誌上旅行【研究室から】
流行病が終息せず、動きづらい日々の連続です。
ならば、書物の中を旅しようではありませんか。
古事記万葉から近現代の作品まで、日本文学は旅の宝庫です。
紀行でも日記でも、旅をあつかった小説でも、和歌俳諧でも、お好み次第。
旅の手引き書が、これまたなかなかおもしろい。
100年ほど以前、鳥瞰図絵師として活躍した吉田初三郎の作をご紹介します。
『鉄道旅行案内』の挿絵です。
初三郎の絵の多くには、富士山が描き込まれています。
九州であれ北海道であれ、ユニークな鳥瞰図のどこかに富士山が鎮座。東海道は鶴見のあたり、秀麗な富士が自然に配置されています。
右下の平間寺は、川崎大師。
総持寺と海の距離が近いのは、何せ1世紀前ですから。
花月園も見えます。
海に和船がうかんでいて、まことにのどか。
いながらにして旅が出来るのも文学の効能、書物の功徳です。
鶴見大学文学部日本文学科研究室