野分のあと【研究室から】
台風の影響も一段落、日暮れ時の虫の音が高くなってきました。
雨や風に悩まされた8月でしたが、皆様おかわりありませんか。
研究棟まわりの銀杏の大木が、地面に青い実を散らしていました。
古典文学では、『源氏物語』野分の巻が8月の暴風を描いて有名です。
そして「風は」と「野分のまたの日こそ」も、負けず劣らずの秀逸さ。
ご存じ『枕草子』から、江戸時代の版本でどうぞ。右面最終行、朱の合点が掛けられているところは
「八九月ばかりに雨にまじりてひきたる風、いとあはれ也」
左面9行目から「のわきのまたの日こそいみじうあはれにおぼゆれ」
以下はご自分でお読みください。
平安時代の野分は文学作品にほとんど取り上げられないと言えるでしょう。
鎌倉時代以降、野分に詩を感ずる人が増えてきました。
雨や風に面白さを見いだす清少納言は、なかなかに冴えていると思います。
なお上の図は『清少納言旁註』より取りました。
これから読書の秋です。
たくさんお読みください。
鶴見大学文学部日本文学科研究室