腕に覚え【研究室から】
暑いですね、と言ってみたところで涼しくもならず。
せめて机辺の楽しみを。
さて、書画骨董には写し物が多く、なかなかおもしろくも厄介。
腕を磨くために古作を写すことは、立派な心がけです。
しかし他方、いわゆる偽物の制作も行われました。
ともあれ和歌の本歌取りにならって、手本となる作品を「本歌」と呼びます。
まずは水滴を1つご覧ください。淡い飴釉に梅の花を型押ししています。
(印花とも言います)
釉の流れが景色となっていて、好感の持てる作です。
どちらが本歌で、どちらが写しかわかりますか。
上は加藤宇助さんで昭和の作、下は鎌倉末期くらいの古瀬戸。
手に取ってみれば差は歴然、しかし画像ですと迷う方もおられるかと。
宇助さんは轆轤の名人でした。
腕自慢の焼き物作りでしたが、しかし写し物の意図はなかったと思います。
自分が鎌倉時代の陶工ならこんな風に、と轆轤に向かわれたのでは。
本歌に制約される写し物と異なり、のびのびと自由な作柄です。
有名な「永仁の壺」とも関わりがあって、おもしろい方のようです。
この話は長くなりますので、ここにはとても書き切れません。
鶴見大学文学部日本文学科研究室