今から百数十年の昔、徳川御三家の一つ水戸藩で激動の時代を生きた女性がいました。その名は、万里小路睦子(睦子は、ちかこ、と読む)。今回ご紹介する本は、この万里小路睦子の印記が押された、おそらくは本人直筆のものです。
その本は、後水尾院御説の自讃歌抄です。下のほうにある印記が万里小路睦子のもので、筆触が女性らしく、当人のものだろうという本学教授の話。
これが、印記です。読みやすい印記なので、万里小路睦子であるのがわかります。
万里小路睦子とは、徳川十五代将軍徳川慶喜の実父にあたる、水戸藩主徳川斉昭の側室です。徳川斉昭の名前は、聞いたことがある人も多いでしょう。ちなみに、この万里小路睦子の子供、徳川昭武が水戸藩の最後の藩主になっています。
幕末から明治にかけての、日本が大きく変わっていく時代に何を思い筆を走らせたかを考えるのも、なかなか楽しいですね。
(K.I.)