三五夜中新月色
今日は中秋の名月です。
中秋の名月といえば、中国の唐の時代、白居易が遠方の地に左遷された親友の元稹(げんしん)を憶って詠んだ漢詩に、次のような一節があります。
三五夜中新月の色
二千里外故人の心
三五夜は三×五で十五夜のこと、新月とは出たばかりの月、故人は旧友のことで、ここでは元稹を指します。
遠く二千里の彼方にいる君は、自分が見ているのと同じこの月をどんな思いで見ているのだろうか。
この詩句は、古来日本でも非常に有名で、『源氏物語』須磨巻にも光源氏がこの句を朗誦する場面があります。
こうした月のこころは、江戸時代の西鶴の句にも生きています。
鯛は花は見ぬ里もあり今日の月(『阿蘭陀丸二番船』)
新鮮な鯛、美しい桜のない村里はあるが、今夜のこの名月だけはどこからでも眺めることができる。
今宵は是非お月見を。
鶴見大学文学部日本文学科