貴重書の紹介

2010年3月30日 (火)

斎藤茂吉旧蔵の金槐和歌集

今年も、日本文学科をはじめ、ドキュメンテーション学科と文化財学科で貴重書を購入しました。年度の切り替わる前に、今年度入った貴重資料を一点ご紹介します。

今回は、斎藤茂吉旧蔵の金槐和歌集です。

1287644_2

この資料は、本学教授の話によれば、金槐和歌集に賀茂真淵が評語を書入した本を、江戸時代に写したものとのこと。

1287644_4

印記を見ると、茂吉が旧蔵者であることがわかります。

参考までに、右側の「篁園文庫」というのは、新編蔵書印譜を見ると、竹内篁園の印であることがわかります。有名な収集家であったようです。

この金槐和歌集以外にも、今年、斎藤茂吉の旧蔵資料がたくさん入りました。ほぼ全部、金槐和歌集関連ですが、興味がありましたらOPACで引いてみてください。

(K.I.)

2009年12月 3日 (木)

卒論の学生による印記の研究

現在、卒論の学生が貴重書を研究しています。研究の対象は、貴重書に押された印記で、貴重書の収蔵庫にある版本を文学の始めからだしています。印記とは、資料の所蔵者の蔵書印のことで、江戸期以前の和本に押されていることが多々あります。今回、研究をしている学生は、はんこが好きで、貴重書の授業で印記を見るにつけ、卒論のテーマとして研究しようと考えたそうです。

Dscf2370

数多くある貴重書の印記を調べるのは非常に時間がかかりますが、こうして卒論のテーマとなり学生によって研究がおこなわれることは、図書館にとっても有意義なことです。卒論による調査ではありますが、得られたデータは図書館として役立つ形にできれば、とも考えています。

印記については、過去に貴重書展を行ったことがあります。第93回展示「蔵書印の語るもの」です。

今回、卒論の学生によって、一部とはいえ、印記の研究が行われたことで、何か新たな発見があるかもしれません。今まで脇役になりがちだった印記が、今回の卒論のようにスポットをあびるのもよいことですね。

(K.I.)

2009年11月10日 (火)

投扇興点附 : 源氏五十四帖

12863831

投扇興の資料が入りました。投扇興点附 : 源氏五十四帖がそれです。投扇興とは、「江戸時代に始まった室内遊戯の一。方形の台の上にイチョウ形の的を置き、離れた所から開いた扇を投げて打ち落とす。その落ち方や扇の開き具合により技の優劣を競った」(以上、デジタル大辞泉より)というものです。

この資料には、源氏香と呼ばれる図柄があります。源氏香とは、「組み香の一。5種の香をそれぞれ5包ずつ計25包作り、任意に5包を取り出してたき、香の異同をかぎ分け、5本の縦線に横線を組み合わせた図で示すもの。図は52種あり、源氏物語54帖のうち、桐壺と夢浮橋を除く各帖の名が付けられている。後水尾(ごみずのお)天皇の時代に考案されたという。」(以上、デジタル大辞泉より)

そして、それぞれの図の右上にあるのが点数です。

本学教授によると、投扇興の点数表には有名な日本画家の上村松園が描いたものもあるそうで、それには、いかにも松園らしく、女性の姿も描かれているそうです。

この資料は、出版情報に東京とあるため近代のものですが、江戸期以降このような遊びが日常生活(とくに花柳界でよく行われたようです)の中にあったことが想像され、典雅な世界に触れるのも楽しいものです。裕福な家や貴族の遊びなのかもしれませんが、物を投げて点数を取るその精神は、現在の輪投げなどの遊びにも通じるものがあると思われます。時は違えど、人の考えることは同じなのかもしれませんね。

(K.I.)

2009年9月25日 (金)

周興筆と言われる「古今和歌集」

12830553

最近入った資料に「古今和歌集」があります。この古今和歌集は室町時代後期(おおよそ15世紀終わりから16世紀の前半)に筆写された周興筆と言われるものです。周興は彦竜周興のことで、室町時代に五山文学の詩文をよくした僧侶です。

この資料、なかなか値が張るのですが、それというのも、このような平安文学で室町時代写のものは、なかなか市場に出回らないとのこと。

それ以外にも珍しい点がいくつかあります。ふたつの奥書があること。奥書とは、本の来歴などを記録したものを指し、この資料で言えば、藤原定家と頓阿の奥書があることから、定家がまず写し、それを頓阿が写し、そしてこの周興がさらにそれを写した、と目されるわけです。

そしてもうひとつ珍しいことは、この資料が周興の筆によるという鑑定結果として、極書と呼ばれるものがある点です。鑑定がなされている資料自体は、この手の資料に関してはさして珍しくないのですが、通常は、極札と呼ばれる紙片がついているだけであり、この資料のように極書があるものはかなり珍しいのです。

12830555

これが極書です。古筆了佐と書いてありますが、この鑑定家は有名な家系。1634年に鑑定が行われていることが記されているので、この資料がそれ以前のものであることがわかると同時に、古筆鑑定の研究材料としても役立ちます。

(K.I.)

