追懐【研究室から】
今日は、黒板伸夫先生のご命日です。
深い学殖と細やかな歴史理解が、そのご研究にあふれています。
国文学・漢文学にもお詳しい先生でした。
少年の頃、昔昔春秋や擬古事記文を愛読されたのですから、おそろしい学力。
さてその昔、合同研究室で隔週「権記の会」が開かれておりました。
先生は構成員のお一人、と申すより実質的な指導者でした。
(博覧比類を絶した希代の碩学太田晶二郎氏は、
記録読みに抜群の力量を示される先生を高く評価されていました)
担当者も幸い参加を許されましたが、輪読の当番はいつも冷や汗もの。
実は当方、記録読みは全くの独学、国史の授業にさえ出たことがありません。
(若い頃は生意気で、大抵のことは独学でなんとかなる!と思っていました)
愚かしい読みをしても、最後まで穏やかなお顔で聞かれ、
その後、丁寧に、ゆっくりと、正解を説明してくださるのです。
無知蒙昧の徒が一知半解にまで驚異的飛躍を遂げましたのは、
ひとえに先生の噛んで含めるご指導あってこそ。
また、先生は鶴見大学、特に図書館を応援してくださいました。平成16年(2004)1月の展示にご来館、手前は奥様です。
(奥様は歴史小説家、「永井路子」の筆名はどなたもご存じでしょう)
展示「源氏物語の楽しみ方」を熱心にご観覧中です。
来学されると、一服差し上げるのが常でした。
(一服盛る、ではありません。念のため)
どの器で出そうか、お菓子は何にするか、と考えるのがこちらの楽しみ。
では、当時の机上を再現します。茶碗は李朝刷毛目、小皿は伊万里の色絵です。
今日は、一日モーツアルトを聴いて過ごしました。
ご夫妻はモーツアルト協会の会員でしたから。
言葉遊び大好きの黒板先生につきましては、いずれ。
鶴見大学文学部日本文学科研究室