
10 源氏物語 越国文庫本  室町後期写           列帖装 49冊
(参考)源氏物語 澪標  江戸中期写         未装幀列帖装 3くくり
11 源氏物語 永正八年奥書本  江戸前期写       折紙列帖装 44冊
12 源氏五十四帖絵巻 伝狩野探幽図 幽遠斎模写  天保二年(1831)写
                                巻子 3軸
13 源氏物語系図 巣守三位本  室町末期写           折本 1帖
14 源氏物語湖月抄  北村季吟著 延宝元年(1673)跋      袋綴 11冊
15 源氏物語 竹屋光忠奥書本  享保頃写          列帖装 54冊
16 色紙源氏(源氏物語梗概)  江戸初期写            袋綴 1冊
17 源氏小鏡  江戸前期写                   巻子 1軸
18 源氏物語須磨抜書  江戸前期写 伝梶井宮筆         巻子 1軸
19 源氏物語(断簡):賢木巻  室町後期写 伝聖護院満意僧正筆   切 1点
20 源氏物語 伝嵯峨本古活字版  慶長中刊          袋綴 12冊
21 (絵入)源氏物語 山本春正編 承応3年(1654)刊        袋綴 60冊
(参考)源氏物語 奈良絵本  江戸時代前期写          列帖装 2冊
22 (絵入)源氏物語  寛文頃刊                袋綴 30冊

  なお、10参考、17、19は個人蔵

解題

I 表紙の意匠 (付)箱

 表紙は、典籍との出会いにおいて、通常最初に触れる部分である。書物の顔・書物
の玄関口とも言えるこの箇所は、見る者の印象を大きく左右するがゆえに、当然制作
者もしくは注文者の熱意や着想、趣味が反映し、そして財力も注がれる。1から4ま
では、すべて江戸前期に作られた源氏物語であるが、それぞれに凝った意匠を見せ
る。たとえば、各巻ごとにその内容をあらわす金泥下絵を描き(1)、蓮華唐草艶刷
藍表紙に金銀泥海賦文様の外題を押す(2)。背の部分までつつんだ包背装(くるみ
表紙)であるところもおもしろい。あくまで瀟洒な表紙(3)、墨色地に赤の外題が
時代の古びを感じさせない意匠の鮮烈さ(4)など、豊かな個性に心ひかれよう。な
お書物全体を納める外箱にも、しばしば高い評価が与えられる。蒔絵・螺鈿・飾り金
具の漆塗り箱は繊細華麗であり(1)、また大名稲葉家の紋所を示して古雅質実の雰
囲気を湛える(2)。

 1  源氏物語 蒔絵箱入装飾表紙本  江戸前期写 列帖装54冊
    几帳面取りの漆塗けんどん箱、蓋裏および箱側面三方に金銀蒔絵の菊・
    薄・撫子の絵
    縹色地に金泥・金箔にて当該巻の内容にちなむ下絵を施した表紙

 2  源氏物語 稲葉家旧蔵本  慶長頃写 包背装(くるみ表紙)
   33冊(54巻合冊)
    漆箱蓋表に「折敷に三文字」の紋(淀藩稲葉家か)
    表紙中央に、布目紙に金銀泥で細密な海賦模様を描いた題簽
    印記:月明荘

 3  源氏物語 龍文刷外題升形本  江戸前期写 伝一乗院尊覚等寄合書
   列帖装54冊
    薄藍にて鱗形、市松、七宝つなぎ等を刷り出し金銀泥の下絵を施した
    古雅な表紙

 4  源氏物語 墨色表紙本  寛文延宝頃写 列帖装8冊

II 本の大小

現在のA版B版、あるいは新書版と言うような書物の規格が、やはり古典籍の世界
にもあり、写本では四半本(大体A5版くらい)・六半本(一辺16糎ほどの正方
形)を標準とする。しかしこれらの規格からはずれる古典籍も勿論存在し、薄雲巻断
簡(5)は縦30糎に及ぶ堂々の大四半本、伝藤原為家筆鎌倉時代の貴重な資料であ
り、河内本系統の本文を示す。この時代の大型四半本は、多くの場合青表紙本系では
なく河内本系の本文を持ち、書物の規格と本文系統とがある程度の関連を見せてい
る。室町時代初期の賢木巻(8)も大ぶりの写本で、こちらは青表紙本。標準的な六
半本である鎌倉時代後期写の須磨巻(7)と、普通の巻子本の1・5倍ほどもある須
磨巻抜書(6)や、源氏物語にちなむ遊び道具の袖珍本(9)とを比較されたい。

 5  源氏物語(断簡):薄雲巻  鎌倉時代中期写 伝藤原為家筆 軸装1幅
    河内本

 6  源氏物語 須磨巻抜書  江戸中期写 軸装1軸

 7  源氏物語 須磨 附帚木巻残簡  鎌倉後期写 伝冷泉為相筆
   列帖装1冊
    表紙は墨流し地に金銀泥の霞引、切箔・野毛を撒く、外題なし

 8  源氏物語 賢木  室町初期写 列帖装1冊

 9  源氏双六 袖珍本  江戸後期刊 袋綴28冊(56巻合冊)
    五四巻大意目録各一巻、附「源氏双六うちやうの事」

III 装幀のいろいろ

 古典籍のさまざまな装幀のうち、平安時代の物語にふさわしい雰囲気を備えている
のは、料紙を重ねて二つ折りし(こうして出来た紙の集まりを「くくり」と呼ぶ)、
その「くくり」を集めて糸綴じにした列帖装(10)である。「くくり」の段階の資
料とあわせて展示した。料紙を上下に折ってから「くくり」を作成すると、折り紙列
帖のやや稀な装幀になる(11)。横に広げて読みあるいは鑑賞するためには、巻子
本(12)・折本(13)が便利である。和古書の最もありふれた装幀は袋綴(線装
とも言う)であり、源氏物語注釈書中最も流布したのが湖月抄だから、袋綴じの湖月
抄はあまりに平凡と言える。しかし特に薄く漉いた雁皮紙を用いる湖月抄(14)は
珍しい。普通の紙(楮紙)を使ったものとは厚さが断然異なるのが、よくおわかりい
ただけよう。薄様刷1冊に柏木・横笛・鈴虫・夕霧・御法以下8巻分が収まり、普通
の紙(楮)使用本は鈴虫・夕霧・御法3巻分だけでほぼ同じ厚さになる。

 10 源氏物語 越国文庫本  室町後期写 列帖装49冊
    帚木、空蝉、明石、初音、手習を欠く
    印記:越国文庫(福井松平家)、図書寮、出黌
    (参考)源氏物語 澪標  江戸中期写 未装幀列帖装3くくり

 11 源氏物語 永正八年奥書本  江戸前期写 折紙列帖装44冊(49巻合冊)
    桐壺、夕顔、賢木、早蕨、蜻蛉を欠く

 12 源氏五十四帖絵巻 伝狩野探幽図 幽遠斎模写  天保二年(1831)写
   巻子3軸

 13 源氏物語系図 巣守三位本  室町末期写 折本1帖

 14 源氏物語湖月抄  北村季吟著 延宝元年(1673)跋
   袋綴11冊(60巻合冊)
    献上本(薄様刷特装)
    注釈五四巻、発端・系図・表白・雲隠説各一巻、年立二巻
    印記:雲邨文庫

IV 料紙の贅沢

 古典籍の中には、表紙のみならず本文料紙にも趣向を凝らすものがある。天地に金
界を施し、薄緑色で塗りつぶす特異な装飾(15)が目を引く。この部分、実は鍮泥
を使ったらしく、当初は金色燦爛たる美麗な典籍であったろう。色変わり料紙に雲母
で下絵を刷った梗概書(16)、墨流し料紙にゆったりと写された源氏小鏡(1
7)、金銀泥の下絵巻子本(18)、藍と紫の雲紙断簡(19)など、制作者の思い
入れがどの書物からも伝わってくる。なお(19)は室町時代後期の巻子本の切で、
河内本系統の本文を持つところがおもしろい。

 15 源氏物語 竹屋光忠奥書本  享保頃写 列帖装54冊
    朽葉色地に寿字・宝尽しの銀襴表紙は後補
    本文料紙天地約三糎の所に金界を引き、その上下を薄緑で塗りつぶす
    特異な装飾
    印記:村井氏蔵(村井順)

 16 色紙源氏(源氏物語梗概)  江戸初期写 袋綴1冊
    桐壺から篝火を存す

 17 源氏小鏡  江戸前期写 巻子1軸
    墨流し料紙

 18 源氏物語須磨抜書  江戸前期写
   伝梶井宮筆 巻子1軸
   本文料紙は間似合
   印記:嶋氏

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 19 源氏物語(断簡):賢木巻  室町後期写 伝聖護院満意僧正筆 切1点
    雲紙

