友(上)【研究室から】
落ち葉舞うこの頃、いかがおすごしでしょうか。
特別講談会が近づきました。
講談・鼎談の豪華二本立て。予約不要・入場無料です。
ご来駕をお待ちしております。
さて、馴染みの和菓子屋さんが、迫力満点の鯛を作ってくれました。
厚さ2センチ、焼き色良く、逞しく、どこかとぼけた顔つきです。
以下、風景のところどころがぼやけてしまうほど昔の話。
・・・・・
釣りを楽しみとする同級生がいた。
暇を見つけては、川辺に糸を垂れていた。
大学では、高級魚介類の養殖を研究すると言う。
今でこそ、海老も鮪も養殖は珍しくない。
半世紀前の、しかも高校生の考えだから、その発想はおそろしく進んでいる。
2つの大学で入試が取りやめとなり、かなりの混乱を生じた頃である。
僕は彼より一年早く大学生となった。
そして電車を待つ秋のホーム、予備校生の彼と偶然出会う。
屈託のない笑顔で「金のない人も伊勢海老や鯛を食べてほしい」と語った。
高級食材にて一儲け、ではない。
ここから必然的に導出されるのは、彼の家が裕福ではなかった、と言うこと。
こちらも裕福の対極、より一層貧しかった。
でも、しん生ではないのだから、びんぼう自慢はしないほうがよい。
「お前にも腹一杯食わせてやるからな」「是非頼む」。
薄暮の会話で覚えているのは、これだけである。
続きは次回。
鶴見大学文学部日本文学科