燈火ちかく【研究室から】
続けて「衣(きぬ)縫う母は」が出てくる方は、相当のご年配でしょう。
唱歌「冬の夜」の1番です。
2番の「過ぎしいくさの手柄を語る」を覚えておられる方は、もっとご年配。
などと言う話ではありません。
草子巻物を広げ、火を近くともしながら推敲をかさねた歌人がいました。
若くしてなくなった宮内卿が、その人です。冬の歌をまず1首。
「時雨つる木のした露はおとづれて山ぢのすゑに雲ぞなりゆく」
よく知られているのは、恋の歌。
「聞くやいかにうはの空なる風だにも松に音するならひありとは」
享年20歳くらいと言われております。どんな女性だったのでしょうか。
『歌仙部類抄』に絵姿がありますので、お目にかけます。
(勿論、絵師が想像して描いた図)『歌仙部類抄』の絵は、丸顔の親しみやすい女性が多く登場します。
橋本直香の撰、絵は高島千春です。
もっとも愛らしい(と担当者が考える)図をご紹介して、今回はおしまい。
鶴見大学文学部日本文学科研究室