V 版本の力

 一字一字手で写す写本は当然大量生産にはむかず、したがって源氏物語のような大
部の作品はもとより、小さな歌集・物語であっても、その経済的価値はすこぶる高い
ものであった。ところが江戸時代初期以降、わが国の古典文学が印刷され始めると、
ある程度の数量を制作することが可能になり、現在よりは勿論高価であるにせよ、広
い範囲の人々の手に入りやすくなった。そうした印刷物のうち、最初期の一つであ
り、本阿弥光悦風の字体を用いて作られたのが伝嵯峨本源氏物語(20)。典籍全体
にあふれる品格は、慶長文化の高さを示す。本文に新しく絵を添えて親しみやすくし
た版本(21)が出版されると、その影響はきわめて強く、これにならって豪華な奈
良絵本も作られ(図柄の一致するところに注目)、さらに簡便な小型本が続く(2
2)。この小型本を愛読したのが与謝野晶子であり、夏目漱石もまたこれを所蔵して
いた。版本の力はなかなかに大きい。

 20 源氏物語 伝嵯峨本古活字版  慶長中刊 袋綴12冊
    平仮名交じり、連続活字使用。慶長初年刊の10行本に続く二番目のもの
    表紙は刈安無地(胡蝶)、他は赤香色無地
    印記:瀬能蔵書、飯山宮之印、臨野堂文庫

 21 (絵入)源氏物語  山本春正編 承応3年(1654)刊 袋綴60冊
    附 系図、山路の露、引歌各一巻、目案三巻
 (参考)源氏物語 奈良絵本  江戸時代前期写 列帖装2冊

 22 (絵入)源氏物語  寛文頃刊 袋綴30冊(60巻合冊)
    附 系図、山路の露、引歌各一巻、爪印三巻
    印記:芦沢蔵書、尚友亭

2002年7月 5日 (金)

第95回展示 西洋古版日本地図展

第95回展示 西洋古版日本地図展
期間:2002年7月5日(金) ~ 7月31日(水)

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テイセラ「日本図」(オルテリウス『地球の舞台』より)

「西洋古版日本地図展」開催にあたって

   文学部教授 石田千尋

  今回、鶴見大学図書館が所蔵するヨーロッパで刊行された古地図の中から日本地図を厳選し展示します。
   1298年、マルコ・ポーロが『東方見聞録』の中で日本を紹介して以降、日本はさまざまな形に想像され、西洋の地図上に描かれました(1・2・3)。その後、1543年ポルトガル人が日本にやってくると、ポルトガル商人や宣教師らを通して日本に関する地理的情報は次第に地図上に姿を見せてきました。しかし、初期のものはポルトガル人の知り得た関西近辺までで、関東以北は未知なる世界でした(4・5)。1595年、オルテリウスによって発行されたルイス・テイセラの本州・九州・四国がほぼ正確な対比で描かれた「日本図」(6)(日本の「行基図」(7)を基にしていました)によって、西洋の印刷された日本地図が新時代を迎えたといえます(8)。しかし、17世紀になると必ずしも正確とはいえない様々な情報が加えられ、日本図は変形されながら継承されていきました(9・10・11・12)。1728年のショイヒツァー「日本図」(13)は、17世紀末にケンペルが日本から持ち帰った日本図(14)を基に作成されたものでした。それは、あまり正確なものではありませんでしたが、その後の日本地図に大きな影響を与えつづけました(15・16・17・18・19)。18世紀後半以降には日本近海を航行するヨーロッパ船が多くなり、新発見の報告書から日本地図も正確さが加えられていきました(20・21)。1840年、長崎の出島商館医であったシーボルトが帰国後出版した日本地図によって、ヨーロッパの地図学に残されていた神話や誤謬が除かれ、西洋における日本の地理的形状には近代的な基盤が与えられることになったのです(22)。
 今回展示します16世紀から19世紀に及ぶ西洋古版日本地図を通して、ヨーロッパ各国・地域、各時代における地理上の「日本」認識のありさまと、地図を媒介とした日本と西洋との文化交流の諸相をご覧頂ければ幸いです。

(註)本文中の括弧内の数字は展示品番号です。
 

展示リスト  

1.ヴァルトゼーミュラー「インドシナ半島と大韃靼図」
  (プトレマイオス『世界地理書』より)
   [ストラスブルク 1522年頃]  木版  28.8×45.9cm

2.ボルドーネ「日本図」(『世界島嶼誌』より)
   [ベニス 1528年]  木版  8.4×14.5cm

3.ミュンスター「新世界図」(『世界誌』より)
  [バーゼル  1552年]  木版  25.5×33.9cm

4.オルテリウス「アジア図」(『地球の舞台』より)
  [アントワープ 1570年]  銅版筆彩 37.0×49.4cm

5.ファン・ラングレン「東アジア図」(ファン・リンスホーテン『東方案内記』より)
   [アムステルダム 1596年] 銅版 38.6×52.6cm

6.テイセラ「日本図」(オルテリウス『地球の舞台』より)
   [アントワープ 1595年] 銅版筆彩 35.4×48.2cm

7.行基「大日本国図」(洞院公賢編『新版拾介抄』より)
  [京都 風月荘左衛門 江戸時代前期(17世紀後期)] 木版 21.7×35.6cm

8.ホンディウス「日本図」(『新地図帖』より)
   [アムステルダム 1606年] 銅版筆彩 34.1×44.4cm

9.ヤンソン「日本および蝦夷図」(『新地図帖』より)
   [アムステルダム 1658年] 銅版筆彩 45.4×54.9cm

10.タヴェルニエ「日本図」(『旅行記集』より)
   [パリ 1679年] 銅版 21.2×31.8cm

11.マレ(マネソン=マレ)「日本図」(『世界誌』第2巻より)
   [パリ 1683年] 銅版筆彩 13.8×9.7cm

12.サンソン「日本図」(『アジア地図帖』より)
   [パリ 1683年] 銅版筆彩 18.5×23.8cm

13.ショイヒツァー「日本図」(ケンペル『日本誌』第2版より)
   [ロンドン 1728年] 銅版 46.0×53.0cm

14.石川流宣「本朝図鑑綱目」
   [江戸 相模屋太兵衛 貞享4年(1687)]  木版筆彩  59.4×131.8cm

15.ティリオン「日本帝国図」(サルモン『世界旅行記』第2巻より)
   [アムステルダム 1734年] 銅版筆彩 24.5×31.7cm

16.ベラン「日本帝国図」(シャルルヴォワ『日本の歴史および地誌』第1巻より)
   [パリ 1736年] 銅版 41.7×53.9cm

17.ル・ルージュ「日本および朝鮮図」(『新携帯地図帖』より)
   [パリ 1748年] 銅版筆彩 20.6×27.5cm

18.ロベール「日本帝国図」(『世界地図帖』より)
   [パリ 1750年(1757年)]  銅版筆彩 48.3×53.6cm

19.エロースミス「日本帝国図」
   [ロンドン 1807年] 銅版筆彩 23.5×39.8cm

20.トムソン「朝鮮および日本図」(『新普遍地図帖』より)
   [エディンバラ 1815年] 銅版筆彩 59.0×61.9cm

21.ウォーカー「日本帝国図」
   [ロンドン 1835年] 銅版筆彩 38.9×31.9cm

22.シーボルト「日本図」(『日本』複製版より)
   [ライデン 1840年] 石版 59.4×79.0cm

解説    
1.ヴァルトゼーミュラー「インドシナ半島と大韃靼図」 (プトレマイオス『世界地理書』より)   [ストラスブルク 1522年頃]  木版  28.8×45.9cm 実際にはプトレマイオスの世界像はインドシナ半島までで終わるが、ヴァルトゼーミュラーは、それにマルコ・ポーロによる韃靼とジパングの情報を追加して描いた。 

2.ボルドーネ「日本図」(『世界島嶼誌』より)   [ベニス 1528年]  木版  8.4×14.5cm これはヨーロッパで単独の日本地図として初めて印刷されたものである。この15年後に最初のヨーロッパ人であるポルトガル人が日本にやってくる。

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3.ミュンスター「新世界図」(『世界誌』より)  [バーゼル  1552年]  木版  25.5×33.9cm このミュンスターの地図では、マルコ・ポーロが述べた7448の島々がある日本(Zipangri)は、アジア大陸より北アメリカに近く描かれている。

4.オルテリウス「アジア図」(『地球の舞台』より)  [アントワープ 1570年]  銅版筆彩 37.0×49.4cm このポルトガルから情報を得て描かれたオルテリウスの地図では、日本は関西を少し越えたところで終わっており、豊後は本州にあり、鹿児島は島として描かれている。日本は直立しているように見えるが、緯度線より東西に横たわっていることがわかる。

5.ファン・ラングレン「東アジア図」(ファン・リンスホーテン『東方案内記』より)   [アムステルダム 1596年] 銅版 38.6×52.6cm これは、オランダ商人リンスホーテンがポルトガルから情報を得て作成した地図であり、日本はエビ型をして、関東は南に伸び、東北地方はまだ存在していない。

6.テイセラ「日本図」(オルテリウス『地球の舞台』より)   [アントワープ 1595年] 銅版筆彩 35.4×48.2cm この図はポルトガル人地図製作者ルイス・テイセラによるものであり、当時最新の日本地図としてオルテリウスの地図帳に採用された。日本の「行基図」(7)を基にしており、本州・九州・四国がほぼ正確な対比で描かれている。この地図をもって西洋の日本地図の新時代が始まったといわれる。

