卯月ばかりに【研究室から】
落ち着かぬ毎日です。
気長にはやりやまいの収束を待ちましょう。
さて、数多くある源氏物語の4月から、蓬生を取り上げます。
赤鼻の姫君がこれほど魅力的に描かれた巻はありません。
荒れ果てた常陸宮邸に光源氏を待ち続ける姫君のほか、
主人思いの侍従、頼りがいのない兄禅師、悪役の叔母、露払い惟光など、
多彩な脇役が登場し、結構波瀾に富んでいます。
肝腎の光源氏は、姫君のことなどすっかり忘れていました。
卯月ばかりの夕月夜、偶然常陸宮邸を通りかかります。
「大きなる松に藤のさきかかりて、風につきてさと匂ふがなつかしく」
小鏡に絵の入った最初の版です。
絵が本文と一緒の面にある形式は、珍しい。
ともあれ外出を控えるわけですから、まず読書。
この閑日月に沢山読めれば、災い転じて福となす、でしょう。
鶴見大学文学部日本文学科研究室