彦竜周興について、研究者の方から「漢詩文のことはよく知られておりますが、和歌事跡は知られておらず、同時代を生きた別人だと思われます。」との指摘をいただきました。誤りであることを確認して、本文を訂正いたしました。

今後は、Webサイトによる情報発信に際しては、事実確認を怠ることのないよう配慮いたします。

2009年10月6日 鶴見大学図書館

2009年9月18日 (金)

幕末を生きた万里小路睦子の写本

今から百数十年の昔、徳川御三家の一つ水戸藩で激動の時代を生きた女性がいました。その名は、万里小路睦子(睦子は、ちかこ、と読む)。今回ご紹介する本は、この万里小路睦子の印記が押された、おそらくは本人直筆のものです。

12833033

その本は、後水尾院御説の自讃歌抄です。下のほうにある印記が万里小路睦子のもので、筆触が女性らしく、当人のものだろうという本学教授の話。

12833035

これが、印記です。読みやすい印記なので、万里小路睦子であるのがわかります。

万里小路睦子とは、徳川十五代将軍徳川慶喜の実父にあたる、水戸藩主徳川斉昭の側室です。徳川斉昭の名前は、聞いたことがある人も多いでしょう。ちなみに、この万里小路睦子の子供、徳川昭武が水戸藩の最後の藩主になっています。

幕末から明治にかけての、日本が大きく変わっていく時代に何を思い筆を走らせたかを考えるのも、なかなか楽しいですね。

(K.I.)

2009年8月28日 (金)

貴重書には蔵書印を押します

貴重書を購入すると鶴見大学図書館の蔵書印を押します。蔵書印の押印は、江戸時代にはもう行われていたことで、この蔵書印を見ることでその本が誰の持ち物であったのかがわかります。名のある人が所有していることがわかった本は、通常より高い値段で取引されるのも面白いところです。

Dscf2308_2

最近受け入れた貴重書から一冊。上の蔵書印が図書館ので、下のものは秋葉文庫と読むと思われます。詳しく調べればわかるのでしょうが、蔵書印の事典には載っていない人の蔵書印です。

蔵書印の変遷を調べるのもなかなか面白いものです。ちなみに、古いものから順番にページ右下から上のほうへと押していくのがならわしとなっています。もちろん、そうなっていない資料もたくさんありますが。

図書館の目録においては、蔵書印は「印記」という言葉で表現します。皆さんも、貴重書の目録を見て、誰が持っていたのか、思いをはせるのもいかがでしょう。

(K.I.)

2009年7月22日 (水)

貴重書庫に書架を増設!

今の図書館ができてだいぶ経ち、皆さんの利用する開架の書架も、閉架になっている地下の書架も、もうほとんど満杯状態。実は、貴重書庫もかなり一杯だったんですが、今回少しですが、空いているスペースに書架を増設しました!

Dscf2236

増設したのは、貴重書用にと木製の書架。本は毎年増えてゆくもの。少しでも書架が増えればうれしいものです。

Dscf2243

書架の一つは、一般書架。

Dscf2245

もう一つは、右側にあるような軸物を入れる書架です。

半日で設置作業は無事終わり、少し貴重書庫の装いが新たになりました。

(K.I.)

2009年6月22日 (月)

新規受入貴重資料「当麻(断簡) / 島津義久筆」のこと

1282024_2

新規受入の貴重書で、[当麻(断簡)]が入りました。この資料は、28点まとめてきた古筆切と呼ばれる一枚ものの一つで、本学の先生が調べた結果、当麻の断簡であることがわかりました。

当麻というのは、「たいま」と読むのですが、お能の曲目の一つで、そのあらすじは、「念仏僧が當麻寺に詣でると、信心深げな老尼と腰元らしい若い女が来かかる。僧の尋ねに応じて老尼は當麻曼陀羅の縁起を語り、中将姫が籠もったという二上山に姿を消した。やがて中将姫の精霊が現れ、弥陀浄土を賛嘆して舞を舞う。」(引用:能楽協会HP)といったものです。

この断簡は、この当麻の末尾にあたるということです。おもしろいのは、この書写者が、島津義久という戦国武将のものだと、古筆鑑定家が認めているというところにもあります。

島津義久、知っている人も多いでしょう。わたしもやりましたが、ゲームではやった「信長の野望」で、かなり強い武将として登場する人物です。ゲームの話なのでなんともわかりませんが、実在の島津義久も名将であったようです。

歴史のロマンを感じさせる断簡です。当麻については、小林秀雄もそれを鑑賞したときの様子を著しています。「無常といふ事という随筆に入っていますので、興味がおありの方はどうぞ。

K.I.