7.行基「大日本国図」(洞院公賢編『新版拾介抄』より)  [京都 風月荘左衛門 江戸時代前期(17世紀後期)] 木版 21.7×35.6cm  江戸時代初期より以前の日本図は「行基図」あるいは「行基式日本図」とよばれ、日本全体の輪郭が丸みを帯びた線で表現され、奥羽地方が大きくふくらんだ形で描かれていることや、日本が東西に細長く描画されていることなどがその特色としてあげられる。本図は、6テイセラ「日本図」の基になった地図の系統をひくものである。 

8.ホンディウス「日本図」(『新地図帖』より)    [アムステルダム 1606年]     銅版筆彩 34.1×44.4cm   この図は、6テイセラ「日本図」に拠って描かれたものである。

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9.ヤンソン「日本および蝦夷図」(『新地図帖』より)   [アムステルダム 1658年]    銅版筆彩 45.4×54.9cm   この地図には、オランダ人フリースが1643年におこなった蝦夷と千島列島への探検の成果があらわされている。しかし、フリースが千島列島や樺太を蝦夷の一部と考えたため、この後 150年間、ヨーロッパの地図上で、蝦夷は実際よりずっと大きいものとして描かれた。

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10.タヴェルニエ「日本図」(『旅行記集』より)   [パリ 1679年] 銅版 21.2×31.8cm 宝石商タヴェルニエ自身は、中国までしか行っていないが、バタヴィアで収集した情報をもとに日本図を描いている。日本の形については、過去のカトリック派の手本を採用しており、東日本の方が西日本より目立って大きい。本州の形は全体として少し不恰好な感じである。

11.マレ(マネソン=マレ)「日本図」(『世界誌』第2巻より)   [パリ 1683年] 銅版筆彩 13.8×9.7cm この図は、9ヤンソン「日本および蝦夷図」同様、関西と関東は西から東へと伸びており、また、後の13ショイヒツァー「日本図」のように東北地方は直角に北をむいており、他には見られない独自の型をもっている。四国および九州は非常に簡略化されてきている。 

12.サンソン「日本図」(『アジア地図帖』より)   [パリ 1683年] 銅版筆彩 18.5×23.8cm  この図は、9ヤンソン「日本および蝦夷図」に比べて本州が少し伸びて描かれ、蝦夷地に関してはフリースの発見はまるで無視されている。本州の南東にある小さな島々は9ヤンソン「日本および蝦夷図」では全て房総半島の南にあったが、サンソンは房総半島のまわりに置いている。

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13.ショイヒツァー「日本図」(ケンペル『日本誌』第2版より)   [ロンドン 1728年] 銅版 46.0×53.0cm この図は、長崎の出島商館医ケンペルが日本で出た日本図(14)を基に作成したもので、ショイヒツァーによって出版された。東北地方は北に向いているが、ずんぐりした形になっている。この図はその後、類図を多く生み、ヨーロッパで流布した日本像の一つである。

14.石川流宣「本朝図鑑綱目」   [江戸 相模屋太兵衛 貞享4年(1687)]  木版筆彩  59.4×131.8cm  ケンペルが日本からヨーロッパへ持ち帰った四つの日本の木版地図の一つ。ケンペル死後、ショイヒツァーはこの地図を手本とし、松前を島として描き、能登半島や四国の形、諸国名の漢字表記、海岸線の形成などに役立てた。

15.ティリオン「日本帝国図」(サルモン『世界旅行記』第2巻より)   [アムステルダム 1734年] 銅版筆彩 24.5×31.7cm この図は、13ショイヒツァー「日本図」を手本として描かれたものである。しかし、ティリオンは能登半島の北に「蝦夷または蝦夷が島またはカムチャッカ」の一部を示した。

16.ベラン「日本帝国図」(シャルルヴォワ『日本の歴史および地誌』第1巻より)   [パリ 1736年] 銅版 41.7×53.9cm  この図は、13ショイヒツァー「日本図」を手本としたものであるが、作者ベランはいくつかの修正をおこなった。すなわち、西日本はわずかに南西から北東方向に向き、能登半島は西方向に傾いている。ベランの地図はこれ以降18世紀いっぱい大きな影響力を持ち続けた。

 17.ル・ルージュ「日本および朝鮮図」 (『新携地図帖』より)   [パリ 1748年]   銅版筆彩 20.6×27.5cm ル・ルージュの日本図は全体としてほっそりとしており、南西から北東に伸びる。ル・ルージュは、13ショイヒツァー「日本図」から九州・四国の形と島根・能登・房総および紀伊半島を取り入れた。

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18.ロベール「日本帝国図」(『世界地図帖』より)   [パリ 1750年(1757年)]  銅版筆彩 48.3×53.6cm ロベールの地図は、陸奥湾を囲む津軽および下北半島の形をはっきりと描き、架空の松前島は省かれている。この形は19世紀に入っても影響を及ぼしていく。

19.エロースミス「日本帝国図」   [ロンドン 1807年] 銅版筆彩 23.5×39.8cm この図は、エロースミスが1790年版のセイヤー「日本図」に従って描いたものである。なお、セイヤー「日本図」は、18ロベール「日本帝国図」をもとにして、13ショイヒツァー「日本図」の情報を細部に盛り込んだものであった。

20.トムソン「朝鮮および日本図」(『新普遍地図帖』より)   [エディンバラ 1815年] 銅版筆彩 59.0×61.9cm この図は、2年前に作成されたジョーンズ「日本、朝鮮および韃靼図」に類似するものである。ジョーンズの地図は、1796-97年のブロートンや1805年のクルーゼンシュテルンの日本近海航行による発見の報告書に付けられた地図の影響がみられる。しかし、このトムソンの地図では、本州の海岸線や九州・四国・淡路島がずっと正確になっている。

21.ウォーカー「日本帝国図」   [ロンドン 1835年] 銅版筆彩 38.9×31.9cm ウォーカーの地図は、ジョーンズ「日本、朝鮮および韃靼図」と20トムソン「朝鮮および日本図」の改良部分を結びつけ、さらに鹿児島湾の桜島の形など若干改良を加えたものとなっている。 

22.シーボルト「日本図」(『日本』複製版より)   [ライデン 1840年] 石版 59.4×79.0cm  長崎の出島商館医シーボルトは、1826年、江戸で高橋景保より近代的測量に基づいて作成されたばかりの日本地図を入手した。シーボルトは日本側の取り調べにもかかわらずこの地図をヨーロッパに持ち帰り1840年1枚ものの地図として出版した。この出版により、日本近代の地図学の基礎が置かれたといえる。

参考文献     

・松本賢一編著『欧州古版日本地図集』十一組出版部、1943年。
・神戸市立博物館編『南波松太郎氏収集 古地図の世界』神戸健康教育公社、1983年。
・神戸市立博物館編『秋岡古地図コレクション名品展』神戸スポーツ教育公社、1989年。
・社団法人OAG・ドイツ東洋文化研究協会編集・発行『西洋人の描いた日本地図?ジパング からシーボルトまで 図録』1993年。
・神戸市立博物館編『古地図コレクション?神戸市立博物館?』神戸スポーツ教育公社、1994  年。
・鶴見大学図書館編集・発行『西洋古版日本地図』特定テーマ別蔵書目録集成11、1997年。
 

 

2001年11月27日 (火)

93回 2001/11/27~12/15 蔵書印の語るもの

第93回展示

蔵書印の語るもの

期間:平成13年11月27日(火)

~平成13年12月15日(土)

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蔵書印の語るもの

「蔵書印は伝来を証する、いわば書物の履歴書である」(渡辺守邦・島原泰雄編『蔵書印提要』)。蓋し名言、誰の手からどのような道すじをたどって今ここにあるのかを教えてくれるのみならず、印に刻まれた文辞や印泥の選択や押し方のその一つ一つに、かつてこれを愛玩したであろう人の顔までもがあらわれる。横浜ゆかりの岡本閻魔庵用いる印は絵柄おもしろく、容貌はなはだ秀でざりし儒者安井息軒のそれは瀟洒にして雅――御亭主よりは『安井夫人』に描かれたるお佐代さんの風情、むしろ近からむか――、興は尽きない。

 さて蔵書印は書物流浪の諸相をも語る。明治維新によって基盤を失った各地の藩校から大量の典籍が放出され、あるいは愛書家の逝去にともなって珍書稀籍が次のあるじのもとへと移動するのは自然の数と言えよう。が、由緒正しき古寺名刹より離れし書物の、わが図書館のみならず世間一般にもすこぶる多きことは、一体どうしたものか。本を読まない、もしくは書物と引きかえにしたわずかな金銭の方をありがたがるお坊さまが一杯いらっしゃることの明々白々な証拠、でなければ幸い。

 蔵書印はまた、旧蔵者の息づかいをも生々しく伝える。博識の露伴がいかにも読みふけりそうな類書、『アララギ』の巨人斎藤茂吉の示す有職故実への関心、そして国学の大家本居宣長の手なれの本――実体希薄な電子情報の飛びかう現代こそ、素朴で確かな手ごたえが、学問のためにも人間の真に豊かなくらしのためにも必要ではあるまいか、と妙な理窟を野暮にこねまわすつもりはない。蔵書印が書物の世界の楽しみを深める名脇役であること、それを言えば足りている。

