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2017年11月 8日 (水)

友(上)【研究室から】

落ち葉舞うこの頃、いかがおすごしでしょうか。

特別講談会が近づきました。

講談・鼎談の豪華二本立て。予約不要・入場無料です。

ご来駕をお待ちしております。

さて、馴染みの和菓子屋さんが、迫力満点の鯛を作ってくれました。

厚さ2センチ、焼き色良く、逞しく、どこかとぼけた顔つきです。

Photo_3 鯛につき、担当者には忘れがたいことがあります。

以下、風景のところどころがぼやけてしまうほど昔の話。

                 ・・・・・

釣りを楽しみとする同級生がいた。

暇を見つけては、川辺に糸を垂れていた。

大学では、高級魚介類の養殖を研究すると言う。

今でこそ、海老も鮪も養殖は珍しくない。

半世紀前の、しかも高校生の考えだから、その発想はおそろしく進んでいる。

2つの大学で入試が取りやめとなり、かなりの混乱を生じた頃である。

僕は彼より一年早く大学生となった。

そして電車を待つ秋のホーム、予備校生の彼と偶然出会う。

屈託のない笑顔で「金のない人も伊勢海老や鯛を食べてほしい」と語った。

高級食材にて一儲け、ではない。

ここから必然的に導出されるのは、彼の家が裕福ではなかった、と言うこと。

こちらも裕福の対極、より一層貧しかった。

でも、しん生ではないのだから、びんぼう自慢はしないほうがよい。

「お前にも腹一杯食わせてやるからな」「是非頼む」。

薄暮の会話で覚えているのは、これだけである。

続きは次回。

鶴見大学文学部日本文学科