昔の人が墨をすり筆を執って書いた文字は、静かにそこにあるようですが、生きていた人が残したものです。私たちが点画の形をよく見て、同じように時間をかけて筆でしばらくたどり、筆運びの遅速、抑揚(押さえたり、うかせたり)などをまねしていると、昔の人のかわりに書いているような感じがしてきます。はじめのうちは、うまく書けないところが気になるばかりだったのに、いつかそれを忘れています。古典はすばらしいものだと人に言われてながめているだけでは味わえないことです。まずは時間をかけて古典とつきあってみてください。書き込むほどに線が鍛えられます。よいものを見きわめる力がつき、昔の人が書いた詩歌、文章を少しずつ読むことができるようにもなってゆきます。

鶴見大学の書道の授業は、芸術作品を書き上げるために、または展覧会での入選・受賞を目標に練習するのではありません。日本の古典文学を学ぶ上での教養のひとつとして書法の基礎を学びます。漢字文化圏に共通する、あるいは日本独自の文化のいとなみを繰り返し経験し、いくらかの知識を得ます。小さなことであっても、できないこと、わからないことを自分で解決するのは快いものです。日頃から清書の自己批正を習慣づけておいて、もし教える機会が得られたときには、生徒の前で書いて見せ、的確なアドバイスができるようになってください。

【受験生のみなさんへ】
●鶴見大学では、文学部日本文学科で高校「書道」の教員免許状を取得することができます。「教育実習」を含む必要単位を修得すると、中学「国語」、高校「国語」「書道」の免許が揃います。
●入試科目に書道実技はありません。高校で書道を選択しなかった学生も授業を受けています。
●日本文学・日本語学を専門に学んで卒論を書き、あわせて4年生まで書道の授業を受けた学生が「卒業制作展(卒展)」に出品します。
●書道実技の授業には以下があります。ほかに、書道科教育法、書道史、古筆鑑賞などの授業があります。
書道I(漢字 楷書・行書)  書道II(仮名 基本・高野切第三種)  書道III(漢字 隷書・草書)  書道IV(仮名 古筆)  書道V・VI(卒業制作・卒展)
●実技ではテキストのほか、新しい筆、書きよい紙、墨と硯などの用具が必要ですが、特別に高価な用具をすすめることはありません。卒展の表装も簡素にしております。
※「書道」の教員免許状を取得できる大学の一覧は、文部科学省HPに掲載されています。

鶴見大学文学部 日本文学科

日時:2008/12/19 16:47これまでの記事

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