文学部教授  高田信敬

展示リスト ( )=旧蔵者

I 公家の文華

1.源概集(鷹司家)<参考>未雨秘抄

2.菅家後集(正親町家)<参考>八幡御幸次第

3.蔵人頭奏慶従事次第(滋野井家)<参考>門号類聚

4.醍醐寺雑事記(山科家)

5.後光厳院御記(烏丸家)<参考>貫首秘抄

II 名刹古社の旧蔵

6.万葉代匠記(青蓮院)<参考>百人一首

7.侍姉百首(曼殊院)

8.新続古今集(西本願寺)

9.公事根源集釈(増上寺)

10.山城国風土記(賀茂別雷神社)

III 大名藩校の学問

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11.改元記(松平定信他)

12.和漢年契(水野中央)

13.和蘭字彙(大聖寺藩藩校)

14.大学衍義(小倉藩藩校他)

15.新任弁官抄(前田尊経閣)

IV 文林芸苑の人々

16.新猿楽記(大田南畝)

17.古今要覧稿(幸田露伴)<参考>唐白行簡賦残巻(複製)碗久物語(原稿)

18.江家次第(斎藤茂吉)

19.源氏小鏡(小堀鞆音)

20.竹取物語(幸野楳嶺)

V 学者の手沢

21.六百番歌合(本居宣長)

22.四書釈地続補(安井息軒)

23.和歌留(佐佐木信綱)<参考>国文秘籍解説

24.大和物語(高野辰之)

25.将門記(チェンバレン)<参考>詠歌大概聞書

VI 愛書家の面影

26.埋麝発香(岡本久次郎)

27.源氏物語紹巴抄(大島雅太郎)

28.文選(小汀利得)

29.伊勢物語系図(前田善子)<参考>職原抄竊考

30.仏制六物図(三井高堅)

図書館所蔵の書籍のみにては十分な展示かなわず、文学部中川博夫教授に
協力を仰いだ。記して謝意を表す。

2001年10月 2日 (火)

貴重書ギャラリー:5 和歌と物語

貴重書ギャラリー:5 和歌と物語

kch-41
貫之集断簡
  伝寂然筆・藤原定家書入
  村雲切 平安時代末期写
kch-42
師輔集断簡
  伝平業兼筆
  春日切 鎌倉時代初期写
kch-43
古今和歌集
  零本 鎌倉時代後期写
kch-44
風雅和歌集断簡
  奏覧本 尊円親王筆
  南北朝時代写
kch-45
俊成卿九十賀和歌
  江戸時代中期写
kch-46
伊勢物語
  藤原定家筆本模写
  室町時代後期写
kch-47
源氏物語断簡
  河内本 伝藤原為家筆
  鎌倉時代中期写
kch-48
狭衣物語断簡
  伝阿仏尼筆 鎌倉時代後期写
kch-49
曽我物語
  蒔絵箱入 江戸時代初期写

kch-50
源氏物語双六
  付「うちやうの事」
  江戸時代後期刊

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貴重書ギャラリー:4 日本文学--古典籍の名筆-- 善本書影拾葉

貴重書ギャラリー:4 日本文学--古典籍の名筆-- 善本書影拾葉

kch-31
和漢朗詠集
  伝後京極良経筆
kch-32
源氏物語 須磨・付帚木残簡
  伝冷泉為相筆
kch-33
新勅撰和歌集
  伝後伏見院筆
kch-34
新選莵玖波集
 伝飛鳥井雅康・大内政弘筆
kch-35
伊勢物語
  近衛信尹筆
kch-36
古今和歌集
  契沖筆
kch-37
万葉集問答  田中道麿問・本居宣長答自筆原本
kch-38
対大己五夏闍梨法
  道正庵切 道元自筆
kch-39
千載和歌集  日野切
  藤原俊成筆
kch-40
異本平家物語 長門切
  伝世尊寺行俊筆

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貴重書ギャラリー:3 典籍東西の光彩 善本拾葉

貴重書ギャラリー:3 典籍東西の光彩 善本拾葉

kch-21
源氏物語 賢木、明石巻
  奈良絵本
kch-22
源氏物語
  蒔絵函入本
kch-23
源氏五十四帖絵巻 
伝狩野探幽原画幽遠斎模写
kch-24
駒競行幸絵詞
  狩野養信模写
kch-25
寛永行幸記(零本)
  古活字版 絵活字彩色
kch-26
西洋画引節用集(口絵)
kch-27
Japanese fairy tales (英訳) L.ハーン訳
kch-28
ミルトン『失楽園』(J.エヴァンス挿画)
kch-29
ミルトン『失楽園』(J.マーティン挿画)
kch-30
オリテリウス「東インド図」

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貴重書ギャラリー:2 名場面への招待 源氏物語絵とシェイクスピア劇絵

貴重書ギャラリー:2 名場面への招待 源氏物語絵とシェイクスピア劇絵

kch-11
源氏物語絵  空蝉巻
  奈良絵
  江戸中期写
kch-12
源氏大和絵鑑 花宴巻
  菱川師宣画
  貞享2年刊
kch-13
源氏物語   明石巻
  奈良絵本
  江戸前期写
kch-14
源氏五十四帖絵巻 篝火巻
伝狩野探幽原画幽遠斎模写
  天保2年写
kch-15
源氏小鏡   東屋巻
  明暦3年刊
kch-16
「ハムレット」R.ウェストール画
『ボイデル・シェイクスピア戯曲画集』 1804年頃刊
kch-17
「夏の夜の夢」H.フューズリ画
『シェイクスピア劇作品集』H.ステビング編 1828年頃刊
kch-18
「あらし」H.J.タウンゼント画
『シェイクスピア作品集』インペリアル版 C.ナイト編 1875-76年刊
kch-19
「冬物語」J.ギルバート画
『シェイクスピア文庫』 1879年刊
kch-20
「ウィンザーの陽気な女房たち」G.ロス画
『シェイクスピア戯曲集』H.ファージョン編 1939-40年刊

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貴重書ギャラリー:1 古筆歌切の風韻 名蹟拾葉


貴重書ギャラリー:1 古筆歌切の風韻 名蹟拾葉

kch-01 
古今和歌集断簡
  伝藤原伊行筆
  平安時代後期
kch-02 
古今和歌集断簡 今城切
  藤原教長筆
  治承元年(1177)
kch-03 
古今和歌集断簡 中山切
  伝藤原兼実筆
  鎌倉時代初期
kch-04
拾遺和歌集断簡 筑後切
  伏見天皇筆
  鎌倉時代後期
kch-05
新古今和歌集
  伝藤原為家筆
  鎌倉時代中期
kch-06
松花和歌集断簡
  伝浄弁筆
  南北朝時代
kch-07
類従歌合断簡  二条切
  伝藤原俊忠筆
  平安時代後期
kch-08
猿丸集断簡
  伝藤原公任筆
  平安時代後期
kch-09 
[未詳和歌]断簡 金剛院切
 伝亀山天皇筆
  鎌倉時代後期
kch-10
和漢朗詠集断簡
  伝世尊寺行能筆
  鎌倉時代後期

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2001年7月 3日 (火)

2001/07/03~07/28 第92回 シンデレラ展

第92回展示
シンデレラ展
7月3日(火)~31日(火)
解説 歯学部助教授 木村利夫

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はじめの言葉
シンデレラ物語は、実は「民話」に属し、世界中に同じような類話が見つかる大きな物語群を形成している。細部に渡って分類がなされ、「シンデレラ・サイクル」という専門用語が存在するほどである。日本にも、類話がたくさんあるし、一番古いものとしては、中国に残されているという研究もある。

『シンデレラ』は、日本ではもっとも有名な童話のひとつで、老若男女を問わず、絶大な人気を博している。しかし、日本人が一般に見聞きするシンデレラ物語は、実はシャルル・ペロー(1628 ? 1703)の『童話集』にある『サンドリヨン』(シンデレラは英語訳であり、もともとの原文のフランス語では、<サンドリヨン=灰まみれの少女>である)に起源をもつものであることを知る人は、それほど多くはないであろう。そして、「魔法使いのおばあさん」は、名付け親の妖精であることを知る人も少ないかもしれない。

 たくさんのシンデレラ物語群の中から、どうしてペローに行き着くことになるのか、それが今回のシンデレラ展のひとつの焦点になるかもしれない。大胆な言い方をすれば、次のような流れになるのではないかと考える。『ペロー童話集』が1729年にロバート・サンバーによって英語に翻訳された。それが、瞬く間に、英国全土に広がる人気を博することになり、あたかも自国で生まれた文化の如く英国は『シンデレラ』の世界を享受することになる。そこには今回の展示で出展される、小さな小冊子本である「チャップブック」が下支えをしたと考えられる。このチャップブックが時代の変化と共に発展解消し、絵本となり、様々な玩具となったりと、多様な形で現代に繋がったものと考えられる。勿論、話しはそれほど単純ではなく、直線的ではないのだけれども、大枝を切り落としてしまえばそうした流れになるのではないだろうか。そして、最近になってからでは、やはりディズニーの映画と絵本の存在が圧倒的な影響力をもたらしたと言ってよいだろう。その功罪はともかく、『シンデレラ』はあたかも永遠不滅の物語になったように見える。

