友(下)【研究室から】
友は大学に進み、魚の研究を始める。
望んだ道であったはずだが、研究を止め食品会社に入る。
曲折の後、斬新な事業を起こした。
年商100億だか1000億だかの会社を率いているとは、風の便り。
勿論100億と1000億とでは、雲壌の差がある。
しかし、僕には共に現実味のない数字ゆえ、いずれでもかまわない。
交際範囲がとてつもなく広がったはずだから、
同級の国文学者なんぞ、とうの昔に忘れてしまったろう。
でも僕は折々、闊達な笑顔を思い出す。
彼の名は、遠藤結城と言った。ある日、新聞を見て驚く。君の訃報。
独逸車の事故により、亡くなった。
社長室は倉庫のように飾り気なく、水槽がひとつ置いてあったらしい。
釣った魚を飼うためである。
君の夢は、今、どこにあるのか。
築かれた巨富の上か。ふるさとの川辺か。
そのどちらでもよいが、遠藤君、忘れてもらっては困る。
君は約束を果たしていないのだよ。
伊勢海老にせよ鯛にせよ、1尾もおごってくれてはいない。
いずれ僕も、そちら側へ行くだろう。
その時、精進物は嫌だ。
・・・・・
さて、日本文学会の催しは来週土曜(25日)です。
南海先生の講談と碩学を交えての鼎談、贅沢な催しです。
(これは自画自賛)
入場無料・予約不要、午後1時より入場可能。
会場内は飲食禁止となっておりますので、ご注意ください。
午後5時全プログラム終了予定、休憩時間を設けます。
ご都合により途中退席されても結構です。
お誘い合わせてどうぞ。
鶴見大学文学部日本文学科