春から夏へ【研究室から】
緑が日一日と濃くなっています。
この季節の花は、まず藤でしょう。
勅撰集では、春のすえに置かれたり夏の初めを飾ったりします。
「夏にこそ咲きかかりけれ藤の花松にとのみも思ひけるかな」
これは初夏の例。
「暮れぬとは思ふものから藤なみの咲けるやどには春ぞひさしき」
もちろん、晩春の詠です(出典はご自分でお調べください)。
すこし珍しい花を見ました。藤は紫か白が通り相場、これは薄紅です。
香り高く、蜂が飛び回っています。
なお、歴史的仮名遣いでは「ふぢ」。
よって「淵」の掛詞としてもしばしば使われます。
「むらさきのゆゑに心をしめたればふちに身投げむ名やはをしけき」
外出が難しいとき、書物の中を散策するのはとてもよいこと。
禍転じて福となす、かどうかは、心がけ次第です。
鶴見大学文学部日本文学科研究室