本学図書館所蔵の「シンデレラ」関係の図書その他のコレクションは、日本屈指のものである。これほどまでに体系立てて、コレクションがなされたことは驚愕に値する。是非、その目で、シンデレラ物語の歴史を作ってきた作品に触れていただきたいものである。その誕生から今日まで全く人気が衰えることがなく、多くの人に愛されてきた『シンデレラ』の世界をもう一度子供になった気分で眺めていただければ幸いである。

歯学部助教授 木村利夫

《シンデレラ展示リスト》

 1.『シンデレラのはなし、その他』(チャップブック)  1760年頃から1790年頃刊

 2.『美しき少女シンデレラの不思議な冒険、またはガラスのくつ』(チャップブック)
                           ロンドン 1790年頃刊

 3.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』(チャップブック)
T.コリアー                リチフィールド 1800年頃刊

 4.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ、子供のためのはなし』
(チャップブック)タバート        ロンドン 第14版 1804年刊

 5.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』(チャップブック)
     ハワード・アンド・エヴァンズ            ロンドン 1809年刊

 6.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』(チャップブック)
                 ロンドン:ジョン・エヴァンズ 1809年頃刊

 7.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』(チャップブック)
                            ロンドン 1816年刊

 8.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』(チャップブック)
                       J.ケンドリュー ヨーク 1820年刊

 9.『シンデレラ、または小さなガラスのくつのはなし』(チャップブック)
               コヴェントリー: N.メリデュウ 1820年頃刊

10.『シンデレラのおもしろいはなしとガラスのくつ』(チャップブック)
                   J.G.ラッシャー バンバリー  1820年頃刊

11.『シンデレラ、または小さなガラスのくつの人気のある物語のマーシャル版』
(チャップブック)        ロンドン:ジョン・マーシャル 1821年刊

12.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』(チャップブック)
              エジンバラ:オリバー・アンド・ボイド 1828年刊

13.『シンデレラのはなし、または小さなガラスのくつ』(チャップブック)
トーマス・リチャードソン             ダービー 1822年頃刊

14.『シンデレラのはなし』(チャップブック)J.S.パブリッシング・アンド・
ステイショナリー           オトリィ: ヨークシャー 1840年

15.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』(チャップブック)
               クーパースタウン: H.E.フィニー 1842年刊

16.『シンデレラのはなし、またはガラスのくつ』(チャップブック)
ラスゴー 1850年刊

17.『シンデレラのはなしと小さなガラスのくつ』(チャップブック)
ディーン・アンド・マンディ             ロンドン 1800年代刊

18.『シンデレラと小さなガラスのくつ』(チャップブック)
ディーン・アンド・マンディ            ロンドン 1846年頃刊

19.『シンデレラ』ラファエル・タック・アンド・サンズ   ロンドン 1905年頃刊

20.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』 ロンドン:C.ラウンデス 1804年刊

21.『シンデレラ、親指小僧と7リーグの靴』 ジョージ・クルックシャンク 画
                     ロンドン:D.ボーグ 1853 - 54年刊

22.『シンデレラとガラスのくつ』ジョージ・クルックシャンク 編・画
                       ロンドン:D.ボーグ 1854年刊

23.『シンデレラとガラスのくつ』ジョージ・クルックシャンク 編・画
                     ロンドン:G.ラウトリッジ 1860年

24.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』ジョン・ハリス
                           ロンドン 1825年頃刊

25.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』グラント・アンド・グリフィス
                           ロンドン 1850年頃刊

26.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』グリフィス・アンド・ファラン
                           ロンドン 1860年頃刊

27.『サンドリヨン、または小さなガラスのくつ』      パリ:オド 1833年刊

28.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
                ロンドン:S.アンド・J.フラー 1814年刊

29.『シンデレラ』    ハンブルグ:ガスタフ W.ザイツ 1863年から1864年頃刊

30.『シンデレラ』           ロンドン:ラファエル・タック 1912年刊

31.『パークのシンデレラ』          ロンドン:A.パーク 1800年代刊

32.『サンドリヨン』ペルラン                 パリ 1800年代刊

33.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
        ロンドン:キャセル、ピーター・アンド・ガルピン 1871年頃刊

34.『シンデレラとおとぎばなし』 ロンドン:アーネスト・ナイスター 1870年代刊

35.『シンデレラ』    ロンドン:G.ラウロリッジ・アンド・サンズ 1873年刊

36.『子供のミュージカル・シンデレラ』 G.ラウトリッジ   ロンドン 1879年刊

37.『小さなシンデレラとガラスのくつ』ディーン・アンド・サン
                           ロンドン 1880年頃刊

38.『子供たちのシンデレラ、または小さなガラスのくつ』
ロンドン:ディーン・アンド・サン 出版年不詳

39.『シンデレラ、四幕仕立ての妖精オペラ』J・ファーマー 構成、H・S・リー
   文、 ヘイウッド・サムナー 画    ハロウ:J.C.ウイルビー 1882年頃刊

40.『シンデレラ、またはガラスのくつ』 ニューヨーク: マクローリン 1890年頃刊

41.『シンデレラ』     ニューヨーク:マクローリン・ブラザーズ 出版年不詳

42.『シンデレラ』           ニューヨーク:マクローリン 1890年頃刊

43.『シンデレラ』           ニューヨーク:マクローリン 1891年頃刊

44.『シンデレラ、または小さなガラスのくつとジャックと豆の木』
  グレース・ライズ          ロンドン: J.M.デント 1894年刊

45.『3人の美しいプリンセスたち』キャロライン・パターソン 画
                  ロンドン:マクラス・ワード 1800年代刊

46.『シンデレラ』グリフィス・アンド・ファラン ロンドン:トークエイ 1900年刊

47.『シンデレラ』エイミー・ステードマン 文
                   ロンドン:D.P.デント 1900年代刊

48.『シンデレラ』       ニューヨーク:ムービー・ジェクター 1934年頃刊

49.『シンデレラ』        ロンドン:ディーン・アンド・サン 出版年不詳

50.『シンデレラ、パノラマ・ブック』      ロンドン:コリンズ 1900年代刊

51.『シンデレラ、 ピープショー・ブック』ローランド・ピム 画

             ロンドン:フォールディング・ブックス 1947年頃刊

52.『シンデレラ』              ロンドン:バンクロフト 1961年刊

53.『シンデレラと二つのギフト』エドワール・ドウ・ボーモン 画
                            ロンドン 1887年刊

54.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』アリス・コーバン・ヘンダーソン 訳
  ブランチェ・フィシャー・ライト 画 シカゴ:ランド・アクナリー 1914年刊

55.『シンデレラ』C.S.エヴァンズ 再話、 アーサー・ラッカム 画
                       ロンドン:ハイネマン 1919年刊

56.『シンデレラ、ウォルト・ディズニー映画版』
ロンドン:ディーン・アンド・サン 出版年不詳

《シンデレラ展観》
1.『シンデレラのはなし、その他』
1760年頃から1790年頃刊 チャップブック
18世紀に出版された貴重なチャップブック。シャルル・ペローの『ペロー童話集』から『シンデレラ』の一作品が抜粋されたチャップブックである。タイトルにあるように、後編に、『乳絞り女』という作品が付属している。ページのへりが裁断されていない「耳」つきの版(アンカット版)である。そもそも、18世紀に出版されたチャップブックは現存するものが極めて少ない。版型、紙質の粗悪さ、小口木版の挿し絵の素朴さなど、どれをとっても飾り気のないものだけに味わい深いものである。挿し絵は全部で15枚あるが、そのうち物語の展開に関係するものは半分ほどしかない。『ペロー童話集』から初めて英語に翻訳されたロバート・サンバー版(1729)には存在する「モラル=教訓」は本書には存在しないが、付属の『乳絞り女』には僅かながらも「モラル」が存在し、その名ごりを残している。

2.『美しき少女シンデレラの不思議な冒険、またはガラスのくつ』
ロンドン 1790年頃刊 チャップブック
『シンデレラ』単独の出版としては、もっとも初期のものである。タイトルページに記載されているのは、出版所在地と価格のみであり、この時期のチャップブックの典型的な形式である。口絵には本を読む少女が描かれ、本文末に置かれるはずの「モラル=教訓」に代わる内容の数行の韻文が刻まれている。チャップブックは、以前には「ペニー・ヒストリー」と呼ばれ、1ペニーほどの価格で売られる語り本、という意味であった。

3.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
T.コリアー
リチフィールド 1800年頃刊 チャップブック
アメリカで初めて出版された『シンデレラ』のチャップブックである。英語の表題はCinderillaで、『ペロー童話集』が英語に翻訳された当初の綴りとなっている。活字は、「長形のs」(fに似たs)や合字が使われ、挿し絵は素朴な小口木版が入れられている。単なる読み物としてではなく、詩、アルファベットの文字、子音と母音の組み合わせがあるなど、子供の教育を重視した作品となっている。

4.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ、子供のためのはなし』
タバート
ロンドン 第14版 1804年刊 チャップブック

