前回は,図書館資料に発生したカビのふき取り作業開始についてお知らせしました。今回は,発生の経緯と原因についてです。
最初は,2008年夏に,図書館地下2階集密書庫の資料へのカビの発生が判明し,カビのふき取りと,空調の24時間稼動で対処しました。空調の稼働には,当然,経費が発生しますが,貴重な資料の保存環境を改善するために,24時間稼働を実施しました。さらに,空気の循環によって湿気が書架の間にこもらないように,閉館時には集密書架の,書架と書架の間の間隔を均等に開けるようにしました。
にもかかわらず,2009年夏にも地下2階集密書庫で広範囲にカビが発生し,24時間空調でもカビの発生を抑えられない状況が判明しました。ふき取りで対処しましたが,夏に全部をふき取ることができず,2010年2月から学生アルバイトの皆さんと職員によって,組織的なふき取り作業を開始したわけです。
カビが発生した原因として考えられるのは,地下書庫の湿気と温度です。地下の書庫では,湿気がコンクリートを通して入り込むため,カビが発生しやすくなることが考えられますが,2008年以前にカビの発生は確認できていません。また,温室効果ガス削減のため,夏の冷房の設定温度が28℃に設定され,図書館の書庫の温度が上がったことが考えられます。しかし,温度に関しても,カビの発生と冷房の設定温度が変更された時期が近いというだけで,確たる根拠はありません。
以下の写真は被害のひどい例です。カビの発生しやすい資料は,発行年が比較的古い,目の粗い布クロス製本のもので,クロスの隙間に湿気がたまりやすい形態のものです。外国の資料に発生しやすい傾向があり,9割以上が外国の資料です。また,最近の資料への発生はまったくありません。クロスの素材には,国や発行年による違いがあるようです。さらに,下の図のように,同じシリーズの資料でも発生状況に差が見られます。
結局,カビが発生する原因を特定できず,状況を改善するこれ以上の方策もなく,根本的な対策をとることができない現状です。一度発生してしまった以上,毎年のふき取り作業で対処するしかないのでしょうか。今後の本学図書館の運営においては,大きな障害となる事態です。
他の図書館でも同様な被害が出ているものと思われますが,実体は不明です。効果的な予防やふき取り方法についての情報交換ができればよいのですが・・・。
[T.H.]