景物【研究室から】
窓の外は、虫の声。
調べ物や執筆にふさわしい夜長となりました。
さて、秋の風情を代表するものはなんでしょう。
(食べ物については次回に)
鹿の鳴く音・雁・草花のいろいろ・霧と露・・・
眼に見、耳に聴いて季節を実感することは少なくなりました。
それでは可憐な景物をひとつ、丸々とした壺と取り合わせてお目にかけます。古代より好まれた萩の花。
万葉集の歌人達がしばしば取り上げた素材です。
勿論、平安時代以降も鹿の花妻として秋歌に欠かせません。
萩の歌を集めるだけで、一大歌集が出来るでしょう。
「秋萩のいろづく秋をいたづらにあまたかぞへておいぞしにける」
「秋」が重なって無造作な印象です。
しかし勅撰集に入っているのは、率直な嘆老の詠が評価されたからでしょう。
お若い方々には、まだ縁のない話。
なお、静謐な白磁は李朝の焼き物です。
鶴見大学文学部日本文学科研究室