[視覚障害]『ヤンガル』を教科書にして良かった

高校生・受験生の皆さん、こんにちは。ドキュメンテーション学科 情報学コース 教授で、図書館長book元木です。

公立図書館は、さまざまな人にサービスを提供する必要があります。YA(ヤングアダルト)向け、児童向け、高齢者向け、母語を日本語としない人向け、といった利用者の違いによって考える必要がある訳です。その一つとして、障害者向けというサービスが有ります。

公立図書館は戦前から視覚障害のある方向けのサービスを提供していました。歴史的な経緯は、ここで多くを語りませんが、2019年施行の「読書バリアフリー法bookも手伝って、さまざまな図書館での障害者サービスが見直されています。

司書資格取得を目指して学ぶ学生が、大学の司書課程で履修する科目の中に、選択科目の一つとして【図書館サービス特論】という授業があります。鶴見大学文学部司書課程で開講されている【図書館サービス特論】は、障害者サービス論を教えています。授業では、実際の資料(例えば、点字図書や点字付き絵本、DAISY図書等)や支援機器(拡大読書器やリーディングトラッカー、点字器等)を見せたり、視覚障害当事者から伺ったエピソードを紹介するのですが、やはり、直ぐにはピンとこないようです。

そこで、視覚障害当事者が主人公で、関連の話題や問題!?をストーリーに練り込んだマンガ『ヤンキー君と白杖ガール』(通称:ヤンガル)(作者:うおやま)に目を付けました。

以前から、一読者としては知っていたのですが、「これは、授業で説明する時に、助かるなぁ・・・」と何度も思うことがあり、この4月から半期の授業で『ヤンキー君と白杖ガール』第1巻を教科書に指定しました。そうしたところ、大成功でした!

※下に表示したマンガの表示画像は、openBDで提供されているものです。

『ヤンキー君と白杖ガール』単行本第1巻の書影

履修していた学生のコメントを、そのままは紹介できませんが、以下のような主旨の授業コメントを何度も受け取りました。

  • 単純に、ラブコメマンガとしても楽しめる一方、視覚障害者の視点や気持ち、周囲や家族の人の気持ちも描かれており、とても興味深いマンガです。
  • (授業を受けて数か月が経過してみて)今、『ヤンキー君と白杖ガール』のウェブでの更新が楽しみです。この授業を受講していなかったら、出会えなかったマンガだと思います。
  • (とある課題で、学生毎に5話ずつ熟読するタスクを与えられて)改めて『ヤンガル』を、細かいところまで気を付けて読むと、意外と気が付かなかった障害に関することが出てきて、作者の描き込みが凄いと思いました。
  • (Webアクセシビリティへの配慮の話を聞いた上で)「ヤンキー君と白杖ガール」でも言っていたと思うのですが、障害のある人に使いやすく作ることは、一般の人にとっても使いやすくなることだと理解しました。

作者のうおやまさんには、心より感謝申し上げたく存じます。ありがとうございます。これからも、視覚障害当事者のエピソードを盛り込んだ作品をお待ちしております。頑張ってください、応援してます!

ちなみに、鶴見大学図書館には既刊4巻が蔵書登録済みです。OPACで確認できます。今(2020年10月4日16時40分)確認したところ、第4巻が貸し出し中でした。

さて、【図書館サービス特論】的には、うおやまさんのTwitterでもご紹介されている様々な図書館的資料の情報は、とても重要なので紹介しておきましょう!

サピエ図書館が提供している点字図書は第1巻(神奈川ライトセンター製作)と、DAISY図書は第1-4巻(熊本県点字図書館製作)があります(2020年10月4日現在)。それから、音声ガイド付きボイスコミックが、YouTubeで読めます。その1その2