食い意地【研究室から】
少し涼しくなりました。食べ物のおいしい季節です。
正岡子規『仰臥漫録』は、近代の日記中最もおもしろいものの一つ。
生きているのが奇跡、と言うほどの病床で
日記をつけ、絵を描き、歌を詠み、句を吟じました。
ほとんど唯一の楽しみは、食べること。
ココアやビスケットなど、しゃれたものも口にしています。
『漫録』に一番多く出てくるのは、菓子パンでしょう。
印象に残るのは、家族といさかいをしてまで食べたがった団子。
「あん付三本焼一本を食ふ」(明治34年9月4日)
そこで、餡団子を御深井の角皿にのせました。時には「夕暮前やや苦し、喰過のためか」とか
「やけ糞になって羊羹菓子パン塩せんべいなどくひ渋茶を吞む、あと苦し」。
その病苦を思うと、壮烈な食い意地ではありませんか。
昨日9月19日は、子規の命日でした。
ちなみに御深井は「おふけ」と読んでください。
鶴見大学文学部日本文学科研究室