写真は、以前教えた大学書道科3年生と、在職した高校の3年生(選択科目で書道を履修した生徒)による「筆路プリント」で、同級生と分担して隷書の古典『韓仁銘』、『乙瑛碑』全文の書き方を調べたものです。

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碑石が傷つき、あるいは採拓が不鮮明であるために、見事な古典ながらも「どう書いてあるのか」がわからないことがよくあります。慣れない書体であるために、はっきり見えても不安な場合があります。同じ古典、近い時期の古典に見やすい字はないでしょうか。図書館で『書道大字典』あるいは『隷書大字典』を開けば(後者には木簡、顧藹吉『隷辨』等の文字も含まれていて)、多くの字例から考える材料を得ることができます。

「一帖三年、全臨百回」という言葉が昔からあります。ある古典の書風をきわめようとするのなら、そのくらいの心構えで臨書に打ち込んでごらんなさい、と。しかし書道の教員免許を取ろうとする学生が、卒業までひとつの古典だけに集中して学ぶのは実際的ではありません。

だからせめて、書き方がわからないのをなおざりにせず、参考書や字典に手をのばして、「どう書いてあるのか」を明らかにしようとしてください。教わることがなくなっても、ひとりで歩いて行かれるように。

鶴見大学文学部 日本文学科