書物の美【研究室から】
藤の花が揺れ、躑躅も鮮やかに咲く季節。
まことに「春のわかれは藤つつじ」(佐藤春夫)です。
さて、前回の続きのようなお話。
本は、もちろん中味、つまり内容が大切です。
しかし装丁や料紙、活字そして挿絵もまた、無視し得ない要素でしょう。
秀抜な造形感覚により周到念入りに作られた書物は、理屈抜きで素晴らしい。
(下の時計もほぼ同じ頃の製作で、これは脇役。
時間を忘れて読書する、と演出したつもり)
縦横比が普通の本とは少し違っていて、洒落た姿をしています。
丁寧な仕上げのモロッコ皮も洗練の箔押しも、十分に魅力的です。
「文学研究にとって書誌学はどんな意味を持つか」を問うのではありません。
(書誌学的知識なしに高度の国文学研究は不可能ですし)
感動すべきものに素直な反応のできない方が、もしいらっしゃるとすれば、
失礼ながら、人として基本的な何かを欠いておられるのではないでしょうか。
暴論だ、のご意見は十分承知の上で、かくの如く申し上げました。
さあ、連休中にたくさん本を読みましょう。
なるべくならば、美しい本で。
鶴見大学文学部日本文学科研究室