19世紀に入ると、チャップブックは小ぶりのものが多くなるが、本書はその典型的な小型のサイズである。タバートは有名なチャップブックの出版者で、1804年に『タバートの子供のためのおはなし集』という本を出版した。本書は、その『おはなし集』にある『シンデレラ』と同じものであると思われる。見所は、タイトルページに集約されている。シャルル・ペローの作品を底本としていることが明示されていること、そしてこの版が第14版であると示されていることである。どちらもチャップブックには希有なことである。

5.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
ハワード・アンド・エヴァンズ
ロンドン 1809年刊 チャップブック

出版者のエヴァンズは、ジョン・エヴァンズで、安価なチャップブックを多く出版した人物である。子供にとって楽しい本やベストセラーになった本の海賊版などを出版した。本書は、そのエヴァンズがハワードと組んで出版したチャップブックである。19世紀の出版であるが、挿し絵の素朴さ、紙葉の粗悪さは前世紀のチャップブックの風合いを持ち、何とも言えない風格と風情がある。1809年頃刊の未製本の異版と見比べてほしい。

6.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
ロンドン:ジョン・エヴァンズ 1809年頃刊 チャップブック
ジョン・エヴァンズは、19世紀初頭、ジョン・ハリスとほぼ同じ時期にロンドンで活躍したチャップブックの出版者である。ハリスが1シリングや1シリング6ペンスと高価な本を出版したのに対して、エヴァンズは1ペンスや1ペンス半という安価なチャップブックを出版した。本書は、一枚の紙葉の表裏に印刷され、製本のための折目がつけられたものの、完成のための糸綴じがなされていない。紙葉の2折りを3回すれば、全16ページの本が出来上がる仕組みである。小口木版や紙葉の質を見ても、安価で庶民に手の届く読み物であったことがうかがい知れる。

7.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
ロンドン 1816年刊 チャップブック
出版者不明のチャップブックであるが、チャップブックの世界ではよくあることである。裏表紙を見ると、シリーズで多くの作品を出版していたことがうかがえる。優麗な4枚の銅版画が異彩を放っている。

8.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
J.ケンドリュー
ヨーク 1820年刊 チャップブック
イングランド北東部にあるヨークで出版されたチャップブック。英語の表題にはCinderella ではなく一字異なるCinderillaの綴りを用いている。この表記は、シンデレラ物語の起源となるフランスの『ペロー童話集』が英語に翻訳された際に使われたものである。実は、ケンドリューのチャップブックは、ジョン・エヴァンズのチャップブックを模倣したことで有名である。本書も同様で、1ページ8行の韻文が同じで、挿し絵は異なる版であるもののほとんど同じ構図の挿し絵となっている。この二つの作品を見比べてほしい。

9.『シンデレラ、または小さなガラスのくつのはなし』
コヴェントリー: N.メリデュウ 1820年頃刊 チャップブック
1820年頃の出版にも関わらず、「長形のs」(fに似たs)、つなぎ語(catchword、または補語とも言い、次のページの初語あるいはその一部が、前のページの下部に示されている)が使われている。長形のsはおおよそ1800年を境にして使われなくなった文字である。また、本書は、折記号(本文7ページの場合はA4)も印刷されている。どれもこの時期のチャップブックにしては極めて希有なことである。

10.『シンデレラのおもしろいはなしとガラスのくつ』
J.G.ラッシャー
バンバリー 1820年頃刊 チャップブック
オックスフォード州のバンバリーのJ.G.バンバリー版のチャップブックである。父親のウイリアム・ラッシャーの出版業を引き継ぎ、「子供のための半ペニーと1ペニー本」のシリーズなどで子供向けのチャップブックを多く出版した。本書は、1820年頃に16作品のシリーズで出版された中のひとつで、幾分色のついたシュガー・ペーパーに印刷されている。小口木版の挿し絵の一枚には、ラッシャーのイニシャルである「J.G.」が刻まれている。
また、もう1冊は同じチャップブックながら、未製本のものである。表裏に印刷された紙葉の状態のものである。2折りを3回繰り返すことで、全16ページの本に出来上がるが、このチャップブックにはその際の折り目があり、「折丁」には綴じ糸を通した穴が数箇所あいている。本の版型を知る上でも貴重な資料である。

11.『シンデレラ、または小さなガラスのくつの人気のある物語のマーシャル版』
ロンドン:ジョン・マーシャル 1821年刊 チャップブック
「マーシャル版」として有名なチャップブックである。英語の表題はCinderellaではなく、Cinderillaを使用しているので、『ペロー童話集』を基底としていることがわかる。しかし、やはり「モラル=教訓」はなく、活字の大きさ、手彩色による挿し絵などを見ると、まさに見て、読んで楽しいチャップブックであり、そこにはもはや「モラル」の入り込む余地はまったくない。非常に繊細で、かつ現代的なものである。

12.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
エジンバラ:オリバー・アンド・ボイド 1828年刊 チャップブック
スコットランドのエジンバラで出版された、やや大型のチャップブックである。挿し絵の持つ独特の雰囲気もさながら、本文も入念に吟味したものとなっている。まさに本文の冒頭の「『シンデレラ』は子供の読者にとって教育的で、娯楽性に富む物語である」と始まる出だしは非常に珍しいものである。実際、立派な文章で、格式あるチャップブックとなっている。この本文と挿し絵をもとに、クーパースタウンのH.E.フィニーが1842年に出版したチャップブックがあるので、是非見比べてほしい。

13.『シンデレラのはなし、または小さなガラスのくつ』
トーマス・リチャードソン
ダービー 1822年頃刊 チャップブック
ダービー州のダービーで出版されたチャップブック。英語の表題”The History of Cinderella”のHistoryは「ものがたり、おはなし」の意味で、少し古い言い方である。本書の面白い点は、口絵の下に、本文の文章が一部そのまま載せられているところである。

14.『シンデレラのはなし』
J.S.パブリッシング・アンド・ステイショナリー
オトリィ: ヨークシャー 1840年刊 チャップブック
本来は1冊ずつばら売りにされた、全16冊のシリーズをひとつにまとめたものである。『シンデレラ』は巻頭を飾る作品で、4行か6行の韻文の形式をとっているが、他の作品は、表紙のデザインが同じなだけで、文字の大きさ、挿し絵の入り方、散文あり韻文ありと、それぞれの作品によって異なっている。

15.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
クーパースタウン: H.E.フィニー 1842年刊 チャップブック
口絵には絵の代わりにアルファベット、数字、記号が並べられ、子供の教育の目的にも利用されたものと思われる。しかし、本文の活字はとても小さく、整然と並んだ活字同様、物語の進行も、ほとんど省略されることなく忠実に『ペロー童話集』に従っている。ところが、これには事情がある。実は、エジンバラのオリバー・アンド・ボイド(1825)が出版したチャップブックを焼き直したものなのである。本文はそのままに、活字を小さくして、挿し絵は中心部分のみを印刷して全体の小型化をはかったものである。チャップブックの世界ではよくあることで、版権を無視したり、時には物語りの内容とは全く無関係の挿し絵を使ったり、同じ挿し絵が何度も使いまわしをされることが少なくなかった。もっとも、そのあたりがチャップブックの大きな魅力の一つとなっていることは言うまでもない。

16.『シンデレラのはなし、またはガラスのくつ』
グラスゴー 1850年刊 チャップブック
チャップブックはイングランド以外でも各地で出版されたが、本書はスコットランドのグラスゴーで出版されたものである。紙葉がとても薄いために裏ページに印刷された活字が透けて見えるほどである。本書の最大の特徴は、挿し絵が一枚も存在していない点である。挿し絵と本文のセットの形式がチャップブックの典型とすれば、そこから逸脱した希有な存在と言える。

17.『シンデレラのはなしと小さなガラスのくつ』
ディーン・アンド・マンディ
ロンドン 1800年代刊 チャップブック
ディーン・アンド・マンディの出版ながら、その代理業者であるA.K.ニューマンも関わったチャップブックである。当時は、子供向けの本に関しては、業者間の協力が頻繁に行われていた。また、英語の表題は非常に珍しいもので、「ガラスのくつ」が”Glass Slippers”と複数形で表示されている。一般に、「ガラスのくつ」は舞踏会の帰りにシンデレラが落としてしまう片方のくつを象徴し、単数形で表示されるのが慣例であるが、この版では意識的に複数形を採用した模様である。

18.『シンデレラと小さなガラスのくつ』
ディーン・アンド・マンディ
ロンドン 1846年頃刊 チャップブック
ディーン・アンド・マンディのもと、非常に優雅な作品が多く出版されたが、本書は『シンデレラ』の新編集版である。その「優雅な」という形容詞には理由がある。実は、子供の読者にふさわしい読み物となるように、女性が編集をし直したものなのである。本書は珍しい構成で、36ページの本文には挿し絵が一枚もない。ところが本文末に、一枚の紙葉を蛇腹に折り畳んで、挿し絵をまとめてしまっている。本文は文章だけとなるため、パラグラフを小さい単位にして余白を多くとり、読みやすいように工夫が施されている。

