こんにちは。教員の久保木です。
今日(12月9日)の午前中、神奈川県立金沢総合高等学校で、出張講義を行ってきました。同校からは、ここ数年で、何回もお声をかけていただいています。私もいつも、喜んでうかがっています。
毎回、「日本史B」という、2~3年生の生徒さんが受けている授業の一環として、昔の古い本の話をしています。今回も、昔の古い本=古典籍(こてんせき)、の実物をたくさん持参し、30数人の生徒さんに、自分自身の手で、直接さわったり、めくったり、読んだりしてもらってきました。
たとえば、こんな本とかです。これは、授業前に、ひととおり机に載せてみた状態です(以下、ピントがやや甘くて、恐縮です…)。
ほとんどが、江戸時代頃の写本か、木版印刷本ですが、中に、明治時代初期の活字印刷本や、また西洋の、16~17世紀頃の活字印刷本の断簡(鑑賞用に分割された本の断片)、なども交えて、いろんな種類、比較できるようにしました。
さて、授業開始後、まずはスクリーンに映したスライドで、文字や書物の歴史について、質問なども交えつつ、ざっと解説しました。
また、古典籍を見る際のポイントについても例示し、さらに、古典籍がどれだけ重要な文化財であり、学術資料であるか、また、何百年も昔の古い本を傷めないために、どんなふうに取り扱えばよいのか、といったレクチャーをも行った上で、皆さんに、実際に手にとってもらいました。
生徒の皆さん、最初は少しだけ、おっかなびっくり、のようにも見えましたが、徐々に積極的に、いろんな本に触れていくようになったみたいです。
和紙の感触や、本の軽さ重さ、製本方法の違い、などに気づいたり、手彫りの版木の精妙さ、版本の文字の細かさ、などに驚嘆したり、あるいは江戸時代の鎌倉の地図、明治時代の聖書や英語の教科書、新聞などを、興味深そうに、見たり読んだりしてみたりと、皆さん、楽しんでくれたようで、ひと安心でした。
終わりの方では、もっと古い、鎌倉時代や、さらには平安時代末期の古写本を、鑑賞用に分割した、古筆切(こひつぎれ)、もいくつか見てもらいました。百人一首の(たぶん)現存最古写資料、なども、この中にあります(写真の中の、どれでしょう?)。
うち、真ん中の生徒さんが触れようとしているのは、かの大歌人、藤原定家が、かつて所持していた本の一部分です。ぜひとも定家にあやかって下さい、と、これも、自由にふれてもらうことにしました。
あるいは、このあたり、ご専門の方々からすると、保存ということを考えれば、やり過ぎなのではないか、とお叱りをうけてしまうかもしれません。お叱り、とまではいかなくても、やや賛否分かれるところかもしれません。
ただ、こうした貴重な資料を直に手にすることで初めて、それがどれだけ大事なものか、ということを、初めて実感できる場合も、あるのではないかな、と、個人的には、思っています。
(12月10日追記:ちなみに、今回教材とした古典籍類は、ほぼすべて、個人で所蔵しているものです。そのため今回は、このように活用することも、個人で判断することができました。ご所蔵先が公的な機関や団体などでしたら、もちろん取り扱い方や活用の仕方は、各ご所蔵先の規定やご意向が最優先となります)
また、そうしたことで、古典籍や古筆切、ひいては古典文学や歴史、また書誌学という学問、などなどに、少しでも興味を持ってくれる、そのきっかけになるのであれば、とも思っています。そうであれば、きっと定家も、まあ1冊の本の1ページ分ぐらいだったら、いいか、と、許してくれるのではないかな、と、これは勝手な想像ですが。
ともあれ、今回のような出張講義が、ひとつのきっかけ・ひとつの後押しにでもなって、人文学という、とても大切な学問-人間が、人間らしく生きるための学問-の面白さ、楽しさに気づく・より深く知る、ようになってくれれば、こんなに嬉しいことはありません。
このような、よい機会を与えて下さいました、金沢総合高校の、中村先生をはじめとする先生方、またきちんと受講してくれた生徒の皆さんに、御礼申し上げたいと思います。
また長くなってしまいました。最後にもう一言、鶴見大学では、次のような出張講義を行っています。ぜひご参照の上、お声がけいただますと幸いです。
〈主張講義一覧〉
http://ccs.tsurumi-u.ac.jp/seminar/pdf/info/h27_schoolvisit.pdf#page=3
〈出張講義について〉