19.『シンデレラ』
ラファエル・タック・アンド・サンズ
ロンドン 1905年頃刊
本書は、その大きさと装丁から一見チャップブックに思われるが、出版年やその内容からチャップブックの範疇には入らない。勿論、チャップブックに似せて作られたものであるが、人形劇の玩具としても使えるトイ・ブックの分類に属する作品である。「タックお父さんの“パノラマ”シリーズ」の一作品で、全4ページの本文の後には、5ページ分の紙人形があり、その人形を立てるスタンドとなる緑色の台紙が揃っている珍しい逸品である。

20.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
ロンドン:C.ラウンデス 1804年刊
19世紀初頭においても『シンデレラ』の人気が相当に高いものであったことを示す格好の実例で、本書は2幕もののパントマイム劇の台本となっている。台詞は韻文で、登場人物は天井界の神々と、地上界の王子やシンデレラなどである。

21.『シンデレラ、親指小僧と7リーグの靴』
ジョージ・クルックシャンク 画
ロンドン:D.ボーグ 1853 - 54年刊
英国の有名な風刺画家・挿し絵画家であるジョージ・クルックシャンク(1792 - 1878)の銅版画である。ディケンズやサッカリーの作品の挿し絵はよく知られており、『グリム童話』の挿し絵は傑作と言われている。本書は、クルックシャンク自身が編集した4冊からなる「フェアリー・ライブラリー」のうちの2冊、『シンデレラ』と『親指小僧と7リーグの靴』の挿し絵のプルーフ(試験刷り)を纏めたもので、非常に貴重な作品集である。「インディア・ペーパー」に刷られ、丈夫な「カートリッジ紙」の紙葉の糊で全面貼付にマウント(裏打ち)されている。

22.『シンデレラとガラスのくつ』
ジョージ・クルックシャンク 編・画
ロンドン:D.ボーグ 1854年刊
G.クルックシャンクが本文の編集と挿し絵を手掛けた「フェアリー・ライブラリー」(全4巻)の一作。挿し絵のエッチングは見事である。口絵のシンデレラと名付け親の妖精が暖炉に座る場面は、頻繁に引用される傑作である。

23.『シンデレラとガラスのくつ』
ジョージ・クルックシャンク 編・画
ロンドン:G.ラウトリッジ 1860年刊
G.クルックシャンクの編集と挿し絵による『シンデレラ』の異版である。本書は、上等紙に印刷されており、タイトル・ページにはクルックシャンクの肉筆で “To Caroline, Mr Murdo, with the best regards of George Cruikshank. July 5th. 1877”と書かれている。

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24.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
ジョン・ハリス
ロンドン 1825年頃刊
ジョン・ハリスが出版した有名な『シンデレラ』。出版の所在地、セント・ポール・チャーチヤードは、子供の本にとっては最も記念すべき場所で、英国児童書の父と呼ばれるジョン・ニューベリー(? ? 1767)が創業地として選んだ場所である。ジョン・ハリスはニューベリーの後継者で、チャップブックとは明らかに一線を画した気品ある高価な作品を手掛けた。グラント・アンド・グリフィス版(c.1850)、グリフィス・アンド・ファラン版(c.1860)、そしてパリで出版された『サンドリヨン、または小さなガラスのくつ』(1833)と見比べてほしい。

25.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
グラント・アンド・グリフィス
ロンドン 1850年頃刊
ジョン・ハリスの後継者グラント・アンド・グリフィスが、ハリス版(c1825)と同じ挿し絵と本文を使用して出版した本。1ページ、6行からなる韻文の脚韻もaabccbと正確に踏んでいる。ハリス版とは活字の組み方が異なり、出来るだけ6行でおさまるように新しく組み直したものである。この出版は、その後、グリフィス・アンド・ファランに継承されることになる。

26.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
グリフィス・アンド・ファラン
ロンドン 1860年頃刊
セント・ポール・チャーチヤードで始まったジョン・ニューベリーの出版社はジョン・ハリス、グラント・アンド・グリフィス、そしてグリフィス・アンド・ファランへと引き継がれることになった。本書のタイトルページにもニューベリー直系の出版者であることが明記されている。老舗の風格を有する出版物で、布地張りの紙葉に印刷されている。グリフィス・アンド・ファランは、その後、当地を離れ、チャリング・クロス・ロードに移り、「ニューベリー・ハウス」と冠し、Griffith Farran & Coの名で出版を続けることになる。

27.『サンドリヨン、または小さなガラスのくつ』
パリ:オド 1833年刊
本書の最大の特徴は、その挿し絵にある。本文はフランス語の散文の物語であるが、挿し絵は1825年頃にジョン・ハリスが出版した『シンデレラ』と全く同じ挿し絵が使われているのである。是非、二つの本を見比べてほしいものである。

28.『シンデレラ、
または小さなガラスのくつ』
ロンドン:S.アンド・J.フラー 1814年刊
有名なフラーの紙人形(ペーパー・ドール)が一緒になった『シンデレラ』である。ステッチが施されたしっかりとしたスリップ・ケースに、テキストが収まり、奇麗な紙人形が付随した貴重本である。紙人形は手彩色によるもので、極めて手の込んだ繊細優雅な出来栄えである。紙人形を手にしながら、韻文の物語を読み進めることになるが、美術品としての価値を同時に併せ持つ芸術品である。本書は、フラーがペーパー・ドールとして出版した最後のものであり、その神髄を極めた感がある。

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29.『シンデレラ』
ハンブルグ:ガスタフ W.ザイツ 1863年から1864年頃刊
1863年から1864年頃に制作されたと推定される初期のシェイプブックである。シェイプブックは、クリスマスのプレゼントとして子供の靴下に忍ばせることが出来るように作られた「人形を型どった本」で、暖炉のそばにプレゼントを入れてもらうために子供が靴下を吊るという習慣の実例としては大変古いものである。本書は、ルイス・ブラッグ社のシェイプブックに似せて作られたものである。

30.『シンデレラ』
ロンドン:ラファエル・タック 1912年刊
シンデレラの頭部を半円に型どったシェイプブックである。クリスマスのプレゼント用に、靴下に入れることが出来るように作られている本である。本文の内容は、シンデレラが可愛がる鳥がドレスと靴を持って来てくれるなど、大きな改作が見られる。

31.『パークのシンデレラ』
ロンドン:A.パーク 1800年代刊
ロンドンのパーク出版が出した絵本。表紙もハードカバーではなく、薄手の紙葉からなる絵本である。挿し絵の手彩色も必要最小限の色付けであるが、これは価格を押さえるためのものと思われる。

32.『サンドリヨン』
パリ: ペルラン 1800年代刊
いかにもフランスで出版されたことを感じさせる絵本である。挿し絵が紙面の大半を占め、その下に4行か5行の文が加えられている。すべてのページが手彩色による挿し絵で、その鮮やかな色彩が印象的である。展示された右ページの本文2行目にf?e とある通り、杖を持ったmarraine(名付け親=godmother)は、妖精である。

33.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
ロンドン:キャセル、ピーター・アンド・ガルピン 1871年頃刊
ロンドンのキャセルが出版した絵本である。粗雑な手彩色ながら、絵本の挿し絵としての機能は十分に果たしている。本書は、「キャセルの妖精物語本」のシリーズに属し、価格は6ペンスで、布地張りは倍の1シリングとなっている。

34.『シンデレラとおとぎばなし』
ロンドン:アーネスト・ナイスター 1870年代刊
『シンデレラ』を巻頭に、計16作品の物語を集めた大判のリトルドものである。19世紀後半になると、今日にも通じるまさに現代的な絵本の原型が生まれることになるが、本書もその1冊である。

35.『シンデレラ』
ロンドン:G.ラウロリッジ・アンド・サンズ 1873年刊
有名なウォルター・クレインの手になる絵本で、新シリーズの「ウォルター・クレインズ・トイ・ブックス」の中の1冊である。遠近法、床の市松模様は伝統様式であり、女性の「つけボクロ」や洋服などのファッション、舞踏会に集まった様々な人種の人たちなど、その全体が見事に調和している。また、この絵に加え、各ページ10行からなる文章は、2行(カプレット)ごとにきちんと脚韻が踏まれている。また、本書と同じ挿し絵を用いて、ミュージカル絵本にした異版があるので、二つを見比べてほしい。

36.『子供のミュージカル・シンデレラ』
G.ラウトリッジ
ロンドン 1879年刊
有名なウォルター・クレインの画によるミュージカル絵本である。クレインの絵に、文章と曲(楽譜)をつけたものである。チューリンゲン(ドイツ)の民謡やメンデルスゾーンの有名な結婚行進曲などの楽譜も入っている。子供が客間やコンサートで演奏し、楽しめるように工夫された絵本である。

37.『小さなシンデレラとガラスのくつ』
ディーン・アンド・サン
ロンドン 1880年頃刊
ロンドンの有名なディーン・アンド・サンが出版した絵本。紙葉は裏に布地が貼られたリネン版で、単なる紙葉よりも耐久性に富む。一枚の紙葉に印刷し、見開き一対の紙葉を重ねて、それを2折りにした装丁であるため、本編を見開きにすると前半は左側に印刷面が、後半は右側に印刷面が来ることになる。

38.『子供たちのシンデレラ、または小さなガラスのくつ』
ロンドン:ディーン・アンド・サン 出版年不詳
ディーン・アンド・サンは様々なトイ・ブックを出版しているが、本書は「ディーンのお気に入りのおとぎばなしシリーズ」の一作になる。裏表紙には、カラーの図版入りの絵本が1冊6ペンスと記載されている。

39.『シンデレラ、四幕仕立ての妖精オペラ』
ジョン・ファーマー 構成、 ヘンリー・S・リー 文、 ヘイウッド・サムナー 画
ハロウ:J.C.ウイルビー 1882年頃刊
ロンドン北西部にあるハロウで出版された4幕からなるオペラ仕立ての物語である。韻文のコーラスや歌に、シンデレラや王子の散文の台詞が織り込まれていくが、内容はオーソドックスな物語ではなく、自由な展開が見られる。

40.『シンデレラ、またはガラスのくつ』
ニューヨーク: マクローリン 1890年頃刊
明らかに子供の読者を対象とした絵本である。リトグラフによる挿し絵は、大きくてカラフルで、見開きの中央の紙葉は両ページを一枚の挿し絵として用い、大胆な構図をとっている。

41.『シンデレラ』
ニューヨーク:マクローリン・ブラザーズ 出版年不詳
ニューヨークのマクローリン・ブラザーズが出版したファミリー・ムーンビーム・シリーズの一作。全ページがカラー印刷で、ハードカバーの立派な現代的な絵本である。価格は1冊5セント。同じシリーズには、『親指小僧』や『アラジン』などがある。

42.『シンデレラ』
ニューヨーク:マクローリン 1890年頃刊
アメリカのマクローリンが出版した仕掛け図版入りの書物で、『アラジン』や『長ぐつをはいた猫』などのシリーズもののひとつ。図版の前後には韻文と散文の物語があるが、本書の見所は、やはり仕掛けの図版である。物語の進行に合わせてページを捲ることになるが、そのページのサイズにも工夫がなされていて、全13からなる場面はどれも実に楽しいものである。

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43.『シンデレラ』
ニューヨーク:マクローリン 1891年頃刊
プロセニアムのアーチ型という独特の版型をした「パントマイム・トイ・ブック」の絵本。アーチ型の幕が全体を覆うようになった前舞台の構図をとっている。表紙はオーケストラ・ピットと幕が下りた舞台で、観音開きのページを捲ると舞台上で歌い踊るミュージカルが展開されることになる。

44.『シンデレラ、または小さなガラスのくつとジャックと豆の木』
グレース・ライズ
ロンドン: J.M.デント 1894年刊
ライズは本書の序文で、「昔は、そう、おばあちゃんたちの時代は、今ほど本も本屋も多くはなく、行商人が携えてくる物語本を心待ちにしていたものだった。」と、チャップブックに言及している。19世紀後半ともなると、チャップブックは全く過去の遺物となり、人気の高い『シンデレラ』といえどもチャップブックの形では出版されなくなった。本書も小型のサイズではあるが、ハードカバーで、挿し絵も洗練された上品な出来上がりとなった立派な本となっている。

45.『3人の美しいプリンセスたち』
キャロライン・パターソン 画
ロンドン:マクラス・ワード 1800年代刊
表題が示すように、プリンセスとなった美女3人が主人公となる物語である。タイトルページの次のページには、エリザ・ケアリーの16行の詩が添えられている。シンデレラについては、「金髪の美しいシンデレラ、その小さくて上品な足は、あの有名なくつとぴったりでした」とある。

46.『シンデレラ』
グリフィス・アンド・ファラン
ロンドン:トークエイ 1900年刊
セント・ポール・チャーチヤードで、グリフィス・アンド・ファランが出版した子供のための韻文劇の本である。ト書きも記された、全4場からなる劇で、第2場と第3場の間には間奏曲の楽譜が入れられている。

47.『シンデレラ』
エイミー・ステードマン 文
ロンドン:D.P.デント 1900年代刊
エイミー・ステードマンの再話によるテキストが1冊あり、それにペギー・パックストンが制作した8体のストーリー・フォーク(Story-Folk)人形が付随した作品である。人形は、厚手の紙製の切抜き絵に台紙がついているので、立たせることが出来る。デザインと色彩がよく調和した実に美しく、愛らしい紙人形である。

48.『シンデレラ』
ニューヨーク:ムービー・ジェクター 1934年頃刊
アメリカ、ムービー・ジェクター製の一枚もののロール・フィルムである。シリーズ番号105番。木製の巻軸に幅10センチほどのフィルムが巻き付いている。操作方法は不明であるが、上下に並列した形で図版が並んでいる。その上下の図版はほとんど同じであるが、部分的に異なる個所があり、その微妙な差異の動きを楽しんだものと思われる。

49.『シンデレラ』
ロンドン:ディーン・アンド・サン 出版年不詳
ロンドンで、子供向けの絵本を多く出版したディーン・アンド・サンが出したポップ・アップの仕掛け本。同社は、トイ・ブックに、初めて耐久性に富むホランド製本の印刷を考案したことでも知られている。本書はシリーズものの第4作目にあたる。ポップ・アップする図版の前後に文章があり、ポップ・アップは舞踏会から走り去るシンデレラの後ろ姿と彼女を追いかける王子という場面の1場面のみであるが、豪華な出来栄えになっている。

50.『シンデレラ、パノラマ・ブック』
ロンドン:コリンズ 1900年代刊
パノラマ、回転画の仕掛け本で、本を捲ると次々に6つの場面の仕掛け絵が登場する。これには、別冊の挿し絵入りのテキストがついていて、その物語の進行に合わせて楽しむことが出来るものである。立体的で、奥行きのある世界は小宇宙を形成し、見る人の心を捉えて放さない。

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51.『シンデレラ、 ピープショー・ブック』
ローランド・ピム 画
ロンドン:フォールディング・ブックス 1947年頃刊
パノラマ、回転画の仕掛け本。ページを捲ると、6つの場面が立体的に現れる。各場面には、6行の物語文がついていて、物語を読みながら、立体的な空間を覗き見る子供とそして大人の姿が思い浮かばれる。三次元の立体映画を観る感覚である。

52.『シンデレラ』
ロンドン:バンクロフト 1961年刊
本を開くと、絵が飛び出してくるポップ・アップ仕掛け本である。発売当時のビニール袋も揃っている。その宣伝文句には、「面白くて! ためになる!」とキャッチ・コピーが加えられている。本書は、そのうたい文句を裏切ることのない素晴らしい出来栄えで、全8場面からなるポップ・アップと書物の形となった物語文が見開きでパッと出現する。人気は相当なもので、他にも『赤ずきん』、『白雪姫』などたくさんの作品が出版された。

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53
『シンデレラと二つのギフト』
エドワール・ドウ・ボーモン 画
ロンドン 1887年刊
エドワール・ドウ・ボーモンが、シャルル・ペローの『サンドリヨン』を題材に描いた33枚からなる水彩画集である。紙葉は豪華なモロッコ紙が使われている。散文の物語の進行に合わせ、美しく、繊細で、軽やかな世界が描写されている。

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54.『シンデレラ、または小さなガラスのくつ』
アリス・コーバン・ヘンダーソン 訳
ブランチェ・フィシャー・ライト 画
シカゴ:ランド・アクナリー 1914年刊
本書は、現代的な絵本の形式をすっかり備えたものである。特徴は、本文を6つのパートに分けて、それぞれに小題を付けて、子供の興味をそそるように工夫されている点である。そして、最大の特徴は、本文末に、「モラル=教訓」が付け加えられている点である。本文は、「翻訳」されたものと改めて明記されているが、伝統的な『ペロー童話集』に準拠するものである。

55.『シンデレラ』
C.S.エヴァンズ 再話、 アーサー・ラッカム 画
ロンドン:ハイネマン 1919年刊
C.S.エヴァンズの物語文に、アーサー・ラッカム(1867-1939)が挿し絵を入れた本。ラッカムは、英国の有名な挿し絵画家で、『グリム童話集』(1900)、『マザーグース、なつかしい童話』(1913)など約90冊の挿し絵を描いた。本書の『シンデレラ』の豪華版は、初版850部の限定版である。850部のうち、525部は英国の手刷り紙葉を用い、残り325部は局紙(Japanese vellum)を用いたものである。本書は前者に属し、ラッカムの署名と出版ナンバーの847が自筆で書かれている。影絵(シルエット)のスタイルをとっているが、基本の黒色の他に多色刷りもあり、どれもが見る者の感性を刺激するものばかりである。

56.『シンデレラ、ウォルト・ディズニー映画版』
ロンドン:ディーン・アンド・サン 出版年不詳
言わずと知れたディズニーによるアニメーションのフルカラーの絵本である。映画版ということもあり、ページを捲るとあの美しい音楽と映像が蘇ってくる。今日でも日本語訳のディズニー版 が入手可能である。こうした本や映画を通して『シンデレラ』の世界に入り込み、すっかり魅了された人も少なくないであろう。物語の基本は、やはり『ペロー童話集』にあるが、上映時間の制約などもあってか割愛されたところがあり、これがまたひとつの特徴となっている。

                       (解説 歯学部助教授 木村利夫)